表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/71

第1話 転移したらパパラッチ

「おいこれまさか……! どう考えても異世界転移だよな!?」


 森で目覚めた一人の男は、むくりと立ち上がった一分後に正解にたどり着いた。


 篠山トオル。地方公務員の二十五歳。

 フォロワー0人の無名インスタグラマーでもあるトオルは、撮影で訪れていた花畑のど真ん中で、フラッと意識を失ったところまでは覚えている。


 ――つまりは休日に異世界転移。それが今のトオルの状況だ。


「……んで、転移先は定番の森か。実際に自分がなると混乱の極みだぞ」


 冷や汗をかきながらトオルは見る。

 現在地は森の中の少し高台になっている場所。そこから遠い木々の隙間に、初めて見るが知っている存在を確認できた。


 緑色の皮膚をした、恐ろしい顔の小さな生物――すなわちゴブリンが。


「参ったな。俺には武器もないし食料もないし……ええい! とりあえずその前にだ!」


 叫び、ドスン! と自分から尻餅をつくトオル。

 そして一度、目を閉じると、数秒経ってから目を見開いて、


「ステータスオープン!」


 ダメ元で言ってみた。


 トオルの周囲には誰の姿もない。

 もしこの状況で自分に何かしらの情報をくれるとするなら、それはこれしかないと思っての発言だ。


 そんなトオルの思いに答えるように、ブゥン、と。


 小さな虫の羽音みたいな音を鳴らして、トオルの目の前には半透明のウィンドウらしきものが現れる。


「おおっ、あったのかステータス! ……どれどれ、世界については分からなくても、俺については教えてくれよ!」


 ラノベやゲームは好きなので、ちょっと感動してしまうトオル。

 異世界転移をした衝撃と不安は一旦、横に置いておき、自分のステータスを確認する。



【名前】 篠山トオル

【種族】 人間

【年齢】 二十五歳

【職業】 パパラッチ


【レベル】 1

【HP】 40/40

【MP】 25/25

【攻撃力】 15

【防御力】 14

【知力】 10

【敏捷】 18


【スキル】

『モンスターパパラッチ』



「……ふむふむ。なるほど。そういう感じのステータスと表示の仕方で――って、ちょっと待ていッ!」


 遠くには一応、ゴブリンがいるのに叫ぶ。叫んでしまう。

 なぜなら、ある程度はトオルの予想した通りだったが……どう考えても変なものが二つあったからだ。


 言わずもがな職業とスキルである。

 まあスキルの方は置いておくとして、問題の根源は職業にほかならない。


 剣と魔法の異世界と思われるのに、パパラッチ。


 元いた現実世界ならまだしも、こっちの世界でさすがにそれはないだろう! ……と憤慨するトオル。


「あ、あり得ん。こんなふざけた職業とか……!」


 まだ特殊な職業であっても、ステータスの数値が高ければよかった。

 だが残念無念。ほかの職業がどれくらいかは分からないが、レベル1だとしても何だか弱そうな能力値だ。


「さすがは嫌われ者のパパラッチなのか? ……何か足と腕も前より微妙に細くなった気もするぞ?」


 ステータスが現れた喜びから一転、落ち込むトオル。


 農民あるいは村人よりはまだマシなのか? というか、ジョブチェンジとかできるのか?

 頭の中を思考がぐるぐると駆け回る中、眉を八の字にして頭を抱えてしまう。


(!? ――っと。ちょっと叫びすぎたか、俺)


 それに気づいて、トオルは瞬時に現実に戻った。


 ババッ、と伏せるように体を地面に這わせて、高台から少しだけ顔を出して恐る恐る確認する。


『グギャギャ』


 誰かと思えばゴブリンだ。

 さっき遠くに見えた個体かは不明。木の棍棒を持った百三十センチ程度の緑の小鬼が、キョロキョロと周囲を見回している。


(……ふぅ。危ない危ない。一人で騒いで魔物に接近されるとか愚の極みだぞ)


 トオルはフゥーッと息を吐く。強張っていた全身の力を意識的に抜く。


 レベル1でも職業が戦闘系なら確実に勝てるはず。

 ただパパラッチだとどうだろうか? 一対一なら勝てると思いたいが、名前の響きと丸腰なことを考えると不安すぎる。


(ここは様子見で――え?)


 その時だった。


 高台にいるトオルとゴブリンの距離が十メートルを切った直後。

 ブゥンと、またステータスを表示するあの音が突然、鳴った。


 ――トオルではない。表示されたのはゴブリンのステータスの方だ。


 と同時。予想外のことに困惑するトオルの耳に――どこかの誰かの声が響く。


《発見した魔物を撮影しますか?》

今日はもう一回、更新する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ