三十五話
____________ドガーン!!バキャン!!ズキャン!!!!
防御結界を張り巡らされた東京ドームに爆音が鳴り響く。凄まじ衝撃波がドームに振動を与える。結界が無かったのなら、とうにドームは瓦礫の山と化しているところだ。
「綾本さん!!西条院さん!!もうちょい手を抜いてくださいよ〜!!あまりに強すぎて僕らのトレーニングにもなりませんって!!」
そう叫んだのは、特化班第一部隊の鈴原智だ。他の隊員も右に同じとばかりに頷いた。
「何言ってるんですか!!七十八対ニですよ!?あなた達こそ本気を出してくださいよ!!特化班の名が廃りますよ!?」
「そう言われましてもですね…………」
困ったように呟くと、鈴原達は再び千歳と正希に向かって攻撃を仕掛けていった。
現在、特化班第一部隊の彼らは、トレーニングという名の身内同士での戦闘を行なっていた。三日に一回、今後の総力戦に備えてトレーニングを行う。これは先日六席会議で決定したものだ。トレーニングといっても、各々に基礎力を磨くだけでは不十分なため、正希の提案により、こうして実践形式で行われていた。
六席の二人対特化班第一部隊。特化班の隊員達に出された指令は「六席の二人を倒せ」という、いたって単純なものだった。初めは「さすがにパワーバランスがおかしいですよ。僕らにアドバンテージがありすぎですよ」と余裕の表情であった隊員達であったが、いざ対戦を始めると、二人に軽くあしらわれてしまっていた。
いくら大人数で遠距離攻撃を仕掛けても、正希が作る金の壁によっていともたやすく塞がれてしまい、逆に千歳から炎の銃弾を食らってしまう。
また接近戦に持ち込もうとしても、体術スキルが高い二人の相手にはならず、逆に素手の正希と武器を鈍器に使う千歳に反撃を食らってしまう始末だ。
「パワーバランスがおかしい」。そのセリフは、あながち間違いでは無いようだ。
「分かりました。なら、隊員の皆さんにアドバンテージを与えましょう。………西条さん、君もそっちに加わっていいよ」
「はあ!?正希、さすがにそれは無理なんじゃ……」
「んー。まあそうだろうけど、その代わり、僕は本気で行くよ?」
「…………ふふ、了解!!痛くしたらごめんね!」
「本気で行く」そう言った正希の表情の変化をみて、千歳はニンマリと笑った。本気の彼と対戦するのは、実に久しぶりなことだ。単純に、戦う事への純粋な喜びが沸き上がる。
「それじゃ、行くわよ!!みんなは基本的に遠距離攻撃を仕掛けてちょうだい!!私の間合いに入らなければ、直接攻撃もオッケーよ!!」
ワクワクとした表情でそう言うと、千歳はチャージを開始した。
「あんたの間合いどれだけ広いと思ってるんですか……」
そんな溜息にも似た言葉が聞こえたが、千歳は構わずに正希へと突っ込んで行った。
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