衝撃。―雪乃
「…………さ、日も傾いてきたしそろそろ帰りましょっか。」
「う、うん………………」
…………さっきから、望乃夏の様子がおかしい。私の返答にもどこか上の空だし……………………
「………………望乃夏、もしかして痛みが強くなった?」
「え、どうして?」
「…………だって、望乃夏がさっきから上の空だから………………。」
「………………ああ、うん………………痛みは、変わんないよ。」
「なら、どうして………………」
「………………雪乃はさ、このまま実業団に入るか、大学にバレー推薦使って行くんだよね?」
「え、ええ、まぁ………………一応、そのつもりよ。だけど、それがどうかした?」
「…………そう…………。」
………………やっぱり、望乃夏がなんかおかしい。
「………………望乃夏。悩んでる事があるなら、話しなさいよ。………………それとも、私にも言えないような悩みなの?」
私は、望乃夏の顔色を伺いながら訊く。
「………………まぁ、大したことじゃないんだけどね。………………とりあえず、部屋に帰ったら話すよ。」
「………………ほんとね?」
「………………うん、約束。」
その言葉を信じて、望乃夏と共に桜花寮の自分の部屋へと戻った。
部屋の電気を着けると、望乃夏がクローゼットの前に座る。
「さぁ望乃夏、約束だから、話してもらうわよ。」
「まぁ待ってよ雪乃。………………まず二人共、制服着替えないと。」
望乃夏はそそくさと部屋着を取り出して、自分のベッドに腰掛ける。
「………………それも、そうね。」
私も自分のクローゼットの前に立って、ジャージを取りだす。制服をきちんとハンガーにかけてジャージに袖を通すと、望乃夏の方を振り返る。
「さ、話し、て………………って、望乃夏…………」
「ゆ、雪乃、たすけて…………」
下だけ取り替えたはいいけど、上が脱げずに苦戦してる望乃夏が見える。
「………………しょうがないわねぇ。ほら、手伝ったげるわ。」
望乃夏の制服を持って、右腕を引き抜く手助けをする。ジャケットとベストを重ねてハンガーにかけると、後は望乃夏に上着を着せるだけ。
「………………ほら望乃夏、バンザイして。」
「………………な、なんか恥ずかしい…………」
「何を今更………………」
呆れたように言うけど、それでも望乃夏はバンザイして上着のパーカーを待つ。えーと、こうやって折り重ねて…………腕を通してっと。
なんとか望乃夏に服を着せると、私は望乃夏と向き合うようにベッドに座る。
「………………さて、と。じゃあ、話してもらえるかしら?」
「………………どうしても?」
「…………無理にとは、言わないけど………………。」
「…………どんな話でも、怒らないし自分を責めないって約束できる?」
「…………それは内容次第だけど………………まぁ、いいわ。約束する。」
「そう………………なら、話すね。実は…………………………ボクは、大学に行こうかなって思ってるんだ。」
「…………何よ、いい事じゃない。」
「………………だけどね、そうなったら………………今の夢――天寿に入って、研究員になるっていう夢を捨てなきゃならないし、…………まぁ、それはいいんだけど……………………もしかしたら、………………雪乃と、会えなくなるかもしれない。」
「な、何よ………………それ…………」
その言葉は、私に突き刺さった。