ぴょこぴょこと。―雪乃
「………………そ、その、雪乃…………」
「………………気にしちゃダメよ。」
「で、でもさぁ………………」
「…………ほら、気にしない気にしない」
とは言ったものの………………私も視線が気になる。
「や、やっぱり解こうよこれぇ…………。」
「だ、ダメよ………………」
前を歩く度に、望乃夏のツインテールがぴょこぴょこと揺れる。それは、私の頭も同じことで。
(………………ぐぅ…………面白がって望乃夏のを結ったのはいいけど、その後にお揃いにするんじゃなかった…………。)
私は今になって、朝のことを後悔し始めた。………………やっぱり勢いに任せるのはダメね。
「ゆ、雪乃ぉ…………なんかカメラ向けられてる気が…………」
「………………に、逃げるわよ、望乃夏っ」
私は猛ダッシュして、後ろから望乃夏もついてくる。その間にも視線の海をくぐり抜け、やっとのことで昇降口までたどり着いた。
ふぅ………………朝から疲れちゃったわ。
「ゆ、ゆきっ、まっ、」
一方、望乃夏の方は今にも死にそうな息をしていた。
「…………鍛え方が足らないわ。」
「ゆ、雪乃が、特別な、だけだって。」
「………………もう、…………ほら、手貸すわよ。」
と、望乃夏を立ち上がらせると昇降口で一旦別れて靴を履き替える。
(………………あら?)
仕舞うために靴を目線の高さまで上げると、履いた時には気が付かなかった靴の傷みやほつれが目につく。
(…………秋前からずっと使ってたし、そろそろ寿命かしら。)
「雪乃ー、まだ?」
「あ、今行くわっ。」
下駄箱を閉めると、望乃夏の元に駆けだす。
「雪乃、何してたの?」
「ああ、ちょっと靴が傷んできてるのを見つけて。」
「………………ふぅん。足も大きくなったのかな?」
「履いててそんな感じは無いわ。………………はぁ、また買いに行かないと。」
その時、私の頭にいい考えが浮かぶ。
「………………ねぇ望乃夏。土曜日、空いてるかしら?」
「ん?ボクは万年暇だけど。」
「…………それは正直どうなのかしら?」
少し呆れたように言うと、
「………………その、またお買い物しようと思うんだけど………………一緒に、来る?」
「行く。」
即答だった。さ、さすが望乃夏 …………。
「そう………………なら、どこ行くかはまた後で決めましょ。…………今は早く風が来ない教室に行きたいわ。」
「そ、そうだね…………」
望乃夏が手を擦り合わせて暖をとる。その表情は緩んでて。
「…………もう、しっかりして。」
後ろから頭を叩きたくなった。
メモ:今日は12/3 水曜日ですん