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再掲 敗北のヒーロー

作者: ころね

「私ね、正義のヒーローが好き!」

子供たちは何時の時代も正義のヒーローに憧れるが、年を重ね大きくなるにつれて、いつしか憧れの心を忘れていく。しかし、まだ幼く小さかった少女は、画面の中のヒーローを追いかけ続けて、いつしかほかの子供たちには置いてけぼりにされていたのだった。



「……き、ゆき…由輝!!起きなさい!!」

「んっ………なに…母さん」

「何って…学校は?あんたいつまで行かないつもりなの!!!」

「……勝手に部屋に入ってこないでって言ったでしょ」

カーテンは閉め切られ、光はこぼれもしない6帖半の部屋。部屋で唯一青い光を発しているパソコンは、周りのカップラーメンやポテトチップスのゴミ、飲みかけのペットボトルを照らしている。部屋の壁には大きなアニメのポスターが2枚貼られ、もう時を刻まない時計が、パソコンの青い光を反射させる。

「母さんもう仕事に行くから、今日こそ学校に行きなさいよ?風由も起こしておいたから一緒に連れていきなさい!」

「………」

「…はぁ、もう」

連日のように部屋に引き篭る姉とその弟に苛立ちを隠せない母親は、由輝の部屋の扉を勢いよく音を立てて閉める。

いつからか由輝は、学校に通わなくなった。クラスの子たちには優しく接し、学校の外でも、困っている人たちを自分から助けているつもりだった。しかし、そのテンションとよくわからない言動のせいで、周りから少し浮いていた。彼女は「そういう空気」を読めず、友人ともすれ違ってばかりで、遂には誰からも話しかけられなくなった。でも、誰にも話しかけられなくたって、私は「孤高の正義のヒーロー」だもの。それぐらいでは不登校にはならなかった。


それから数日経ったころ、1個下の弟の風由(ふゆ)が不登校になった。由輝が心配して風由に話を聞きに部屋に行ったところ、声をかけてすぐに、由輝に怒鳴りつけた。

──「もう僕には関わらないでくれ」と。

風由は今の母親の連れ子で、ちょうど10年前に由輝と由輝の父親と家族になった。姉弟はとても仲が良くて、小さい頃は一緒に同じヒーローに憧れていたはずだった。由輝が「正義のヒーローになりたい」と言った時、唯一風由だけが肯定してくれて、いつも褒めてくれて、「姉ちゃんかっこいいね!」と言ってくれた目の前の弟は、由輝に目も合わせてくれなかった。

風由は、姉の由輝のせいで学校でいじめられたんだと言った。あんたみたいな変な姉がいなければ、僕だって普通の人間として接してもらえたのにと、焦点が合わない死んだ目で、姉に言い放った。由輝は弟の言葉に、心を深く抉られた。そしてこれまでにないくらい絶望した。──孤高で無敗、最強の正義のヒーローは、初めて敗北した。




雷が鳴り、叩きつけるように雨が降る真夜中、由輝は目が覚めた。夢を見ていたような気がしたが、それもすぐに忘れてしまった。

カーテンが一瞬、青白く光ったかと思うと、近くで雷が鳴った。起き上がってカーテンを少し開けてみると、大きな水たまりの上を、知っている色の傘が通っていった。

気が付いたら、雨合羽を着て家を飛び出していた。あの濃い青色の傘は、間違いなく風由だった。また空が一瞬光る。青色の傘を追いかけて、無我夢中で走っていった。

「風由!!風由!!!」

傘を差す少年はこちらの声に気がついたが、追いつかれないように走り出した。

「待って!!風由!!!」

随分と長い間引き篭っていた少年の体力はひどく衰えていて、すぐに由輝に追いつかれそうになる。

「もう僕に関わるなって言っただろ!!?もう引き止めないでくれ!!!」

大声で叫びながら走る風由に、由輝はまた胸のあたりがズキズキと痛んだ。

「風由、止まって…!!」

由輝が青色の傘に手を伸ばした瞬間、辺りは急に真っ白になった。




次に気がついたときには、岩だらけで空が赤い場所に、由輝一人だけだった。

「わ、私…あれ……」

後ろを見ても風由はいない。そして、再び前を向いた時、大きな足がふたつ、そこにあった。

「……我は地底の大魔神ザクレリンド。雷槌を司る者だ」

「いか、ずち……」

あの時辺りが真っ白になったのは、雷に打たれたのかもしれないと思った。でも、風由がいない。

「あの、ふゆは──」

そう言いかけた時、大魔神のものと思しき大きな右手が由輝の体を包み、持ち上げた。そして、大きな左手の人差し指で由輝のおでこを突いた。一瞬だけ、ザクレリンドの大きく険しい表情、真っ赤な瞳、そして金色の大きな翼が見えたが、指でおでこを突かれた瞬間、ビリリと痺れたかと思うと一瞬で全身の力が抜け、意識が遠のく。

「…また会おう、クローネ・メルヴライク」

そう聞こえたかと思うと、目が覚めて今度は白い天井が目に入る。隣のベッドには風由が眠っていた。窓からは、雨が上がって晴れ渡った青色の空が見える。

どうやらあの時、ふたりは雷に打たれたらしいが、何故か風由の傘だけが黒焦げになっていて、由輝と風由は無傷で水たまりの上で倒れていたという。風由は自ら命を絶つつもりで外に出たらしいが、もうこんなことはしないと、そして酷いことを言ってごめんと、泣きながら由輝の前で謝った。由輝は、そんな弟を強く抱きしめた。




あの夢は一体なんだったのかはわからなかった。風由もよくわからない夢を見たんだと言っていた。その夢の内容が同じものだったかはわからないが、「クローネ・メルヴライク」は地底の大魔神ザクレリンドから与えられた、新しい私の名前だと確信した。その日、新しい『金色の片翼の』正義のヒーローが誕生したのだった。

クローネ・メルヴライク

(本名:佐城由輝(サシロユキ))

身長:160cm 血液型:A型 誕生日:10/13

重篤な厨二病を患う高校二年生の17歳の少女。自身の名前をクローネ・メルヴライクと自称し、魔法少女時は『金色の片翼の魔法少女』と呼んでくれ!と周囲にいつも言っている。魔法少女(というより正義のヒーロー?)に憧れていた矢先、本当に魔法少女になってしまった!魔法属性は雷。(一部キャラクターシートから抜粋)

見た目は金髪のツインテール。雷に打たれた際に髪の毛が焦げてしまい、左側に結った髪の毛は少し短い。ザクレリンドと出会ってからは厨二病が悪化し、ザクレリンドをイメージした金色の髪飾りをつけるようになった。



最後まで読んでいただきありがとうございました

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