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バイキンマン頑張れ!!(奈々)

作者: 狼花

  「あ、懐かしい!」

ショッピングモールに妹と買い物にきた私。

その中の書店で私はアンパンマンのキャラクターブックを見ていた。

妹の桃花は会計のレジに並び、自分の順番はまだかと腕組みをしてる。

私は手に取ったキャラクタブックを開く。


 ”バイキンマンの発明品”

見出しに書かれたページには、おなじみのバイキンUFO、だだんだん、もぐりんなど

多数の発明品がページ一面に描かれていました。


 「奈々、何見てるの?」 

会計を終わらせた妹が本の入った袋をひっさげてやってきました。

「いえ、少し懐かしいなと思って」

「アンパンマンが?」

「ええ」

「それより、奈々はこんなとこいて恥ずかしくないの? ここ児童書コーナーだよ。」

妹が指摘したように私がいるのは児童書コーナー。

あたりは親子連れの子供たちばかりで高校生の私はひときわ浮いていました。

「あー、そう言われると恥ずかしいような」

「いや、もう少し羞恥心持ってよ、妹の私が恥ずかしいから」

「はいはい。じゃあ、2階の洋服屋さんに行きましょう」

「え、、やっぱりいくの…」

「それはもちろん♫」

うんざり顔の妹を連れて書店を後にした私たちは2階の服屋へと向かいます。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 「はぁ、嫌だな。洋服屋」

「どうしてです?」

エスカレーターで上の階に上がる間に漏らした、妹のため息に反応する私。

「退屈な時間、着ては脱いで、脱いでは着て、喜ぶのは奈々だけ」

「桃花も女の子なんだから着飾る楽しみを少しは知ってくれると嬉しいんだけど」

私の妹はとにかく遊ぶことにだけは興味津々。

カードゲーム、サッカー、釣りなんでもござれと言わんばかりに多趣味なのですが…

着飾ることに関しては何故か興味を持ってくれないんですよ…


 「どうして洋服に興味がないのかな…」

という私の嘆きに桃花が返す。

「1時間も2時間も試着室という正方形の空間に閉じ込められ、何を好きになれと?」



  正論…


 「あははは…でも、最近は少し時間も短くしてるじゃないですか」

「はぁ、」

ため息をついてさらに愚痴をこぼす桃花。

「それは、私が嫌がるからやめたんじゃなくて、店員さんから他のお客さんの迷惑になるからやめて欲しいって苦情がきたからじゃん」


・・・ そうでした… 反省してます  ・・・


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「奈々、ちょっと待って」

「急に立ち止まって、どうしました?」

目的地の洋服屋に向かう途中、急に立ち止まる桃花。

「喉乾いた、休憩しよ」

そういうとショッピングモールの休憩所に寄って自販機で飲み物を買うと、

近くの席に腰掛けて隣接しているキッズコーナを何やら、眺めています。

「何を見てるんですか?」

視線を追うとそこはキッズコーナーで、放送されているアンパンマンのテレビ。

画面の中ではバイキンマンがカバオ君たちを追い詰めているシーンでした。



「なんか、今のバイキンマンが奈々に見える…」

どうやら服屋さんに連れて行こうとする私は敵のようです。

・・・  そんなに悪いことをしている自覚はないんですけどね  ・・・


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「なんとでも言っていいですよ。さ、それ飲んだら今度こそ、服屋さんに…」

「奈々ちゃん!」

言いかける前にどこからか私を呼ぶ声が。

「あ、蛍さんだ」

私よりも桃花が素早く反応!!

なんと、通りかかったのは私が苦手な友人でした。


 『何ィィィ!! このお邪魔虫め!!』


 どうやらアンパンマンの世界では子供達の窮地にアンパンマンが駆けつけたようです。

そして、その瞬間はバイキンマンの言葉と、私の心がシンクロした瞬間でもありました。



 「あの、蛍。何しにきたんですか…」

震えながら問いかけます。

この人が来るといつもろくなことがない。

「あ、私? 今日ね、ここのゲームセンターで新しく導入されるオンラインのシューティングゲームをしにきたんだよ」

ニコニコと楽しそうにこれからの予定を語る蛍は本当に嬉しそうにしています…

「そ、そうなんですか」


・・・  あれ、ってことは今日は本当に挨拶だけ… ・・・


 その言葉を聞き、ほんのわずかな希望が見えました。

それなら、このままやり過ごしてこの御仁には早くこの場からご退場願いましょう。


 「シューティングゲーム!!」

ここで食らいついたのは自称、遊び人の妹。

「あ、私もゲームセンターに…」

「あなたは服屋さんですよ」

妹が言葉を言い終える前に禁止令をだします。


 「奈々、ごめん。けど、女にはいかないといけない戦いがあるんだ」

「ダメです」

「あ、私は桃花ちゃんと一生に遊びたいな」

蛍が手招きをして妹を誘惑する。


 「あなたはゲームセンターなりボウリング場なりどこへでも行ってください!」

「ひ、ひどい」

私は必死に蛍を遠ざけようと桃花の前に出て両手を広げ、2人の間を遮ります。


 ・・・  私の楽しみをいつも邪魔するんだから ・・・


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「が・・頑張れ。私のアンパンマン」

私の後ろでは桃花が蛍に声援を送ります。

「ん? あ、なるほど」

私が服屋に連れて行く悪魔のバイキンマンで、蛍はその窮地を救う正義のアンパンマンということですか。

 

 上等です!!


 今日、私が妹を連れて服屋さんに行くことをどれだけ楽しみにしていたことか。

相手がアンパンマンだろうと蛍だろうと容赦しません!!

私は蛍を睨みつけて牽制けんせいします。

相手はニヤニヤと余裕の表情。

そしてしばらくの間、睨み顔とニヤケ顔の膠着状態が続きました。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 「降参しまーす」

先に手を挙げ、負けを認めたのは蛍。

「本当に姉バカだよね。奈々ちゃん負けたよ」

クスクス笑う蛍は手を振りながらゲームセンターの方向へ向かって行きました。

私は嬉しくて小さくガッツポーズ!


 ・・・  勝った!  ・・・


 「さ、桃花。行きましょ・・あれ?」

振り向くとそこにあるべき姿の人影がなく、代わりに桃花のスマホが置いてありました。

スマホの画面には


  『蛍さんとシューティングゲームしてきます』


と表示されていました。


 蛍を睨みつけている間に桃花は、1人でこっそりゲームセンターに向かったようです。


 蛍にばかり気を取られて桃花が何をしてるかまで気が回らなかった。

「・・・・あ、もしかして」

蛍がニヤけていたのもあっさり負けを認めていたのもこういうことだったのか。

2人はおそらくゲームセンターで合流したのでしょう。


 ・・・   負けた  ・・・


  『バイバイキーーーーン』


 同じ頃、テレビの画面ではアンパンチを受け、空の彼方へ吹き飛ばされるバイキンマン。


蛍に打ち負かされた私。

アンパンマンに倒されたバイキンマン。


 ・・・  あなたも負けてしまったんですね  ・・・


 バイキンマンに突如、親近感を覚えてしまった私。

しばらく遠くから画面を見ているとバイキンマンはその後、

自分のアジトに戻りバイキンUFOを直しては次のアンパンマン打倒の作戦を考えていました。



 その健気な姿を見て、バイキンマンに一度くらいアンパンマンを倒してほしいと思うのでした。






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― 新着の感想 ―
[一言] バイキンマンにシンクロするお姉ちゃん、身につまされました……
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