『金曜日』
あーしこと七曜日々は多重人格者である。
あーしの分までカンペ用意するなんて水野のやつ。
まあ読まなくても良かったんだけどバレたときが面倒だからちゃんとやっておくのさ。
あーしは金曜担当の金野。適当によろしく。
「だるい」
登校すんのがもう辛い。
あーし日に当たると溶けちゃうんだ。
だから帰らせろおら。
「こんちゃん帰っちゃだめだよ」
「あーしはあんたを倒して家に帰る!」
離せ〜。いだだだだ。
痛い!千切れる!折れる!
「折れる折れる折れる」
「おとなしく学校行こーね〜」
館脇一花、見た目と雰囲気と裏腹に結構力強い。あと腹黒。
腕をガッチリ捕まれあーしは逃げ場がない。
あーしは無力だ……。
抵抗と言った抵抗を出来ずに引っ張られていく。
あーし……なんて無力なの……。
「こんちゃんは身だしなみに気を使ったほうがいいよ〜」
「そういうのは火野とかがやってるからあーしには必要ないし」
「メイクは軽くしてあってもね〜」
あーしの髪はボサボサ。
木野の寝相が悪いからこうなってるんだし。
朝はゆっくりしたいからメイクは軽めかつシンプルに。
髪はそのままボサボサにしておけば一花がやってくれるから放置してるんだし。
「よしっとあとはコレで……」
櫛で髪を梳くと黒地に金糸の刺繍の入ったヘアバンドをつけられる。
コレで金野日々、あーしの完成。
ヘアバンドの理由は寝癖が直ってないところを隠すため。
「ぐでーん」
「溶けてる〜」
実はあーし達7人中3人がこんな感じで溶ける。
コレも長年の謎。
いつからこんなにダラーッとしてるんだっけ?
「まあいっか」
「あー思考放棄した〜」
へっ、逃げたわけじゃないんだぜぃ。
◇◇◇◇
放課後ふらっととある教室に向かう。
教材保管室。
なんかいっぱいいろんな物が置いてある部屋。
この教室はとある同好会の部室になっている。
「来たよ〜」
「お、金野嬢でありますか」
コイツは川端日暮。あーしの同士であり同好会の部長。
「新作出来上がってるでありますよ」
「マジ?早速見ていいか」
「宮地殿さっそくあれを」
「了解っす」
宮地英彦。コイツも同士。
宮地は奥から金属光沢のある四角いものを持ってきた。
「コレが新作の『メルトドライバー』ですぞ!」
「仮面ヒーローメルトのベルトじゃん!うわっ!変身アイテムのメルトディスクもあんじゃん!」
ここは特撮ヒーロー同好会。
特撮ヒーロー好きによる特撮ヒーロー好きのための同好会。
あーしも川端も宮地も特撮ヒーローが好き。
毎週録画してあるし劇中の名シーンは完コピできる。
仮面ヒーローメルトは日曜日朝の特撮ヒーローで地中からやってくる敵に古代生物メルトの力を使い戦う正義のヒーロー。
変身者である鳥羽進一が古代ディスクを使い分け戦う姿は子供に大人気なのだ。
ここでは特撮談義に原作再現まで色々やる。
特に川端と宮地は変身アイテムの再現が得意。
市販されている物ではなく自分たちで組み立てるのだ。
「金野嬢!ぜひ変身を!」
「え!いいの⁉」
ぜひ!と言われたからにはしょうがない。
「俺が……俺がやるしかないっていうのか⁉」
「そのセリフは⁉第一話で鳥羽進一が変身を迫られるシーン⁉」
再現してやったる。メルトはヒーローシリーズでも気に入ってるからね。
「くっ、俺が、俺が!やってやるんだ!」
メルトドライバーを腰に当てると自動的にベルトが巻かれる。
高度過ぎて現代科学でできるのか知らないけどここでは割と普通の光景。再現するところはとことん再現する。異常ですが何か?
ベルトが巻かれると全面にあるディスクスキャナーを開く。
「メルト!お前の力、使わせてもらう!」
メルトディスクをディスクスキャナーにセット。
【ディスク!リーディング!】
セットされたときの音声がなったのを聞きながらディスクスキャナーを閉じる。
流れる軽快な待機音。
そして叫ぶ。お決まりの合言葉!
「変身!!」
【スキャニング!メルト!】
【唸れ!咆哮!砕け!最硬!】
「俺が世界を救うんだ!」
【仮面を纏いしヒーロー!メルト!】
カッコよくポージング。
変身は流石に出来ないけどね。
今なんとか量子変換で再現しようと頑張っているらしい。
あんたらホントに学生か?
「うおおおおお!すごい再現度でしたぞ!金野嬢!」
「神回キターー!」
やってて思う。
やべえ超テンション上がる!
メタリックな重量感にこの細かな模様まで!
コレでテンション上がらないのは嘘っしょ!
「金野嬢!コレを!」
「え?何?……!コレは!」
「それは強化アイテムのゴウラディスクっす!それも作っといたっす!」
すっげぇ!いやー眠くても来た甲斐があった!
いやー今度土野のやつにもここに来るよう言ってみようかな。
あの子機械系全く駄目だけどチャレンジ精神はあるし。
年寄りぽい癖に子供っぽいとこもあるから気にいるかも知れない。
ついでにいうと土野が来たらここのオタクどもが歓喜する。
もう性格とか口調がオタクに刺さる。
あーしが勝手に思ってるだけだけどさ。
「いやーいいものが見れましたな」
「いやホントあんたらはあーしの予想を上回るわ」
メルトドライバーで遊んでいたらいい時間になったので解散の流れになった。
はぁ……もうお終いか。
「あんたらは……毎日こんなことしてんの?」
なんとなく思っていたことが口から出てしまう。
「いや?確かに製作作業は毎日やっているでありますが再現は金野嬢が来る金曜日だけですぞ」
「え?」
「金野さんが来ねぇってなんか物足りないっすからね」
「そっか……ありがと」
「正統派デレもいいっすね」
なんか恥ずかしくなってきちゃったじゃないか。
こっち見んなバカども。
◇◇◇◇
七曜日々は多重人格者である。
金野日々は金曜日だけ活動する。
あーしは金曜日が好きかもしれない。
朝はやっぱり寝てたいけどさ。
あーあ!早く明日にならないかなぁ……。
明日は土野か……特撮のことはあーしだけの特権にしちゃおっと。
仮面ヒーローメルトは完全オリジナル
ベルトとディスクで変身するカッコいい戦士なのだ!




