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11 アルクトラ

「いや~ごめんなさいね。いきなりこんなことになっちゃって」

「いえいえ、むしろ紹介してくださってありがとうございます」


アルクトラの謝罪に詩音が答える。

僕はアルクトラとコラボ以来だが、レイフ本人ではないという体なのでその話をするわけにはいかない。

今は詩音に振られない限り喋らないつもりだ。


「にしてもすごいバズり方ですねえ。まああのクオリティですっかり面白いし伸びるのは納得だけど、いきなり1万人か~」

「今でも増え続けてますね。いまだに何が起こったか理解できていませんよ」


詩音が苦笑しながら話す。気持ちの整理を付けれていない状態で通話をつなげたんだからそれも当たり前か。

なんで詩音を落ち着かせずにいきなりつなげたかと言うと、アルクトラはそういう速度を重視するVTuberだからだ。


VTuber業界は速度が命。刻一刻と変わるトレンドに臨機応変に対応していかないといけない。

企業勢で箱を作っていると話は変わってくるが、自分たちは個人勢。

アルクトラも今でこそ英霊ファミリー立ち上げて箱を作っているが、元々は個人勢で一人闘っていた。

だからこそこの新人がこの先生き残っていくかどうか判断するためにそういったスピード感を重視しているらしい。

……というようなことをこの前裏で喋っていたときに言ってた。

この先個人勢としてやっていく上で、アルクトラとコネを作っておいて損なことは無い。

アルクトラに良い印象を与えるのは大事だと判断したというわけだ。


「でも私も見たけど面白いコンテンツを作り出していますね。このサイコパスまとめの切り抜きすごいですよ!」

「そんな私すごいことしてましたっけ……?」

「いやいや、普通の人は死体の上でナイフを舐めまわすように見ながら、安らかに眠れたかななんて言いませんよ」

「え? 配信映えを狙ったんですけど。ほら、死体の上で飛び跳ねて儀式する人だっているじゃないですか」

「あ、この人本物だわ」


アルクトラがシオンのサイコパスさを実感する。

まあ僕も長い付き合いとはいえ、死体を踏みつけながら鎮魂の儀式を始めたときはどうしていいかわからなかった。


「まあ伸びるべくして伸びたわけですね。で、もう一つ聞きたいことがあるんですけど」

きた。おそらくこれがアルクトラが話しかけてきた一番の理由だろう。

「特別なソフトってもしかしてレイフ・フェイク=リベリオンがこの前限定配布したソフトのこと?」


やっぱりそうだ。技術屋のVTuberとしてキャリアをスタートさせたアルクトラはこういった話題に目ざとい。

レイフの特別なソフトを使っているのじゃないかという噂を聞きつけてきたんだろう。

以前、アルクトラとコラボした際にどうやって超人じみたクオリティを保ちつつ投稿頻度を維持できているのかという質問をされたことがある。

その時ははぐらかすしかなかったが、アルクトラとしてはどうしても知りたいことだったのだろう。


「はい、運よくレイフ君のソフトを手に入れることができて活用させてもらってます」


詩音が素直に肯定する。まあ隠してもしょうがないからなあ。


「やっぱり。いいなあ~」


アルクトラの羨ましがる声が聞こえる。


「レイフ君のソフトってどういう感じなんですか? 具体的にどういうものなのか全然想像がつかなくて」

「レイフ君を模したAIですね。作業を補助してくれたり、データを分析してくれたりしますよ。後話し相手になってくれます!」


……あ。


「へえ~」


嫌な予感がする。


「レイフく~ん、これも聞こえてるんでしょ~」


ああ、やっぱり。これは反応するしかしょうがないか。


「聞こえてるぞ」

「久しぶりで~す。聞いてるなら早く言ってくれればいいのに~」

「僕はレイフ本人ではないからな。残念ながらコラボのときに裏で何を話していたとかはわからないぞ」


もちろん嘘だ。

こっちのPCに脱走してくる際にちゃんとデータは移したので間違いなくどういう会話をしたかは覚えている。

だが今僕はレイフを模したAIという設定で配布されている。

久しぶりと言うわけにはいかない。


「まあそうだよねえ。さすがにレイフ君しか知りえないこと知ってたら色々大変だもんね」


はい。色々大変です。


「で、君の有料版を買ったらレイフ君みたいなクオリティほどじゃなくてもシオンさんレベルのものは担保してくれるってことですかあ?」

「そうだな。いつ出るのかはレイフ本人に聞いてほしいけど」

「おっけーありがとう! シオンさんそっちのけで話してごめんなさいね」

「いえいえ」

「あ、でもレイフ君の限定ソフト手に入れてるってことはもしかしなくても相当なレイフ君のファンですよね?」

「あ、はい。そうですけど……」

「ならレイフ君紹介しましょうか?」

「いいんですか!?」


食い込み気味で詩音が叫ぶ。

まあそりゃそうなるか。


「おおう、よっぽど好きなんだ。まあバズったVTuberだし多分話しはしてくれるはずだよ。レイフ君に話しとくね」

「ありがとうございます!」


これは思ったより早く詩音とちゃんと話さないといけないことになりそうだな。

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