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異世界トラック  作者: 鵜飼ネギマ
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4話 神の存在

「よろしくお願いします」


私は座ったままお辞儀をした。


「君について話はいろいろ聞いているよ、君はついていないな、たまにいるんだそんな不運なタイプの人間が、まあこれもうある意味事故のようなものだからあきらめてくれ。そうだまずこの会社について少しだけ説明させてもらうよ、この企業はねかなり大きい。以上だ、何か質問はあるかい」


「この会社については特に聞こうとは思いません、でも、どうしてこんなことをするのかは教えていただきたいです」


「大丈夫、それはここで全部教える、すべてを、もったいぶらないよこれは現実なんだから、ドラマみたいに真実を小出しになんてもとよりするつもりはない、安心していい、だが同時に覚悟もしてほしい」


「わかりました、お願いします」


「木道君、時に君はおなかが痛くなったことはあるかね」


「え、腹痛ですか、何をいきなり」


「そうだよ、ポンポン、腹、または胃だよ、まあ腸が痛いときもあるがね、」


「いや、ですから説明はしてくれないんですか」


「今説明しているところだよ、答えて答えて」


「はあ、腹痛ですが、最近はあんまりないですけど」


「別に大人の時に、、、という話ではない、子供の時でもいい」


 よくわからない質問だが話が進みそうになかったので答えることにした。


「子供の時なら、年に何回かあったと思いますが」


「その時、君は何思った」


「なにって、別に覚えてないですけど」


 すると有馬さんはにやりと笑いながらこう言った。


「こう思わなかったか、『神様、どうかこの痛いおなかを何とかして、助けて、何でもしますから』って」


「あぁ、まあ言われてみれば思ったかもしれませんが」


「そうか、そうか、君もしっかり旧タイプの人間だ、それでだ、君は神はいると思っているからそう願うのかい」


「神って神様ですが、それは何というかその時だけと言いますか、難しいですね」


「大体の人がそうだ。君のように曖昧にもかかわらず神に頼る。それでいい、だがこれだけははっきり言うと神はいる」


「いるって、見たことがあるんですか、存在は否定しませんけど、確証はないでしょうに」


「いるんだよ、神と言われる存在は、結論を先に言うとねあの異世界トラックはその神に対抗すべく存在している」


「話についていけません、何を言ってるんですか」


 私が理解に苦しんでいる中話がどんどん進んでいく。


「すまないな、少しわかりにくかったようだね、一から追って説明するよ。人間は主にピンチの時、さっき君に聞いたように腹痛でもなんでも危機に直面した瞬間に人は神に願うものだ。それはね、言ってしまえばプログラムなんだよ、」


「プログラム?」


「そう、神が人類を創成した時に埋め込んだプログラム、DNAに近いものだと思ってくれていい、危機に直面した時に神に祈るというもののな。これが厄介極まりない。何せ、この日本。ほとんどが無神論者といってもいい、ハロウィンで盛大に騒いだ後、クリスマスをしその後正月を迎える。そしてそれを別にやらなくてもいい、完全に本人の意思で行う。別に神を自分の人生において必要としていない、といっても過言ではない」


 確かに言われてみれば、宗教的に何か食べれないだとかそんなことを聞いても、どこか他人事で、自分に有益なものしか取り入れていないかもしれない。


「実際必要ないのだが、その無神論者でさえも、ふと己の危機に直面した時、神にすがろうとする。いや、すがらざるえない、それはそうプログラムされているからなのだ。根本的に神を崇め奉るように作られている」


「ソースコードのようなものなんですね」


「そう、そうだよ木道君、しかしね今そのソースコードに異変が起きている」


「異変ですか」


「もともとあれは願うことにより神から命を吸われている。思えば思うほどに、生命力そのものをを吸い上げている。私はその現象に気が付いたときは、神とはその力を吸い上げる装置のようなものだと思っていた」


「神が装置ですか」


「そう、装置だから決められた量、タイミングで吸い上げ、その得た生命力で新たな世界を作り上げ、そこに人を投下する、今までそう私たちは認識していた」


「何も問題なさそうに聞こえるんですが、新しい世界を作っているとして何が問題なんですか」


「それまでは私たちも同じ意見だった。どの神を信じるも信じないも自由だし、別に吸われたからと言いて寿命が著しく縮むわけでもない。我々は減少は確認できたが特に危険性はないと判断していた」


「その言い方、何かがあったってことですか」


「ああ、研究の中、偶然の重なりで異世界というものを見つけた。異世界はα25と名図けられ私たちは神の研究を止めそちらを観察していた。その異世界は平和で、食料もあふれ、特に欲もない人が住んでいた、理想郷だと思う者のいるだろう。そんな世界を遠くから眺めていたある日、突如現れたのだ」


「現れたって、まさか」


「神だ、それは装置でもなんでもなく完全に意思の持った存在だった。その星に降り立ち、その神の手で世界を破壊しつくした」


「そこで我々の出した結論は神を必要としない世界は消されるというものだ」


「この地球も祈りの減少で神に見捨てられると」


「そう考えている、それにもう見放され始めている、今現在に生まれてくる子供にはそのプログラムが無いものも出始めている」


「そんな、じゃあその神と呼ばれるものと戦うしかないってことですか」


「残念ながら我々の技術力、いや、全世界の化学兵器を用いたとしても神には勝てない。この地球という名の科学の発展を約束された異世界では不可能だ。だからと言ってだた何もせずに滅ぶのを待つなんて選択肢は我々にはなかった。最後まであがくことにしたんだ。この世界では勝てないかもしれないが、異世界なら希望がある。異世界で神を殺してもらう。異世界はこの世界と法則も作りも何もかも違う、それは自然現象もしかり、空気、物質、技術、そして、我々の常識ではありえないことが常識としてそこにある。我々はその希望をなんとしてもものにする、そして、その異世界にこの世界の優秀な人材を投与し異世界に刺激を与える。そのために作られたのが異世界トラックだ」


 神を殺すに足る人間を神がいる異世界に飛ばす。


「つまりだ、数々の世界を作り破壊する神を見つけ出し、この世界を破壊する前に神を殺す。それが我々の真の目的」


 強く熱弁され、私も話の中に入り込んでしまってた。


 まるで現実味のない話。しかしこの空間、あのトラック、そして何より目の前で起きた事故、そのすべてがこの話を信じる材料であった。


「これで全部だ。本当にすべて、技術とかそういう理屈が知りたいなら教えるが、聞いたところでわからないだろうし、省いたが、それでよかったかな」


「はい、それに関しては結構です。でも、一つだけ、一つだけ聞きたいことがあるんです」


「そうか、なんだね、神の見た目か、異世界の様子とか」


「いいえ、そんなことではないです」


 私は自然と握りこぶしになっていた。おそらく目つきもさぞ悪かっただろう。


「なんで、飛ばすのは子供なんですか、軍人とか、それなりにいるでしょ、もっと適した人が、何も知らない子供を飛ばすはさすがにひどすぎる」


「じゃあ、君が代わりに行くか、それとも君の妻が行くか、大人なら誰でも犠牲になっていいと君は言うのかね」


「いや、そういうわけでは、でも子供だけっていうのはあまりにも」


「それがね、残念ながらちゃんとした理由がある、今、異世界転生をしてもらっている対象は男女問わず16歳から18歳まで、それよりも若いとあまりにも一人で生きていけないし判断力もない、逆に年が上すぎるとだめなんだ」


「何が、ダメなんですか」


「適応できない、長く生き過ぎている、今までの人生からの固定概念が邪魔して何もかも中途半端になってしまう、もちろん初めは大人を起用した、しかしその世界は神に滅ぼされた」


「そんな、適応って大人の方が経験や知識があるはずだ、大人がダメなら子供ができるなんて考えにくい」


「そうでもない、今普及している、というより流行その最先端を瞬時にものにする力は若いほうがある、とどのつまり適応能力においてそれは大人に勝る。それに異世界は常識も丸っきり違うのだ、魔法がすべての世界。いろいろな人ならざるものと共に生きている世界、魔眼を持つものとそうでないものしかいない世界。無数に存在する。その中に裸一貫で飛び込み、生きていかなければならない、柔軟に適応しなければならない。その才は子供にしかないんだよ」


「そんなの、あなたたちの決めつけで、もっといい方法があるはずだ」


「ことはそんな流暢なことを言っている場合ではない、今この瞬間にこの惑星、銀河ごと消されるかもしれない、私たちは今最善を尽くしている、君がそう思うなら、ちゃんとしたデータを持ってこい」


 肩で呼吸をし、私に怒鳴った姿はまさに真剣ではじめに会ったときよりも人間味を感じたのは言うまでもない。私は圧倒され何も返す言葉が出なかった。


「もう質問はいいかい、今私は少々熱くなったが、君みたいな人間は私は好きだよ、それは覚えといてくれ、仕事のことは飯田に頼んである、後はあいつに聞いてくれ、また聞きたいことがあればいつでも言ってくれ」


 そう言って部屋を出ると、すぐさま有馬さんが戻ってきて扉を再度開ける。


「あぁそうだそうだ、大事なことを言い忘れていた、木道君、この仕事をやる、やらない、どちらか、今、答えて、直観でもなんでもいいから、ちなみにやらないならここで殺すから」


 そう言ってポケットから銃を取り出した。


「えっと、やります、家族がいるので」


 あまりにも簡単に出てきた銃に気圧され即座に答えてしまった。


「そうか、よろしく」


 バタン、扉の閉まる音が部屋の中に響き渡る。


 私はしばらく一人部屋の中で座ったまま動けなかった。


 だまされちゃいけないな、一瞬でもいい人だと思った自分がいた。理由があるにしろ、あの人は平気で人殺しをするような人なんだ。


 手の震えが止まらない。今聞いたすべてが仮に本当だとしたら私はとんでもないことに巻き込まれてしまったという、深い後悔が後になって押し寄せてきている。


 私は一人取り残された何もない部屋で先ほど聞いた話を頭の中で整理し始めた。


 まず、神様がいる。そこから驚いた。


 それは、存在を信じる人がいるのはわかるが、私は神を信仰しているわけでもないし神様が嫌いとかそういうわけでもなく、ただ単に、いるわけないとそう思っていた。


 いるとしたらこんな国々で戦争なんて起きるはずがないと思っていた。しかし、そうじゃない、神様はいるが、私たちは眼中にないという話。ただ地球に住む人たちの信仰だけを集めこちらにはもう何も還元するつもりのないただの餌としか思っていないということになる。


 こんな話が事実だとしても、世界に発表できるわけがない。今いるこの組織がどれだけ大きな存在だとしても、これは不可能な話だ。陰謀やでっち上げでより世界が混乱するだけなのだから。


 そして、その神がこの世界を消そうとしてるという話。


 話の流れから、そう神が思っても仕方がないとは思う。理にかなっているというより自然的に普通にそう思われても致しかな無い世界であるとは思うからだ。


 その証拠が私なのかもしれない。神を信仰していない。


 科学が進む中どんどん神の仕業だと思われていたことが立証され現象として事実を解明しすぎたのだ。いなくても何ら生活に支障がない、むしろ神を信仰することによりより生活が窮屈になっているといっても過言ではない。


 そんな世界、神様にとって本当に必要なのだろうか。


 そして異世界。


 どれだけあるのかわからないがその異世界がすべての鍵になっている。その異世界にこの地球の人間を送り出し、神を倒す手助けをしてもらう。


 針の穴を通すような話ではある。可能性として低すぎる。しかし、この世界に神が現れたとしても勝つことができないのなら仕方がない。


「今できる最善か」


 異世界トラック。


 勢いと脅しでやるといったが、これからそうなるんだろうな、自分があれをやると思うと今から体の震えが止まらなくなってしまう。


 そうこう考えていると、扉のノックするする音が聞こえた。


「俺だ飯田だ、大丈夫か入っても」


「はい」


 私は慌てて額の汗を手で拭い、入ってくる飯田さんの方を向いた。


「聞いたのか、話」


「はい、全部」


「そうか、お前さん死んでないいてことはやるんだろ、運転」


「そうなりますね、よろしくお願いします」


「今日はいろいろ疲れただろ、仕事のことや給料のことは全部明日にしよう。乗せてってやるから今日はもう休め」


「わかりました、ありがとうございます」


 その後は飯田さんがトラックを運転し私は助手席に乗り帰路に着いた。


 途中、明日の集合場所と必要なものだけ言われ家の近くの駅で降ろしてもらった。


 トラックの背に頭を下げ家へと向かう。こんなに内容の濃い日は初めてだ。


「これからどうなるのだろうか」


 あの目撃した事故の明確な理由を知った。それだけで終わりならこんな気持ちではなかっただろう。


 明日から私もあのトラックを運転し人を飛ばさないといけない、そう考えると足が竦む。職が見つかった嬉しさよりも絶望感が勝り精神状態は悪化したと言っても過言ではない。


 もう引き下がれないところまで来てしまっている。ほんの朝まで、最悪借金、離婚、だったのが、最悪己の死。


 生きるためには人をこの先ずっと轢き続けななければならない。自分にできるのだろうか。


 この世界の生存と一人の人間の人生。この二つを天秤にかけなければならない。


 その選択をこれからし続けなければならないのか。


 考えていると、あっという間に家についてしまった。


 私はいつものように扉を開けた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

少し会話が多く読みにくかったら申し訳ございません。

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