アメーバヌメヌメ
「お?そいつに目をつけるとはお嬢ちゃんも良い趣味してんな!そいつはアメーバを育てる道具一式だぜ。」
そう言ってエランさんが見せてくれたのは缶ジュースほどの瓶と木のピンセット、そしてデコボコとしたBB弾ほどの赤い石とピンク色の根っこだった。
「この赤い粒がアメーバの休眠核だ。アメーバって奴は水場が干上がっちまったり凍っちまったりする場所だとこんな風に休眠するんだがな?その時にこういう小さな核をいくつか作ってばらまくのさ。きっと生き残る為の知恵って奴なんだろうな。」
そう言ったエランさんから渡された赤い石を摘まんでじーっと眺める。
よく見ると全体が赤い訳ではなく中央が真っ赤でそこからぼんやりと赤い帯が沢山伸びていて、なんとなくアカクラゲを思い出した。
と、突如赤い石を持った手が水に包まれた。
「えっ?」
「ちょ、ちょっとぷにちゃん?!何してるの!」
驚いているとエリィちゃんの声が聞こえ、そちらを見ると慌てたエリィちゃんとその手の上でぼんやりと光を放つぷにちゃんの姿が目に入った。
ヌメッ
視界から外れた指先に何か膨らむ様な感じがしたかと思うとそんな感触がして慌てて確認すると、そこには中空に浮かぶ水の玉の中で私の指を這う何かが居た。
その姿はまるで透き通った海牛で、頭?にある赤い玉から伸びた筋がその体を彩り、3本だけ延びたピンク色の筋が海牛の角の様に揺れていた。
そして3cmほどの小さな体を縮めたかと思うとぐっと体を広げて水の玉の中で泳ぎはじめた。
一見クラゲの傘にも見えるそれを広げると赤い筋の通った触手でまるで蛸の様に泳いでいる。
そっと指を近づけるとふよふよとその周りを泳ぎ、危険がないと分かったのかそっと触手を伸ばして指に止まったアメーバが触覚をふりふりしていてとてもかわいい。
「こいつぁ驚いた。珍しいモンみたぜ。」
「珍しい?」
「ああ、普通の奴は2本角なんだがコイツは3本角だろ?3本角のアメーバは湖の守り神なんて昔話もあって縁起がいいんだよ。とりあえずそのままだとアレだから瓶に入れてやんな。」
差し出された瓶にアメーバの止まった指を持っていくと水の玉も一緒に移動して、瓶に指を入れると瓶の中に入りきらなかった水が霧散した。ぷにちゃん凄い。
瓶に入れられてびっくりしたのか指に張り付いたまま赤い触手を広げてわさわさしているアメーバ。
しばらく見ていると指を離れてふよふよと泳ぎだしたのでそっと蓋を閉めた。
そうして事故?とはいえまだお金も払っていないのに商品を使った事に気づいた私が慌てているとエランさんが言った。
「珍しいモン見れたしそいつはタダでいいぜ!変わりにウチを贔屓にしてくれよな!」
その後ろでため息をついているエリィちゃんとなんだかドヤッとしているぷにちゃんが印象的でした。