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雪乃と北風&太陽。―雪乃

「………………ふぅ………………」

短いようで長い『夜』が終わって、どれぐらい経ったのか。時計を覗くために身体を起こすと、掛け布団が落ちて一糸まとわぬ素肌にひんやりとした室温が襲いかかる。…………針は、午前二時前。

…………とりあえず、服着ましょ。雑に脱ぎ捨てた服がベッドの下に散らばってて、うっかりすると望乃夏のと間違えそう。………………えと、これと、これ。後はこれと………………。

精一杯腕を伸ばそうと身体を動かすと、全身にかけて鈍い痛みが走る。………………それが、さっきまでの『コト』は夢じゃなくて現実だったって思い知らせる。

………………私、ほんとに望乃夏としちゃったんだ………………。

服を着る手を止めて、自分のお腹に手を当てる。………………私も、望乃夏も、同じ女の子だから、………………『愛の結晶』なんて望めないけど、……………………それでも、私達の証が欲しいってのは、贅沢なのかな………………。

「……………………ののかぁ?」

隣に横たわる望乃夏に、そっと布団をかけ直す。………………痛み止めの副作用は望乃夏にも出てるみたいで、規則正しい寝息が聞こえてくる。

(………………全く、自分勝手なんだから。)

………………いきなり私に全身を晒した時は驚いたけど、その後の申し出にためらうこと無く食いついた私。………………知識はもちろん、経験なんてあるわけない。それなのに、望乃夏は「好きにして」って………………。夢にまでみた、望乃夏の身体。なのに………………私は、そういうこと、何も出来なくて………………ただ、望乃夏の身体に触れるのが精一杯だった。………………その後は、待ちくたびれた望乃夏に思いっきり抱きしめられて………………色んなとこで、望乃夏の身体と『キス』した。その後は望乃夏の肩をマッサージしてあげたり、お返しに望乃夏のヘタクソなマッサージをされて悶絶しかかったり………………要するに、望乃夏を『好きにする』ことはできなかった。……………………しかも、『キス』が終わってマッサージを提案した時、望乃夏に「………………雪乃のヘタレ」ってボソリと呟かれたし。

………………は、初めてだし…………いきなりだから、仕方ないでしょ…………。と、いうか………………それを言うなら、望乃夏だって………………。

そんな堂々巡りのもやもやは、私のクシャミに遮られた。


一通り服を着て、もう一度私の布団へと潜り込む。………………すっかり、身体が冷めちゃった。

暖をとろうと望乃夏に近づくと…………さっきのことを思い出しちゃって、手が止まる。

………………望乃夏の素肌……………そうっと手を伸ばすと、望乃夏がピクリと動いて私は思わず手を引く。………………ね、寝てても肋骨のあたりはくすぐったいのね…………。

今度は気をつけてそろそろと手を伸ばすと、望乃夏の柔らかな膨らみに触れる。……………………私のとおんなじなのに、私は望乃夏の「ここ」がすごくいとおしい。抱っこされて、頭の後ろに望乃夏の柔らかさを感じるだけでどんなにイライラしてても落ち着いてくし………………。

………………ほんとに、望乃夏って不思議ね。凍りついた私の心にスルリと忍び込んで、内側から溶かしていくんだもん。………………そういえば、北風と太陽って童話があったわね。北風は力でコートを吹き飛ばそうとしたけどうまくいかなかったけど、太陽はただ暖かくするだけで自然と旅人に自分からコートを脱がせたってやつ。

………………私も、出口の見えない道を歩き続けてた旅人だったのね。それを見つけたのが、望乃夏っていう名前の太陽。…………………心も、何もかも鍵をかけてしまい込んでた私のことをこじ開けようとした人は何人もいたけど、望乃夏は私が自分から鍵を開けて迎え入れた唯一の人。

(………………望乃夏…………。)

そっと、身体を寄せる。………………あったかい。私が、溶けていく。

いつの間にか、冴えていた目の瞼が重たくなって…………そのまま、望乃夏に顔を埋めて寝てしまった。

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