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10 バズり

「詩音! 大変なことになったぞ!」


レイフ君の声がPCを通して響く。急ぎの用のようだ。


「どうしたの?」


私の返事にレイフ君はウィンドウを次々と表示させながら説明を始めた。


「アルクトラがシオンのことを紹介してくれたおかげで、今登録者がどんどん増えてる!」

「アルクトラ?」


誰だろう、聞き覚えはあるけど誰だったか思い出せない。有名なVTuberだろうか?


「英霊ファミリーを取り仕切ってるVTuberだ。一度僕とコラボしたこともあったな」


そうだ、レイフ君が初めてコラボした相手だ。

たしか、レイフ君に人間離れした配信スタイルやクオリティをどうやって実現できるのかといったことを聞いてた気がする。

VTuberの黎明期からずっと活動していることもあって登録者は多く、あの配信でレイフ君を初めて知った人も多かったはずだ。

でもそんな2000人を超えたばかりの私にとっては雲の上の存在である人がなぜ?


「アルクトラは自分が技術系のVTuberであることもあって、技術があって面白い新人は積極的に紹介していく人なんだ」


なるほど、レイフ君のソフトを使っているからクオリティは間違いなく保証されているし、琴線に触れる部分があったのだろう。

とんとん拍子すぎる。レイフ君様様だ。


「でも、そんな増えたの?」


疑問に思ったことを聞く。

いくら有名人が紹介してくれたとはいえ、そこまで増えるものなのだろうか?


「それが紹介してくれたおかげで、みんなが初配信と収益化配信の切り抜きを見て、そこからバズったんだ。今バズり始めたとこで、1万人近くまで登録者増えたぞ」

「え」


バズった? 1万人?

ちょっと何言ってるか分からない。

急いでレイフ君が開いてくれた自分のチャンネルページを見る。

どんどんと数字が更新されていき、ちょうど登録者が1万人を超える瞬間だった。


「ええ……」


私は夢でも見ているのだろうか。

もしかしてレイフ君のドッキリじゃないの?

頭が混乱して収集が付かない。


1万人ってこんな簡単に達成できるものなの?

普通面白い配信を積み重ねて視聴者を増やしていき、力を貯めたところで動画で一気にバズるものじゃないの?

正直目標としている4万人が夢物語ではないところまで来てしまい、それまで長く時間がかかると覚悟していた気持ちの置き所が分からなくなってしまう。

そんなバズる要素があっただろうか──あれ?


「切り抜き動画?」


そう、今レイフ君は切り抜き動画と言った。

切り抜き動画とは長い配信の面白い部分を切り取って、字幕などを付けながら短い動画にまとめたものだ。

VTuberではすっかりおなじみのものとなり、今となってはVTuber以外の有名人の配信でも切り抜き動画が量産されるようになっている。

2000人の登録者だった私にそこまでしてくれるファンはまだいなかったはずだ。

レイフ君がしてくれたのだろうか?


「僕が配信後に切り抜いて、チャンネルに投稿しておいたやつだ。サイコパスまとめみたいな感じにしたら結構再生してくれたみたいだな」


そう言いつつ動画のページを開いてくれる。やっぱり作ってくれていたらしい。つくづく優秀なAIだ。

そしてそのままページをのぞき込み絶句する。


「10万再生……?」


ええ、私さっきまで2000人の登録者のVTuberだったよね!?

どうしてそんな私が10万再生を!?


「みんな新しいサイコパス系VTuberが来たって喜んでるな」


レイフ君がどことなく嬉しそうに言ってくれるがこっちはそれどころじゃない。

しかし、それだけでは事態は収まらなかった。


「お、アルクトラがフォローしてくれてDM送ってきたぞ」


レイフ君がSwitterのDM画面を開いてくれる。

もうやめて! 私を休ませて!


「『少し紹介したつもりが大事になってしまい、すみません。お詫びにお困りのことがあれば相談に乗らせていただければと思います。ぜひお話させていただけないでしょうか?』ってきたぞ。どうする?」


そんな私の心の叫びも空しく、次々と大事が降りかかってくる。あなたのそのDMが大事にしてるんですが自覚無いんでしょうか!?


「やっぱりいい人だなアルクトラは。普通バズったらお礼を求めてきてもいいくらいなのに気遣ってくれるなんて」


レイフ君が感心するような声を出す。

ええ、分かってますよ! このアルクトラさんは経験者として私が今立たされているこの状況を分かっているのでしょうとも!

でも納得いかないんですよ!


「ちょっと待ってくれる……?」


せめて頭を整理してからにさせてほしい。今のままだと感謝すべきなのにあらぬことを言ってしまいそうだ。

しかし、えげつない行為はいともたやすく行われる。


「ダメだ」


レイフ君の無情な声と共にDMの返事が送られ、瞬く間に通話が始まった。

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