95. 図書館を探して
バイゼル領から帰って数日。私たちはドレスを作ったりリタちゃんとカルロさんと魚食べたり、シオンちゃんに会ったりしていたよ。
本当は先日の神様ウサギとの話で出てきた図書館についてリエラに聞きたかったんだけど、どこをほっつき歩いているのか、全く会えなかった。
仕方ないから、今日はのんびりしようかなとお姉ちゃんとパーラーで紅茶を飲んでいたら、丁度そこに当のリエラがやってきた。
「シズクにアオイ、今日は家でまったりするのかの?」
「リエラ!」
「リエラちゃん!」
「む、元気がいいの。どうかしたかの?」
「聞きたい事があって探してたんだよ」
「わしを?」
「えぇ」
私たちは、先日また神様が現れて、これから大侵攻がある事と、私たちが強くなるために図書館を探せと教えてもらった事を話す。
改めて考えても、この情報だけってほんとケチだよね。
「なるほどのう。先日のあの気配はやっぱりそうか」
「やっぱり?」
「リエラちゃん、起きてたの?」
起きてたら知覚出来るものなんだろうか、神様の気配って。
しかしリエラは特に気にするでもなく、話を続ける。
「うむ。まぁそれはよい。ところでわしも、ぬしらをどう強くしようか考えとったんじゃが……」
「うん」
「今煮詰まっておるじゃろ?」
「……えぇ」
そうなんだよねぇ。魔力制御の訓練をして、超級魔術も杖なしで一部は発動出来るようになってきた。でも、その先がない。私は多分複合属性のバリエーションを増やす事だと思うんだけど、正直それだけで、私もお姉ちゃんも何か別の一手がないかなと探していたところだ。
手っ取り早くブレイクスルーがあるといいんだけど……。
「そこで提案なんじゃが、学院で魔術を教えるのはどうじゃ?」
「よく、人に教えると自分の理解が深まるって聞くけど、そういう事?」
「それはそうじゃが、ぬしらの魔術はわしが体に叩き込んだからの。理解が甘いなどという事は微塵も心配しとらん。それよりもじゃな……」
あれは確かに理解出来なきゃ、死ぬよね……。
私が過去を思い出して怯えているのを全く無視して、リエラが更に話し出す。
「ぬしらが神様とやらに言われた図書館に関わるかもしれんが、この国一番の図書館がどこにあるか知っておるか?」
「それは……一番なんだから王宮よね?」
「私もそうだと思うけど」
「実は、学院じゃ」
「そうなのねぇ」
「へぇ」
「その図書館じゃがの……」
リエラが言うには学院の図書館は三つの構成になっているらしい。
まずは一般書庫。学生、教師、王宮勤めの役人に貴族、申請すれば庶民も利用する事が出来る、要は公共の図書館らしい。
「普通の図書館ね」
「そうじゃ。で、次に閉架書庫」
こっちには貴重な書物や資料があるらしい、学院の教師、許可のある役人と貴族のみが閲覧出来る。
「ふんふん」
「ここで一度話を変えるが、ぬしらはアーティファクトを知っておるかの?」
「前教えてくれたわよね。古代の魔術具、だったかしら」
「そうじゃ、古代の魔術具で、動作原理が解明されていないものをそう呼ぶ。指先程の小さなものから、建物程の大きなものまで、様々じゃ」
「まさか……」
「そう、そのアーティファクトが図書館の第三区画、封印書庫じゃ。書庫そのものがアーティファクト。まぁ、言ってしまえばダンジョンじゃの。そこに、強くなるための鍵があると思っておる」
強くなるための鍵……。
「見た事もない魔術書とか?」
「それもあるかもしれないのう。封印書庫はでかいストレージのようなものじゃ。色々な魔術書、魔術具を溜め込んでいて、何が出るかはランダムで規則性が分からん。じゃが、わしが二人に必要だと思うのは『精霊の探し物』じゃ」
「「精霊の探し物?」」
聞いた事もない名前が出てきたな。精霊って名前がついてるって事は、魔法に関するものなのかな?
「昔、わしの家で二人の属性適性を調べたのを覚えておるか?」
「うん」
「あの時分からない属性があったじゃろ。『精霊の探し物』は、あの調査魔術具の上位版だと思えばいい」
「つまり、雫たちの分かってなかった保有属性が分かるって事ね」
「そう言う事じゃの。まあ直接強くなる訳ではないかもしれんが……」
確かにあの時分からなかった。って事は特殊属性には間違いない。それも、おそらくまだ発見されてない……。私はドキドキしながらリエラを見る。
「そしてもう一つ。探すとよいものがある。それが『精霊の落とし物』じゃ」
「『精霊の落とし物』……」
「名前が似てるわねぇ」
「その通り、『精霊の探し物』と対になっておる」
「そっちはどんな効果なの?」
「こっちは魔術書じゃ。属性魔力を流すと、まだ得ていないその属性の魔術語を教えてくれる、らしい」
「特殊属性も?」
「うむ。全ての属性に対応していると言われておる、らしい」
「らしい?」
そこでリエラが、マリーさんが持ってきた水を一口飲む。
「言ったじゃろ。封印書庫はアーティファクトじゃ、見つかるとは限らない。これも言い伝えじゃの」
「そっか……」
「それから、後は道中の魔術書は読んでおくんじゃな。ぬしらに教えた並列詠唱の概念はそこで学んだりしておる」
「分かったわ」
「分かった」
入る事が出来れば、魔術書だけでもかなり強くなれる可能性があるって事だね。
そういえば、私は一つ疑問を覚えてリエラに聞いてみる。
「あれ、学んだって言うならリエラは入った事あるの?」
「一度だけ。副団長だった頃にの。ここに住むと言ったら管理しておる司書長に却下された」
「それはそうねぇ……」
「陛下に魔術の発展のためと進言したらそれも却下された」
「何してるの……」
まぁそれはいいや。
よし、次の目的は決まったね。
「じゃあ、蒼ちゃん、早速準備して……陛下に頼めばいいかしら?」
「うむ、そうじゃの。王都にはわしも行くからの」
「そうなんだ、メアリーちゃんにでも会うの?」
「いや、魔術師団を鍛える」
リエラがニヤリとしながら右手の拳で左の手のひらを叩く。魔術師団のみなさん、ご愁傷様です……。
◇
さて、私たちは封印書庫の閲覧許可を得るため、早速その日のうちに王都に五人で『ワープ』して移動した。
陛下に謁見許可を求める手紙を出したところ、その日のうちに返信が来た。どうやら三日後、謁見出来るらしい。私たちの動きがかなり注目されているのか、対応も早くてありがたいね。
◇
そんな訳で三日後、私とお姉ちゃんは、謁見するためにリリムちゃんに手伝って貰いながらドレスに着替える。
先日注文した中にも謁見用のドレスはあったんだけど、流石に間に合わなかったので以前着たドレスにする。
ドレスはワンピースタイプで胸元からお腹の辺りまでボタンでしっかりと生地を留める感じ。肩口からお腹の辺りまでは小さなフリルで装飾してあってかわいい。肩口に加工されたのと同じフリルでオーバースカートを装飾していて、スカートとの繋ぎ目を隠しているのが結構好きかな。スカートは脚をしっかりと隠してくれて、全周をフレア加工。色は私が山鳩色、お姉ちゃんが鶯色だ。どっちも深くて渋めの緑色だね。
二人で確認をしながら、私はモヤモヤと心配している事をお姉ちゃんに話す。
「陛下、怒ってないかなぁ」
「どうして?」
「だって、こないだ断ったばかりだよ?」
「あれはマギア様の提案だったし、それで怒るような人じゃないわ。大丈夫よぅ」
「お姉ちゃんの自信はどこからくるのか……」
指定された四の鐘に私たちは王宮に行く。四の鐘はアフタヌーンティーの頃だね。だから、お菓子も持ってきた。
私たちはリインフォース家の王都邸からマークさんの御者で、王宮に移動する。
王宮に着くと、馬車にも紋章が描かれているとはいえ、ペンダントの認証がある。流石の警備だね。お姉ちゃんが首から下げているペンダントをマークさんに渡して、それを門を警備する騎士さんに見せる。
王様サイドからもちゃんと騎士さんに話があったのか、手間取らずに通行許可が出た。
こうして王宮の扉に着くと、そこで警護している第一騎士団の騎士さんにエスコートして貰って馬車を降りる。そのまま控えの間まで案内して貰った。
ちなみにマークさんは待機所へ。
「では、しばらくお待ちください」
長い廊下を歩いて、案内されて入った控えの間のソファに腰掛けると、騎士さんはそういって再び警備に戻っていき、入れ替わりで入ってきたメイドさんに紅茶を貰う。
お姉ちゃんは紅茶を一口飲んで、置いてあるカステラをリリムちゃんに分けたりしてるけど、私は……。
「緊張するなぁ……」
「そう? ここまで来たらもう話すだけよぅ」
「そう思えるお姉ちゃん、ほんとメンタル強いよね」
「んー……雫が強いんじゃなくて、蒼ちゃんが強いのよ」
「え? それってどういう……」
コンコン。
「あ、どうぞ」
許可を出すと、陛下付きの執事さんが入ってきた。
「シズク・リインフォース様、アオイ・リインフォース様。陛下の準備が整いましたので、謁見の間へご案内いたします」
よく分からない事を言い出したお姉ちゃんを問い詰められず、私たちは謁見の間へと移動する。
「リリムちゃん、待っててねぇ」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
リリムちゃんに見送られ、私たちは再び廊下を歩く。
そして謁見の間へ入り、玉座の前で私たちは頭を下げる。
一人、入ってきた気配がする。
「国王陛下の御成です」
この声は、宰相様だ。
その声の後、すぐにコツコツと二人分の足音がして、玉座までやってきた。一人は勿論陛下かな。もう一人は誰だろう?
そして玉座に座る衣擦れの音。陛下が座ったらしい。
「面をあげよ、シズク、アオイ」
「「はい」」
私たちはカーテシーを解いて陛下の顔を見る。あ、隣にいるのは魔術師団総長のテオレ・マギア様だね。
そして、陛下が話し出す。
「さて、手紙にも書いてあったが、強くなるために何か頼みがあるそうだな」
「はい。その前に一つ、話は逸れますが義姉のリエラが魔術師団を鍛えると言って王都に来ましたので報告します」
「マギア魔術師団総長からも聞いている」
「先程現れて、早速扱いておったのぅ」
「あはは……それで、その……以前マギア様からご提案のあった学院の教師の話ですが、一度断ってしまったのですが改めて受ける事は可能でしょうか?」
「おぉ。受けてくれるか。これでまた国の魔術が一歩進む」
「はい。それで陛下、その代わりにと言ってはなんなのですが……」
「それが本題だな、申してみよ」
「ありがとうございます、陛下。実は、封印書庫の閲覧許可をいただきたく存じます」
「封印書庫か……」
「いかがでしょうか?」
お姉ちゃんが陛下に尋ねる。
さて、陛下はどう返してくるかな……。
「あそこは一種のダンジョンだが、国の宝だ。諸侯を納得させるのに理由がいる。……すまないが二つ、条件がある」
「伺いますわ」
「一つ、おそらく目的のものを見つけるのに封印書庫を攻略しなければならないから時間がかかる。その期間、アルメイン王立学院の教師をする事。教師なら研究のためと理解を得やすい」
「元々考えていた事ですし、拝承いたしますわ」
「それで、もう一つは……」
「そこまでの人物ならあそこに入ってもいい、という二人の箔が必要だ。身分は間もなく伯爵位の令嬢となるから問題はない。後は実力……Aランク冒険者になるなら許可しよう」
「むぅ……」
「本当はSランクにしたいんだがな」
「それは雫たちの実力的にまだ難しいかと」
「そなたらで難しいならこの国のSランクをAランクにせねばならないな」
Aランクか……。私は考え込んでしまう……。
「Bランクでは足りませんか?」
「ちと弱いな」
「……分かりました」
「蒼ちゃん、いいの?」
「仕方ない……拝承します」
「すまないな」
「とにかく、これで許可が得られるかな」
「教師活動に関しての詳細については、すぐに執務官から連絡させる。Aランクに関してもこちらで処理しておこう。冒険者ギルドには、推薦書がすでに集まっていると聞いている」
確かに集まってるって前に聞いてたけど。集めるだけで提出してないと思ったのに、ギルマスたちめ……。
「後でお仕置きねぇ」
「うん」
私な全力で頷く。
「Aランクのお披露目はゲルハルト・リインフォースの伯爵位授与と同時に行う。社交開始の初日だな」
「「承知しました」」
「よろしく頼む」
こうして、謁見が終わったのだった。
◇
「お嬢様、王宮から手紙が届きました」
翌日、リインフォース王都邸で待っていると、マークさんが手紙を持ってきてくれた。
私とお姉ちゃんは封印を確認して手紙を開く。
そこには、綺麗な字で、学院の教師として必要なもの、ドレスコード、開始日時などが書いてあった。
「えっと、授業の持ち物は自由。授業に必要なものは国に申請してもいいし持参してもよい」
「ドレスコードはないって書いてあるわねぇ。ただ、教師としてふさわしい装いとする事、とも」
「あ、お忍びで遊びに行くような服装でいいってコメントしてくれてるね。助かる。それから……開始日時は、来週から」
「急ねぇ」
「来週から丁度年度が変わるよ」
「なるほどねぇ。それでちょっと急なのね」
「ねじ込んでくれたみたいだね」
「一旦リインフォース領に戻って、説明しに行きましょうか」
「そうだね」
私とお姉ちゃんは、マークさんに今日は一度帰る事、来週からしばらく王都邸に滞在する事を説明して、帰る。
標を意識して、魔力を探す。
よし、見つけた。
『ワープ』
浮遊感にも慣れたもので、難なく着地。
お姉ちゃんとそのままお義父様の書斎へと向かう。
コンコン。
お姉ちゃんがノックをする。
「雫と蒼ちゃんが来たわよぅ」
「どうぞ」
おや? この声は……お義母様もいるみたい。
書斎に入ると、お義父様、お義母様、ジョセフさんがお茶を飲みながらソファーで休んでいた。
私たちが入るのを見るや否や、すぐにジョセフさんが立ちあがろうとしたのでそのままでいいと手で示す。
「ちょっとお話があって、今いいですか?」
「ああ、いいぞ。どうした」
私はお姉ちゃんを見て、頷く。
「雫たち、教師になるわ!」
「なんだと!」
「端折りすぎ!」
「旦那様も、悪ノリはよくありませんよ」
私とお義母様に責められてちょっとしゅんとなる二人。
仕方ない、私は咳払いして、お姉ちゃんの説明に補足する。
ジョセフさんが私たちの分のお茶も淹れてくれる。ジョセフさんのお茶久々だ。
「魔族に対抗するために強くなる必要があるのは、以前話した通りですが、その方法が学院の書庫にあるようなのです」
「雫たちは陛下に閲覧許可を求めに行ったのだけれど、その条件が……」
「探索期間中、教師になる事と、冒険者ランクをAにする事なんです」
お義父様が唸りながら話し出す。
「教師の件は分かった。だがAランクか……」
以前受けたワイバーン討伐の任務。あれは国と冒険者ギルドの合同依頼になっていて、国が冒険者を召集出来る。
このためAランク以上は拒否するとペナルティがあるので、基本的に参加が必須。それを危惧してくれてると思うんだけど……。
「パパ、遅いわよ。もう受けちゃった」
そうなんだよね。すでに承諾済みである。
「そうなのか……」
「強くなるために必要なんです。あのむかつく神様の言う通りになるのは本当に、とても癪ですけど、私たちが、みんなを守りたいんです」
「ふむ……分かった。クラウディアもいいな?」
「えぇ。とても心配ですけれど、ちゃんと帰ってきてくださいね」
「勿論よママ!」
「私たちの帰る場所は、この家ですから」
と言う事で説明終わり! せっかくなので私たちもきな粉餅を食べながら雑談に参加する。
お義父様とお義母様に学院でのルールとか教えて貰ったよ。
教師は素行の悪い学生にペナルティとか与えていいんだって。私刑はダメだけどね。魔術語の書き取りとかかな、って思ってたら、お姉ちゃんに頭撫でられた。ほんと解せない。
◇
準備なり、冒険者ギルドなりに顔を出していたらあっという間に一週間がすぎた。
リリムちゃんに手伝って貰って、王都邸で準備をする。
ドレスコードはないって言ってたから、冒険者ファッションでいいか。ただし下はセミロングのスカート。どちらかというと商人風? まぁそんな感じ。
お姉ちゃんと互いに確認して、学院へと向かう。
学院へは馬車で行く。場所は、アルメイン王都の北東。騎士団寮の更に北にある。王都全体の敷地を上から見て、学院がこぶのようになっている感じかな。
三十分くらい、のんびりとブルーノを歩かせて着くくらいの距離。
御者だけでも暇だし、簡単に学院についておさらいしておこうかな。
この国には学校はいくつかあるけど、国立はこのアルメイン王立学院だけ。希望する貴族か、テストに合格した庶民が通う事が出来る。貴族はだいたい通う感じかな。人脈作りもあるしね。ちなみに庶民の場合は学費その他は無料になる。
十六歳から十八歳の子女が通う。まあ高校だね。そういえば、私たちって高校中退なのかな? え、異世界とはいえ、よく就職先? があったなぁ……。
閑話休題。教師にはラボが割り当てられており、自由に研究していい。私たちも、割り当てて貰えるとの事。学生は興味のある研究をしている教師のラボに所属して、一つの事を突き詰めるのもあり。
一方で教師はその特権と引き換えに授業をする義務がある。
授業は基礎学問、教養、専門コースの三種類に分かれている。専門コースは更に領主、騎士、魔術師、文官に分かれており、自由に選べるし複数も選べる。ただし領主コースは領主直系しか選べない。という事は、私たちは血族ではないので領主コースは多分無理って事だね。お義兄様は領主コースを選んだんだろうか。今度聞いてみよう。
各科目で単位を取得し、取得単位数が一定数になれば卒業出来る。必修は基礎学問のみ。ただしコースはどれか一つは選んで必要単位を獲得する事となっている。飛び級もありだけど残る人が多いらしい。単位は教師が認めれば付与される。だから仮に初日に認められて付与されれば、以降の授業は出なくてもよいとか。
教師からのいじめやひいきは教師同士の監視、あるいは国からの査察がしっかりしていてまずないから、学生は実力勝負だね。
と、考えているうちに到着。
私は職員さんにブルーノを預け、お姉ちゃんとリリムちゃんと中に入る。
すると、メガネをかけた白髪の初老の男性とシンプルなメイド服を着た女性が出迎えてくれた。
「本日教師としてお越しになるリインフォース家の方ですか?」
「はい」
「そうよぅ」
「私は学院長のブルックス・プレステル子爵です」
「失礼しました。雫・リインフォースです」
「妹の蒼・リインフォースです」
「まぁまぁ、気を楽に。そちらは侍女の方ですか?」
「そうです」
「では、侍女の方はこちらの職員が寮を案内します。職員には寝泊まりする場所が与えられますので。王都邸から通われると聞いているのであまり使わないかもしれませんが……」
「いえ、助かるわぁ」
メイドさんがリリムちゃんを連れていく。
「さて、お二人にはまず職員室をご案内します」
「「よろしくお願いします」」
私とお姉ちゃんが同時に頷くのを見て、一瞬驚いた後、微笑みながら頷いて案内をしてくれるのだった。
◇
「しばらくの間となりますが、ともに働く仲間が増えました。それではシズクさん、アオイさん、ご挨拶をお願いします」
職員室で、私と姉ちゃんは一歩前に出てカーテシーをする。
「雫・リインフォースです。魔術論を担当します」
「妹の蒼・リインフォースです。同じく魔術論を担当します。よろしくお願いします」
廊下を歩いている時に少し話をして、何の授業を担当するか教えて貰ったんだよね。
上級魔術が使える私たち、特にお姉ちゃんの聖属性は珍しいので魔術論を担当してほしいとの事。具体的には「中級魔術基礎論」「中級魔術応用論」「実践魔術論」の三つ。
まず中級魔術基礎論。これは中級魔術を覚えたてか、これから覚えたい人向け。魔力運用と魔術語について学ぶ。
次に中級魔術応用論。中級魔術を十分に使える人が上級を目指して学ぶ。魔力運用と、上級魔術を撃つために必要な瞬間放出魔力の増加、それと魔術語について学ぶ。
この学院では上級は教えていないよう。覚えた人には特別に授業する事があるらしいけど、はてさているのかな?
そして最後に実践魔術論。これが一番期待されている。魔術での戦い方を学ぶ。対人だけでもいいけど、魔物狩りも教えてほしいとか。
どうやら学院長は陛下から私たちのステータスや経歴について聞いたらしい。
ステータスか、そういえば私たち、指導に必要な中級魔術は勿論使えるけど、今どうなってるんだろ。
私はお姉ちゃんに聞いてみる。
「お姉ちゃん、今ステータスどうなってる?」
「丁度雫も気になったのよね。見せ合いっこしましょ」
「うん」
お姉ちゃんが『ステータス』を唱えて、ガラス板のような半透明の板を出す。文字が書いてあるそれを、二人で覗き込む。
===
シズク・ハセガワ・リインフォース 女 異世界人・魔術師
【称号】
大聖女の祝福
――聖属性魔術の限界突破
――聖属性魔術の威力向上:極
――浄化威力向上:極
――魔力消費減少:強
――複合魔術能力向上:強
神の祝福
――魔力能力向上:極
――防御力向上
――自己治癒力向上
――幸運
竜王の加護
――魔力能力向上:極
――魔力攻撃耐性向上:極
――魔力攻撃向上:極
――身体能力強化:強
――物理・魔力防御力強化:強
――ステータス異常耐性:強
――魔力共有
――意思疎通
魔族殺し
ーー魔力攻撃力向上
ーー浄化威力向上
【スキル】
超級聖属性魔術
上級空間属性魔術
中級従魔術
超級魔力操作
超級魔力感知
複合魔術
多重詠唱
並列詠唱
中級詠唱破棄
初級剣術
初級料理
上級調合
成長向上
不老
言語理解
===
「なんか増えてるわねぇ」
「ドラゴンテイマーが竜王の加護になってる!」
「タルトちゃん、頑張ってるのねぇ」
「うん、元気そうで何よりだよ」
タルトは私たちと契約したホワイトドラゴンの子竜。修行してくると言って飛び出して行ったけど、ドラゴンの塒で頑張ってるみたい。
「後は全体的に強化かしら?」
「いや、増えてるじゃん。神の祝福がなんか追加になってるし。それに、魔族殺し? ていうかどれだけ浄化すれば気が済むの」
「蒼ちゃんのも見てみましょうよ」
私も『ステータス』で半透明の板を出し、お姉ちゃんと文字を読み解く。
===
アオイ・ハセガワ・リインフォース 女 異世界人・魔術師
【称号】
大魔術師の祝福
――風、火、水、土属性魔術の限界突破
――風、火、水、土属性魔術の威力向上:極
――風、火、水、土属性の適性追加
――魔力消費減少:強
――複合魔術能力向上:極
神の祝福
――魔力能力向上:強
――防御力向上
――自己治癒力向上
――幸運
竜王の加護
――魔力能力向上:極
――魔力攻撃耐性向上:極
――魔力攻撃向上:極
――身体能力強化:強
――物理・魔力防御力強化:強
――ステータス異常耐性:強
――魔力共有
――意思疎通
魔族殺し
ーー魔力攻撃力向上
――複合魔術攻撃力向上
【スキル】
超級風属性魔術
超級火属性魔術
超級水属性魔術
超級土属性魔術
上級空間属性魔術
中級従魔術
超級魔力操作
超級魔力感知
複合魔術
多重詠唱
並列詠唱
中級詠唱破棄
初級剣術
上級料理
中級調合
成長向上
不老
言語理解
===
「同じ感じに強化かな?」
「蒼ちゃんの複合魔術、ちょっとチートすぎじゃないかしら」
「あ、ほんとだ、私『極』だ。使ってる量の差かなぁ」
「雫の場合、どうしても少ないからかしらね」
まぁ無事に教えられる水準にはなっているでしょうって事で。
問題は封印書庫に行って、ここから更にブレイクスルーするような状態にしなければならないけど……。
「まぁ、なんとかなるわよ」
「だといいけど」
時間割を見ると、私たちの授業は明日の午後から。
明日から頑張るぞっと。
こんばんは。
今回から学院編です。
楽しんでいただければ幸いです




