焼きうどん再び。
「………………の、望乃夏…………貼るわよ…………」
「お、お願い………………」
そうっと、肩紐がズラされる。直後に来たのは、ひんやりとしか感覚。
「ひゃん!?」
「の、望乃夏、変な声出さないでっ!?」
「だ、だって…………」
「………………はい、貼り終わったわよ。」
「あ、ありがと………………」
雪乃に手伝ってもらって、そそくさと服を着る。
「…………なんか冷たくて気持ちいいかも。」
「でしょ?だから私も身体が熱持ってる時に貼るのよ。」
「ふーん………………。」
肩を前後に動かしてみる………………うん、これぐらいなら大丈夫か。
「………………さ、早く作ってもらうわよ? 」
と、雪乃が私の腕を持って待ち構える。
「………………はいはい。」
「………………へぇ、こうやって作るのね。」
トントンと野菜を刻む私を、後ろから雪乃が眺める。………………それはいいんだけど………………
「…………雪乃、近いって。」
「あら、この方が良く見えるもの。」
………………だからって真横にくっついて見てられると………………な、なんか、恥ずかしい………………。
「………………はい、後は豆腐と野菜を焼いて、ダシとうどんを煮込むだけ。」
「…………あら、簡単なのね。」
「…………ほんとはここでお酒入れるみたいなんだけど、なんでだろね?しかも私達まだ未成年だしさぁ。」
その言葉に雪乃がぎょっとする。
「………………望乃夏、本気で言ってる?」
「ん?………………もしかして、雪乃はもう20歳とか?」
「そ、そんなわけないでしょっ!!……………………はぁ、望乃夏は時々常識がすっぽ抜けてるって思ったけど………………まさか料理酒を知らないなんて…………」
雪乃が頭を抱える。
「………………なんか、マズいことしちゃった?」
「………………いいわ、もう………………」
………………そんなこんなで、夕食はなんとか確保することかできた。
「…………ふう。おいしかったわ。」
「気に入ってもらえて何より。………………あ、雪乃。動かないで。」
そっと、口の端についた汚れを拭ってあげる。
「あら、ありがと………………。さて、今日は遅いし、もう寝ましょ。」
「そだね………………。」
食器を片して、私は貰ってきた痛み止めを飲む………………うぇっ、まずっ。
「………………電気消すわよ。」
雪乃がスイッチを押すと、部屋の中の光は月明かりだけになる。
自分のベッドでそっと待つと、雪乃は私のベッドの前で少し迷う。
「………………雪乃、やっぱりまだ怖い?」
「………………ごめんなさい、やっぱり…………まだ………………」
「………………そ、そう………………なら、雪乃は雪乃のベッドでいいよ。」
「………………ごめん、なさい。…………そして、ありがと………………。」
私に背を向けて布団に潜り込む雪乃。………………私の付けた傷は、そんなに重かったんだ………………。
思わず、身体が動いてた。ベッドから起き上がって、雪乃の留めてくれたボタンを一つづつ外す。
「ゆ、雪乃………………」
「どうしたの望乃夏………………って、ええっ!?」
振り向いた雪乃が驚きの声を上げる。
「………………今日は…………雪乃の好きにして、いいから。」
真っ赤になった顔は、月明かりがうまいこと隠してくれる。けど、差し込む光が一糸まとわぬ私を照らす。
「の、のの、か………………」
雪乃がそっと手を伸ばして私に触れると、くすぐったくて思わず声が出る。
「んっ………………/////」
雪乃が、ゴクリと唾を飲む。
「の、望乃夏………………ほ、ほんとに、いいの?」
「………………私ができる雪乃への償いなんて、こんなのしかないから…………/////」
雪乃の布団にそっと入り込むと、雪乃もまた私を引き寄せる。そして、雪乃に身を任せた。
……………………この後、私達の『夜』は大失敗に終わった。