魔法植物 アメーバリーフ
「おっとそうだ、コイツも入れておいてやんな。」
そういってエランさんが差し出したのはアメーバ育成キットに入っていたピンク色の根っこだった。
まるで桜の様なピンク色の根っこは鉛筆程度の太さの捩れた角みたいになっていて、よく見るとたくさんの細い根が絡まりあっていた。
ふと金魚の水槽に入れる水草は水質の維持や見た目の彩り以外にも魚の寝床や隠れ家、そして卵を産む場所として大事な物なんだとお父さんが言っていたのを思い出しつつ瓶の中にそっと入れる。
沈んだ根っこを眺めているとはらりはらりと絡まりあっていた細い根が解けてふわりと浮かび上がった。
「ふわぁ…たんぽぽみたい。」
「あらあら、川のたんぽぽだったのね。たしか魔法の草だったかしら?」
「魔法の草?」
横で一緒に瓶を覗き込むお母さんが言うにはこれは川に生えている物で周辺の水の流れが緩やかになる不思議な草なんだとか。
「おう!よく知ってたな!この魔法植物はアメーバリーフってぇんだが殆どの奴は川のたんぽぽって呼んでるな。」
「魔法植物?」
「おうよ!つまり魔法の草だ!こいつは川に生えるが水底に根を張らないにも関わらず流されないんだぜ!その魔法のおまけで川の流れが緩やかになって溺れる奴が減って魚なんかも増えやすくなる不思議な草だ!」
へぇーと関心しつつ瓶に目を戻すとピンク色のクラゲが2匹に増えていた。
あれ?と思いつつ見ているとさらにピンクのクラゲがぷくーっと水草の根から現れてたんぽぽの綿毛を中心として囲む様に浮かんでいく。
まるで白とピンクの向日葵が浮いている様だと思っていると更にアメーバの角みたいな物が根の中央からにょきっと生えてプルプルと震えて開いたかと思うと透き通った蓮の花が咲いていた。
「綺麗だろ?ベリルロータスとも呼ばれていて他にもいろんな色があるんだぜ!」
「本当に綺麗…。」
「花が咲いているのははじめて見たわぁ…。」
「んでアメーバはこの葉に隠れて過ごしたり、食べたりするもんでアメーバが好きな草って事でアメーバリーフって名前がついたらしい、ほら!」
エランさんが指で示した場所にアメーバリーフの葉っぱらしい円状に浮かんだクラゲにくっついているアメーバが居た。
エランさんがつんつんと瓶をつつくとサササッと葉っぱに潜り込んでちらちらと角や触手を覗かせている様がとてもかわいらしい。
「こいつはマナを糧にする植物だからあとは水が腐らない様に定期的に水を換えればアメーバを観察できるって寸法よ!」