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さよならリリ

作者: 雪見団子

Twitterで書いたものを少し手直ししたものです。

 今年もまた、2人の夏が始まる。

 リリはイギリスに住む2つ年下の従兄妹だ。

 彼女は日本人の両親の元に生まれ、3歳の時に両親の仕事の都合でイギリスへ引っ越してしまった。

 冬になるとリリと両親のどちらかが交互に実家に帰ってきて年が明けるとイギリスに戻った。

 何年かしてリリが中学生になると夏に1人で1週間ほど日本に来て冬に両親のどちらかとまた遊びに来る様になった。


 僕らは仲が良かった。リリが来るといつも二人でいた。僕らは互いの1年間(途中から半年)の出来事や文化の違いについてよく話した。


 互いに身近な異性である。気づいた時には恋に落ちていた。もちろん、大人達もその事に気づいていた。

 でも、誰もそれを口に出したりはしなかった。

 僕は海外で働く為に高校と大学で苦手な英語を死ぬ程勉強した。

 リリから教えてもらったりもした。夏には英語の勉強も兼ねて僕がイギリスに行くこともあった。


 そして、僕は大学4年生になった。卒業したら国際的な会社に就職出来るように勉強と就活を頑張った。そのおかげで希望の会社から早々に内定を貰うことが出来た。イギリスに支社をもつ大手企業だ。

 そして卒論だなんだと忙しくしているうちにあっという間に冬になり、今年もリリが遊びに来た。

 卒論で忙しかったので、リリや家族と過ごす時間がなかなか取れずにいる内にあっという間にリリが帰る日になってしまった。

 最後ぐらい見送らなきゃと思い、空港まで一緒に行った。


 今までリリがイギリスに帰る時は「またね」と言っていた。

 でも、今回は違う。

 僕は「またね」ではなく「さようなら」と言う。

 大学を卒業してイギリスでの仕事に慣れたら僕はある女の子に結婚を前提に交際を申し込むつもりだからだ。

 互いの親にはもう話してある。みんな快くOKを出してくれた。むしろ、ようやくか、と呆れた顔をされてしまった。

 いつもと違う別れの挨拶にリリが寂しそうな、不安そうな顔をしてこちらを見る。

 そんな不安を打ち消さんばかりに笑顔で「夏には僕が遊びに行くよ」と言うと、冬に向日葵が咲いたかのように飛びっきりの笑顔で「うん、待ってる」と返した。

 彼女も僕の告白を受けてくれると思う。きっと……。いや、ここで弱気になっちゃダメだ。こんなに喜んでくれてるんだから大丈夫。頑張れ、俺。

 スーツケースを引っ張る後ろ姿を名残惜しく見送った。

 この冬、僕らは従兄妹として会うのは最後である。


 だから、さようなら。

読んでいただきありがとうございます。

創作垢として作品投稿するだけのアカウントを作りましたことをここで紹介させていただきます。

IDは【@sousaku_dango】です。

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