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序章


 案外、予兆というのは至極穏やかなものだ。

 先に待つのがどんな事態であっても。



 ぼくが最初の最初、出だしの部分について思い出せることはあまり多くない。


 なにせ夜、それも夏の暑い時期の真夜中だったから、大きな音がしても雷か何かだろうな、くらいにしか思っていなかった。


 見てた深夜アニメがテレビの電源ごとぶっつりと切れても、エアコンが同時に止まっても、ああ雷が近くに落ちたのか、運が悪いなあ、程度にしか思わなかった。


 その夜はどうせ復旧まで時間が掛かると思って、ふてくされたまま寝てしまったはずだ。


 事態に気付いたのは次の日だ。


 登校のために仕方なく付けていたスマホのアラームよりも早く目覚めたぼくが雨戸を開ければ、外は昨夜の雷なんてなかったかのようで、雨が降った様子もなかった。

 しかし、晴れてもいなかった。


 それらの代わりに、輝く七色のカーテンが空いっぱいを埋め尽くしていた。


 オーロラなんて初めて見たな。


 それがまぬけな当時のぼくの、この事態への最初の感想だったように思う。

 夜中のことと何か関連があるとか、そんなことは一切考えていなかったはずだ。


 とりあえず綺麗だし写真でも撮っとこうか、ついでにツイッターにも上げてやろう、とのんきに思いつつスマホを手に取った。

 だけど、昨日から充電器に挿しっぱなしのはずのスマホは、電源すら付かなかった。


 いつもはアパートの前でガタゴトと煩いローカル路線の騒音もなく、隣の部屋の爆音のような目覚まし時計も鳴っておらず、ただひどく静かな朝だったというのははっきりと覚えている。


 だからぼくにとっての『出だし』はつまるところ、ただ窓の前でスマホを持って立っていたというだけだ。


 それから8年が経った。


 今もオーロラは空を覆い尽くしている。


 今も世界は壊れたまま、ぼくのスマホの電源が付くこともない。


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