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十三話

____________東京湾から十数キロの海上の結界が、二十数万のアンノーンの一斉攻撃により破られたとの報告が入ったのは、それから数分後のことだった。さらに十数分としないうちに、東京湾上空に大量の人型ブロンズ像のような地球外生命体が出現した。


最新鋭の武器を使用して全力で防衛にあたった陸海空自衛隊であったが、数分間アンノーンの動きを止めはしたものの、進撃を止めることはできなかった。


アンノーンが地上へ上陸した後、民間人の犠牲者が出るかと思われたその刹那、爆速で現れ、金の無数の矢時雨を降らせた少年と、業火を放つ少女によって、無数のアンノーンが撃ち落とされていった。


__________長野県上空。


突如現れた巨大な大量のプレートが、アンノーン達を次々に挟み込んでいく。プレスされたアンノーン達は、数秒と持たずに体をぐったりとさせ、地上に落下していった。地球外生命体のアンノーンは、『圧力』に滅法弱い。しかし、弱いと言っても人並み以上の対抗力はあり、他の科学的・物理的現象に比べて耐性が著しく低いと言うだけである。


そんなアンノーン達を次々と葬った岩版の生成主は、他でもない、特化班第三席の正希ハルカである。

アンノーンが落とされるたびに、「すげぇ」や「ヤベェ」と、結界守護兵達が驚愕する。


「いちいち反応しないでください!!戦闘中です!!」


兵士たちを一括したつもりではあるものの、元来引っ込み思案な彼女の声は小さく、兵士たちには届かない。そんな地上の兵士たちに、岩版から難を逃れたアンノーン達が襲いかかる。


兵士たちが武器を構えるも、アンノーンの方が僅かに早い。


が______ ________攻撃が炸裂する直前に、炎の矢がアンノーンの体に炸裂した。勢いよく飛ばされた生命体は、弱点である炎にもがき、五秒足らずで絶命した。


兵士達は命の危機から脱したことに酷く安堵し、ため息をつく。しかし、それもつかの間、右上空から怒号が飛ぶ。


「ほら!!!気を抜かない!!!正くん達が首都防衛に向かって戦力がガッポリ空いたのよ!?そんな余裕は無いのよ!?」


上官の激怒の表情に、反射的に兵士は頭を下げた。


「「す、すいません!!」」

「頭下げてる暇があるなら敵を見なさい!!」


そう咆哮した渡本子は、夥しい数の炎矢を生成して、アンノーンの群れへと放っていった。


____________新潟県上空。


雲一つない上空にも関わらず、暴風が吹き荒れる。風といえど、巨大な空気の塊である。速度が増せば、そのぶん威力も上昇する。『空気』による衝撃をもろに受けたアンノーンは、次々に吹き飛ばされながらに絶命していった。


しかし、そんな暴風に耐えたアンノーンの数は、決して少ないとは言い難い。むしろ、暴風に耐えたアンノーンの方が多数派である。風の発生源を断つべく、アンノーン達は前進する。しかし、続いて放たれた細く鋭利な風が、暴風に耐え抜いたアンノーンの体を真っ二つに割いていく。しかし、それでもなお、耐え抜くアンノーンは存在する。


「やっぱり、中等レベルになると硬いかな。暴風じゃあ殺しきれないか。俺もまだまだだなぁ……」


大量のアンノーンを葬りながらも、自らを力不足と嘆く青年は、風の発生源でもある第四席の鍋城だ。嘆息しながらも、右手にて空気の粒子をコントロールすることは忘れない。本を持つ左手は不動のままだ。


「……………仕方ない。あんまり破りたくは無かったけど、やるしかないか………」


鍋城は、左手の本を宙に放り投げた。刹那、本がパッと開いて、全てのページが鋭利な風によって引き剥がされた。さらに次の瞬間、引き剥がされたページの一つ一つが紙手裏剣へと形を変え、アンノーンの群れ一直線に飛んでいった。


紙手裏剣はアンノーンの体を次々と貫いていく。どうにかそれを止めようと、アンノーンは束になり、肉厚の壁を作る。否、ブロンズの重壁とでもいうべきか。


「さすがにあれは………」


思わず鍋城も苦笑い。何体も何体も貫いていくうちに、紙手裏剣は徐々に回転を落としていく。


「あはは………流石にアレはどうしたものかね……」

腰に手を置き、考える。


「__________こうすれば良いんですよ!!!」

「__________ん?」


後ろからの大声に、鍋城は軽く振り返った。声の主は第五席の橋代路だ。彼がそう発した刹那、紙手裏剣の回転数が急激に上がっていった。橋代路の主属性も風である。つまりは、もう一度風を起こして威力を高めるというのが橋代路の考えだ。彼の考え通り、威力を増した手裏剣は、アンノーンの壁すらも突き破っていった。


「あー、それ一番ダメな。お前バカなの?一個一個、戻ってくるように軌道を考えてるに決まってんじゃん。あーあ、ほら、向こうに飛んでいっちゃったよ。どうすんのさ」

「む。盲点でした。でもまあ、敵数は向こうとこっちで五十万だから、先輩の武器がなくても対応はできるでしょう?」


確かに彼の言う通りである。六席のうちの四人と特化班の全隊、さらに結界守護部隊まで加わって仕舞えば、五十万の敵に対して多少オーバーキルとも言える。橋代路も自信ありげに確信した表情を見せる。しかし、鍋城は腕でバッテンを作ると、


「だーかーらー、そういう慢心が命取りなんだって、五席くん!」


呆れたような笑みを見せ、アンノーンの群れの中に飛び込んでいった。


「そこまでいうなら、俺よりも討伐数は多いんでしょうね!!!」


一方、挑発された形の橋代路も、鍋城に続くようにアンノーンの群れへと突入していった。


✳︎

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