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92. バイゼル領って楽しい!2

 おはようございます。バイゼル領都滞在二日目。一の鐘も鳴る前の、つまりまだ空が白み始めた日の出前の早朝です。

 昨日は領都についた後、宿をとって市場を散策した。

 門番さんが勧めてくれたこの宿は、貴族向けとお勧めされただけあってかなり過ごしやすかった。お風呂ハウスは、次はベッドにこだわるか……。

 なんて広縁に座って考えていると、リリムちゃんが起きたらしく、目を閉じながら伸びをしていた。


「おはよう、リリムちゃん」

「おはようございま……アオイ様がもう起きてらっしゃってる?!」

「目が覚めちゃったんだよね、まだ寝てていいよって言える時間はないけど、ゆっくり準備しても間に合う時間だから、とりあえず顔でも洗ってきたら?」

「はい!」


 私たちは、こんな早朝だけど出かける。港に漁師さんとの契約と、魚を直接買い付けに。

 昨日行ったウォーカー商会バイゼル支店で、魚をたくさん買いたい事を伝えたら数日間だけ契約した方がいいって話になったんだよね。あらかじめ話もしておいてくれるって事だし、その契約のためにもそろそろお姉ちゃんを起こすか。

 私は、私が寝ていた隣のベッドですぴすぴと寝ているお姉ちゃんを揺さぶる。


「お姉ちゃん、港に行くよ」

「んゆ……。後、鐘二つ……すやぁ」


 鐘二つって何時間寝る気なの……。でもこれは想定の範囲内。こんな時間にお姉ちゃんがすぐに起きるとは思ってない。だから私はお姉ちゃんの体を更に揺さぶりながら言葉を続ける。


「残念だなー。お姉ちゃんの好きな魚があると思うんだけどなー」

「買ってきてぇ……すやぁ」


 これも想定内。だけど起きないなら仕方ない。次が本日の最終兵器。


「お姉ちゃんが行かないなら仕方ないか。じゃあ私はリリムちゃんと、『二人だけ』で『デート』してくるね」


 私のその言葉を聞いてガバッと起き上がるお姉ちゃん。

 寝ぼけ眼のまま、むにゃむにゃと私に向かって言う。


「おはよう、ごじゃいます」

「はい、おはよう」

「……デート」

「そうだね。漁港だけどね」


 そして少し覚醒したのか、目を開けてお姉ちゃんが力説する。


「蒼ちゃんと一緒な事が重要なの!」

「はいはい。じゃあ港行くよ、準備して」

「もう」

「おはようございます。準備、お手伝いしますね」


 顔を洗いに行っていたはずだけど、いつの間にかいつもの冒険者服に着替えたリリムちゃんがお姉ちゃんに向かって話す。


「おはようリリムちゃん。お願いねぇ」


 こうして早朝の準備は進む。


    ◇


「その網こっちよこせ!」

「この魚が例の分だ! 持ってってくれ! 間違えんなよ!」

「おうよっ!」


 私たちは一の鐘が鳴ってすぐくらいに、町の東側にある漁港へとやってきた。着いて早々、喧騒がすごい。

 そんなバイゼル漁港は、魚の仕分けや商人たちへの販売をする屋根のついたスペースと、岸に接するように開けた水揚げスペースがある。

 何隻もの船が岸に横付けして、それぞれ獲ってきた魚を籠ごと、あるいは網ごと陸にいる人に渡している。

 私はどれが売って貰える魚かなとウキウキしながら、昨日ウォーカー商会バイゼル支店長のポールさんに来て欲しいと言われていた事務所を探す。


「お姉ちゃん、あそこかな?」

「屋根があって一室になっている場所、だったかしら。要は小屋ね」

「うん。小屋は他に見当たらないし、行ってみよう!」


 私ははやく、はやく、とお姉ちゃんとリリムちゃんを急かす。


「蒼ちゃん、よっぽどうれしいのねぇ」

「だって魚だよ!」

「そうね、雫も楽しみだわ」


 扉を開けると、そこはお義父様の書斎くらいのスペースの部屋だった。机には座っている人が一人、その後ろには書類棚。それから、ドアのそばにポールさんが立っていた。

 椅子に座っていた人が驚いて立ち上がる。


「まさか本当に来るとは……」


 おや? 歓迎されてない?


「だから申しましたでしょう。……シズク様、アオイ様、おはようございます」


 ポールさんが挨拶してくれたので私たちも返す。


「紹介させていただきます。こちらが漁港長の……」


 それから慌てて、正面に座っていた筋骨隆々の逞しい体つきで短髪の男性が頭を下げる。


「この漁港の運営をバイゼル領主より承っております。リインフォース家の方々、しかもご令嬢がこのような場所に本当に来るとは思わず、出迎えをせず大変失礼いたしました。謝罪いたします」


 あぁ、歓迎されてないんじゃなくて来るとは思ってなかったのか。

 たしかに貴族女性はあまり近づかないかもしれない。私は早速、もうとにかく早く魚を手に入れたくて口を開く。


「謝罪を受け入れます。気にしてないので大丈夫ですよ。今日からよろしくお願いします。蒼・リインフォースです。こっちが姉の……」

「雫・リインフォースよぅ。よろしくねぇ」


 自己紹介も終わったし、早速商談に入る。


「それで、ポールさんから、話は聞いていますか?」

「はい。しかし、通常分以外の余剰を全部ですか……本当に大丈夫ですか?」


 うん。その心配はもっともだよね。だから私は、かばんを見せて答える。


「大丈夫です。結構大きな魔術具のかばんですし、資金もあります」

「承知しました。では、こちらが契約書となっております。ご確認いただき、よろしければサインをいただけますか?」


 私たちの前に紙を置く漁港長さん。

 今日から三日間、通常市場に流している以上の余剰分は全て買い取る事。また、そのために通常より漁の規模を拡大する事。漁獲量に制限は設けない事。

 獲れない場合もあるので、希望する量に届かない可能性もある事。

 などが書かれている。私たちに不利な契約でもないし、要は漁師さんが頑張った分だけ買い取りますっていう契約だ。私とお姉ちゃんはさっとサインをする。

 控えを一部貰い、かばんにしまう。


「ありがとうございます。では荷捌き場に行きましょう。少々荒くれ者が多いですので、何卒ご容赦をお願いします。また、お召し物も汚れてしまう可能性がございますので、ご注意ください」


 私たちは漁港長に連れられて荷捌き場、屋根がある陸揚げした魚を仕分けしたり販売したりする場所へ行く。

 到着すると、作業している漁師さんたちに向けて声を張り上げる漁港長さん。


「手を止めて集合してくれ!」


 なんだなんだと漁師さんたちが集まる。

 ある程度集まったところで、漁港長さんが先程と同じ大声で話し始める。


「漁の前に話したが今日から三日間、獲れるだけ獲って構わない。普段の取引以上の追加分はこちらにいるリインフォース子爵家が全て、購入してくれる契約を結んだ。リインフォース様、一言お願い出来ますか?」


 あ、挨拶いるのか……。


「はーい」


『さ、蒼ちゃん!』

『え、私?』

『そうよぅ』


 というアイコンタクトをお姉ちゃんと一秒かからずして、私は一歩前に出る。


「魚料理が好きで、バイゼル領まで来てしまいました。獲って貰う魚は、活きが良く、量が多かった場合には契約外で追加の支払いも考えています。例えば……今日の分を少し見せて貰えますか?」


 少しざわつくが、最前列にいた人が音頭を取って、「お、おい、一籠持ってこい」と慌てて指示を出してくれた。持ってこられた籠には、活きが良く、身が締まったとても品質の良い魚が何匹も入っていた。私は先程指示を出していた漁師さんに尋ねる。


「普段、この籠だとどのくらいで売れますか?」

「この籠だと銅貨五十枚ってところじゃないか……失礼、販売しております」


 それを見て私は、かばんから袋を取り出して銀貨を三枚、漁港長に渡す。

 それをごくりとしながら見ている漁師さんたち。


「これはこの籠に対しての値段です。今日の分も含め、絶対に損はさせません! 私は魔術具のかばんを持っているので所持も保存も問題ありません! 先日カステラで稼いだので資金も潤沢です! いくらでも買い取ります! 私においしい魚料理を長く楽しませてください! みんな! 稼ぎ時だよ! よろしく!!」


 ……。どうかな……。


「「うおおおおおおおお!!」」


 これでテンションが上がったらしい漁師さんたち。

 この後すぐ、今日の分の買取に入ったんだけど籠全部持ってきそうな勢いだったので、流石に既存の販売先を大事にしろ、その中には領民もいるんだぞ、とちょっと説教したよね。


「では、明日もよろしくお願いしますね」

「「任せろ!!」」


 一日目の獲得量。

 鯛、鯖、鯵、その他多数。


    ◇


 バイゼル領都の滞在三日目。今日も漁港で買い付けの二日目。漁港長さんに一括して割増料も含めた金額を払い、荷捌き場にある魚をするするとかばんにしまったところ。

 一人の漁師さんが私たちに話しかけてきた。


「嬢ちゃん……失礼しました。お嬢様の魔術具のかばんはどの程度入るのですか?」

「話し方普通でいいですよ。そうですねぇ、この港くらいでしょうか」


 ちゃんと試した事無いんですよね。と言うととてもびっくりしていた。実際にはこの漁港より広い容積と時間経過防止効果のある『ストレージ』って空間属性魔術だけど、問題にしかならないから、私たちは対外的にはかばんと言っている。


「助かる……。俺も欲しいんだけどなぁ、高いだろ」

「これ、貰い物なので値段が分からないんですけど、前に魔術具師に聞いた話だと最低でも大金貨だそうですね」

「俺もそう聞いている……」

「欲しいなら雫の知り合いに聞きましょうか? 値段も相談に乗れるかもしれないわ」


 お姉ちゃんが漁師さんに尋ねる。


「いや、それでも到底用意出来る金額じゃない。気持ちだけ受け取っておくよ。それからこっちが本題なんだがな……」


 なんて話をしていると、漁師さんがちょっと真面目な顔で話始めようとする。しかし、そこへ漁港長さんがやってきた。


「シズク様、アオイ様。ちょっとよろしいですか?」

「はい。なんでしょうか」

「何かしら?」

「実は魔魚の目撃情報が出ています」

「「魔魚?」」

「あぁ、俺もそれを言おうとしてたんだ。魔物の魚で魔魚だな」


 なるほど、要は魔物か。

 それなら、もしかして食べられるのでは?


「お姉ちゃん!」

「分かってるわ!」


 後ろに控えていたリリムちゃんも何を考えているのか分かったようで、あー、なんて天を仰いでいる。

 そして私は、置いてけぼりの漁港長と漁師さんに提案する。


「その魔魚って、私たちが漁に付いていって討伐したらダメですか?」

「「は?」」


 漁師二人の声が重なる。


「船を出してくれるなら、魔魚討伐やりますよ」

「貴族のお嬢様が何を……」

「あ、私たち冒険者もやってるんです。はい」


 私とお姉ちゃんはBランクと書いてあるギルドカードを二人に見せる。

 それを見てたじろぎながら、漁港長さんはしかし意を決して更に言葉を紡ぐ。


「ですが、危険が……」


 漁港長は反対みたいだね、安全が最優先なんだと思う。立場上仕方ないよね。だけど一方で、一緒に話を聞いていた漁師さんは……。


「俺の船に乗りな! 嬢ちゃんたち!」

「おい! 貴族のお嬢様だぞ。何かあったら……」

「あぁ、大丈夫です、漁港長。それなら私たちに何があっても不問にする書類を用意します。多分大丈夫ですよ。私たち強いので」

「そうよぅ。蒼ちゃんはとっても強いんだから」

「しかし……」


 ごにょごにょと行っている漁港長の前に、リリムちゃんが立って口を開く。


「僭越ながら……申し上げます。漁港長ごときが子爵家ご令嬢に意見をするのでしたら、正当な手続きでバイゼル領主へ通達しますがよろしいですか?」


 おおっと、リリムちゃんがシゴデキメイドだ……。

 それを聞いてもう何も言えないと思ったのか、渋々と漁港長が話す。


「……かしこ、まりました……。ですが、魔魚は本当に危険なんです! 十分に気をつけてください!」


 漁港長、荒くれ者をまとめる時は厳しかったりするけど、基本優しいんだよね。だから私も素直に受け取る。


「侍女が失礼しました。今後領主様と話す機会があったときも決して不利になるような連絡は致しません。心配してくれてありがとうございます」

「話もまとまった事だし、明日はよろしくねぇ」

「おう」


 漁師さんも見つかったし、魔魚、楽しみだね。戦いじゃないよ。勿論味だよ。


    ◇


 翌朝、今日もお姉ちゃんを叩き起こしてリリムちゃんと三人で漁港に行く。

 早速、昨日話した漁師さんの船に乗せて貰って、沖へ出る。

 やや波の高いちょっと荒れた海と、白んだ空。後で港から見てみようかな。この世界に来て、そう言えば初めての海だ。

 何隻もの漁船がそこそこ離れた距離で、方陣を組むように等間隔で並ぶ。

 漁のポイントだという地点から、少しして。


「いたぞ! 船を動かすぞ!」


 右側面の方から、大きなノコギリの刃のような背ビレが見える。

 大きい。いいね! 食べ応えありそう!

 なんて思っていると、漁師さんが教えてくれる。


「あいつは頭がギロチンの刃みたいになってて、正面に行くと突進されて、船が壊される。船を動かすから揺れるぞ! しっかり捕まってろよ!」


 漁師さんが汽笛を盛大に鳴らした後、短く三回鳴らす。

 すると、船団が一斉に前に動く。そしてさっきまで船がいた位置を、魔魚が通り過ぎる。

 魔魚が立てた波で、船が大きく揺れる。

 なかなか早い。

 それにしても……。


「なんて名前だろう?」

「なんて名前かしら?」


 私とお姉ちゃんの質問が被った。

 それも聞き取った漁師さんが大きな声を張り上げて教えてくれる。


「レイザーヘッドテューナだ!」


 テューナ……ツナ?


 お姉ちゃんと顔を見合わせて叫ぶ。


「「マグロ!!」」

「よく知ってんな、そりゃヤマトの呼び方だな」

「絶対確保! 蒼ちゃん、絶対確保よ!」

「分かってる! そんなおいしそうな名前の魚逃がすものか!」


 しかし、漁師さんが怪訝な顔をして尋ねてくる。


「テューナがおいしい? 普通のテューナを食べた事があるが、あんなに血生臭い魚もなかなかないだろう?」

「「え?」」


 お姉ちゃんと疑問符を浮かべて悩んでしまう。んー……あぁそうか。


「それは血抜きが出来ていないんですね。マグロはすぐに血抜きしないと血が全身に巡ってしまうし、血の熱で身が焼けてしまうんです」

「血抜きったって漁港に揚げてすぐにやってるぞ」

「獲ったらすぐです。船の上でやらないと」

「なるほどな。今度やってみるか」

「ですがアオイ様! 今はそれよりそこの魔魚ですよぅ」


 リリムちゃんに言われてハッとする。そうだ、まずはこの魔魚をどうにかしないとね。

 こんなおいしい魚を知らないなんて、教えてあげなきゃ。私のやる気が最高潮になって、告げる。


「私がみんなに食べさせてあげるよ! 最高のマグロをね!」


    ◇


 士気凛然とはなったものの、しかし食べられない場合もある。だからまず、お姉ちゃんに魔力感知をして貰って、汚染の度合いを測る。


「どう……?」

「汚染は……されてないわ!」

「よし、浮かせて頭と尻尾を切断、そのまま血抜きでどう?」

「それで行きましょう。こっちに向かってきているし、やっちゃうわね」

「そうだね……このまま船を前進させてください!」

「あ、あぁ……だ、だが、レイザーヘッドテューナが後ろから追いつくぞ!」

「させません!」


 レイザーヘッドテューナが間もなく私たちの乗っている船の船尾にぶつかろうというところで、お姉ちゃんが『フロート』で持ち上げる。

 帆よりも高く持ち上げられたレイザーヘッドテューナを見て、唖然とする漁師さん。周りの船でも、同じ反応をしているっぽい。

 そして空中でジタバタするレイザーヘッドテューナ。食材だぁ!

 私は並列詠唱と多重詠唱でがっつりと強化した『ウィンドギロチン』で、レイザーヘッドテューナの頭と尻尾をバッサリと切る。

 

「お姉ちゃん!」

「任せて!」


 お姉ちゃんが並列詠唱で、私が切断したレイザーヘッドテューナの頭と尻尾を海に落ちる前に浮かせる。

 よしよし、私の出番だ。

 私は『ウォーターフロウ』を詠唱して、レイザーヘッドテューナの血抜きを始める。

 絶対においしくするという強い意志の元、リリムちゃんと協力しながら血抜きを行う。

 二人で血抜きをする事数分。もう出なくなったかな。

 私は更に、並列詠唱でレイザーヘッドテューナの腹を切って内臓を取り出す。そして『アイスロック』を唱えて氷でレイザーヘッドテューナを覆う。全身凍らせはしない。冷蔵と氷蔵のギリギリを攻める。


「どう? 蒼ちゃん」

「うん。出来たよ。しまっちゃうね」


 周りの漁師が呆然と見ている中、私とお姉ちゃんはレイザーヘッドテューナをかばんに入れる。

 討伐完了っと。


「討伐完了しましたよ」


 ……。


「すげーな嬢ちゃん!」


 とは漁師さんから。周りの船からも歓声が上がっているのが聞こえる。


「ほんとにすげーよ!」


 そう言いながら漁師さんは私の背中をバシバシと叩く。私は叩かれながら満足げな顔をするのだった。

 でもちょっと痛いよ! 乙女に! 乙女にそれは酷いから!


    ◇


 レイザーヘッドテューナがいなくなったので、漁を始めるみなさん。

 もう危険はないし、仮にいても私たちがなんとかしてくれると思ったのか、物凄い勢いで漁を頑張ってくれた。

 結果……。


「昨日の二倍になるとはねぇ」

「やったわね蒼ちゃん!」


 普通の魚に、それにマグロ。勿論お金は割り増しで払ったよ。私はこの三日間の結果に大変満足しています。

 あ、レイザーヘッドテューナは少し残してきた。家族のお土産にはなるでしょう。腹上は貰ったけどね。

 漁師さんたちの野太い大声援に包まれて私たちは港を後にする。


「いやー、一杯買えたね」

「えぇ。それにマグロも」

「うん!」

「お嬢様たち、この魔魚を捕獲しようって熱意が殺気じみていたんですけど、そんなにおいしいんですか?」

「お、リリムちゃん興味ある?」

「めちゃくちゃありますよ……。他の魚と見る目も違いましたし」

「じゃあリリムちゃん、まずは赤身と中トロ辺りで慣らすといいわねぇ」

「うん。その後に、大トロを味わってから」

「最後はヅケね!」

「アカミ? チュウトロ? 調理法ですか?」

「ま、楽しみにしててよ」


 私とお姉ちゃんがニコニコしながらリリムちゃんを見る。


「一体どんな味なんでしょう……」


 リリムちゃんのじゅるりという音を聞きながら、私たちは次の場所へと向かうのだった。

引き続き双子はバイゼル領都で魚を堪能するようです。


楽しんでいただけたら幸いです。

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