03. Nightmare
『ユウ兄…
どうしてオレを助けてくれなかったの…?
どうして…
どうして…
ねえ、ユウ兄…』
深夜。
微睡の中、悠祈は弟の姿を見た。
弟…洸稀は泣きそうな顔で悠祈を見つめる。
答えられないでいると、突然、洸稀の体が紅く染まった。
―――――『 』―――――
*****
「洸、稀…」
悠祈はぼんやりと目を開けた。
穏やかな朝日が窓から入ってくる。
そのまま起き上がり、着替えを済ませてリビングに下りれば、昨日連れてきた少年、綾祇がソファーですやすやと眠っている。
その穏やかな寝顔に、一瞬、洸稀が重なる。
はっ…として、悠祈は外へ出た。
見回りと、墓参りのために…。
「洸稀、おはよう…」
悠祈は、そっと足元の墓石の前に花を置くと、そのままそこに座り込んだ。
形だけの墓…。
この場所に、洸稀の骨は埋まっていない。
ただ、魂が眠る場所として墓を作った。
いつかその肉体が、骨が、入るべき場所として。
座り込んだその場から、朝焼けを眺めた。
今日も穏やかな日であるように…と願わずにはいられない。
しばらくそうしてぼんやりしていたが、そろそろ心配性の同居人たちが騒ぎ出すころだと思いだし、腰を上げる。
最後にもう一度、手を合わせて…。
*****
「ただいま…って、どうしたんだ?ウィン」
「どうしたんだ?じゃないですよ!いつまで待っても起きてこないから心配になって見に行ったら、部屋にも家の中にもいないし!どこ行ってたんですか!!!」
家に戻ると、玄関先で待ち構えているはちみつ色の髪の青年、ウィン。
一足遅かったか…と苦笑いで文句を聞き流しながらリビングに目をやると、じっとこちらを見ている綾祇くんと、ウィンに味方するように厳しい目で見ているオレンジ色の飛行物体、イヴ。
これでは完全に悠祈にとって分が悪い。
「ごめん、ごめん。見回りついでに散歩しちゃったんだ」
「剣も持たずにいなくならないでください…。悠祈サンが強いのはわかっているけど、それでも不安なものは不安なんです…」
そういうと、それまで厳しかった目元を緩ませるウィン。
今にも泣きそうな顔を見て、相当心配させていたことを今更実感する。
「さ、遅くなりましたが、みなさん、朝ご飯にしましょう!」
ウィンの明るい声がリビングに響く。
今日もこの声が、笑顔が、曇らずいてくれれば…。
みんなが楽しく過ごせれば…。
そう願う悠祈だった。