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四十二話


大阪湾の上空、益城ハルカはブロンズの生命体に道を塞がれ立ち止まった。他のアンノーンとは違い、容姿が人間に極端に酷似しており、さらには体長は三メートルを優に超えている。背中に生える二翼の羽は、まるで大天使を思わせるほどに荘厳であり、神々しさを遺憾なく発揮している。


彼女が遭遇するのは二度目である。渡本子が死んだあの日、彗星の如く現れて、数撃ほどりあった後に唐突に去って行っていたのだ。


「……………案外早いですね。ようやくアンノーンがいなくなったと思った矢先、現れましたか。やっぱり超高等アンノーンはあの二人と当たるんでしょうね。…………そして私の前にいるのはこの間のと同じ個体。流石綾本先輩ですね……。全てあなたの読み通りです。残りの一体とは第三部隊が衝突したみたいですし……」


ここにいない憧れの人物に、改めて尊敬の念を送る。正希の予測よみでは、大阪までの最後の砦として高等アンノーンが現れるであろうとのことだった。決め手は超高等アンノーンが正希へと言い残した『楽しみは後に取っておいた方がよい』という言葉である。


ここまでは正希の予想通りだ。なおかつ正希と千歳が全快で超高等アンノーンと当たるとなれば、戦力を最も効率よく分散できて、申し分はない。


実際に交戦した六席の感覚としても、戦力的にも綾本正希、西条院千歳、益城ハルカならば一人で、鍋城と橋代路は二人掛かりでならば高等アンノーンに太刀打ちできることは確かである。


問題は千歳と正希が当たるであろう超高等アンノーンの戦力が未知数だということだ。超高等アンノーンと最高戦力二人の戦いのみが、この作戦における唯一の賭けとなる。


『ほう……あの数を躱して来たのか。お主こそ早いではないか。もうしばらくはかかると思ったがな……』


機械音のようで、それでいて鼻につく音声が脳内に響き渡る。例えるならばテレパシー。高等以上のアンノーンが使用できる意思疎通のメソットである。


「ああっ………この感じ、やっぱり苦手です!!すいませんけど、死んでください!!」


可愛らしい童顔に似合わぬセリフを吐き、ハルカは高等アンノーンへと手をかざした。


瞬時にして、巨大な岩版がアンノーンを挟み込むように生成された。刹那、二枚の岩のプレートは、敵を押しつぶさんとばかりにアンノーンに迫っていく。


____________ドガガガァァァァン!!!!!


巨大な衝突音が鳴り響く。ハルカはそんな音など意に介さず、ただプレスされたアンノーンを見下ろしていた。


「______ッッ!!!」


明確な殺意を感じ、ハルカは反射的に首を右に動かした。その瞬間、僅か零コンマ数秒前までハルカの頭があった場所を、銅の槍が高速で通過していった。


____________ピキッ!!ピキピキピキッッ!!!


アンノーンをプレスした二枚の岩版に亀裂が入る。瞬く間に亀裂が岩版全域に達すると、ガラスが割れるかのごとく、岩板は脆くも崩壊、落下していった。


「____________なるほど。やはり、綾本先輩の超超超超超絶劣化版と戦うと思った方が良さそうですね。武器は銅ですか。それに、案外硬いんですね」


『お前の攻撃がヤワなだけだ。私の体に比べたら、岩なんぞボロいものだ。……まあ、効かないわけではないのだがな。………そうだな、あと二万撃か?それくらい打ち込めば私に勝つことができるぞ?』


____________プチリ、と何かが切れる音がした。


「_________んあ?調子に乗らないでくださいよ、アンノーン風情がぁ。人様に楯突くとどうなるか教えてあげますよ?」


ハルカの口調と表情が変貌する。本気の戦闘モードに入った印だ。


高等アンノーンが銅の時雨を、ハルカが分厚い岩板を生成する。


________雲ひとつない晴天の空で、銅の雨と岩板が激しく衝突した。


 ✳︎


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