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ココア。―雪乃

「………………で、2人でこの寒い中おしるこ飲んでおにぎり食べてたら、風で扉が閉まって閉じ込められた、と。そういうわけだな?」

「は、はい………………。」

現在、私たちは保健室で毛布に包まれて用務員さんから事情聴取を受けていた。

「………………もう、ゆ…………倉田先生ったら。そんな風に聞いたんじゃ怖がられますよ。」

カラカラと保健室の扉が空いて、メガネをかけた肉付きのいい人が入ってくる。

「え、江川…………お前までそんなことを言うのか…………。」

と、用務員さんがしょぼんとする。…………あれ、この人どこかで見覚えが………………

「せ、生徒会長!?」

横に座る望乃夏が驚いて飛び上がる。………………ああ、思い出したわ。私たちの一つ上の先輩ね。

「ふふっ、そんなに驚かなくてもいいのよ。………………はい、どうぞ。」

生徒会長は、私達にココアの缶を差し出す。

「あ、ありがとうございます。」

温かいココアの缶で手のひらを温めると、指先の感覚が少しずつ戻っていく。隣では望乃夏が、早速フタを開けて美味しそうにココアを飲んでる。

「………………それにしても、屋上の扉にも遂にガタが来たか………………」

「…………これを期に提案してみようかと思います。」

と、用務員さんと生徒会長が何かヒソヒソ話をする。

「………………あの、何の話ですか?」

すっかり回復した様子の望乃夏が、身を乗り出して聞く。

「ん、ああ………………実はな、冬季の間だけでも屋上を閉鎖する案が教員の間で出ていてな………………」

「その………………屋上で、…………い、如何いかがわしいことをしてる人がいるみたいで………………。そ、そんなえっちなのは生徒会長として見過ごせないし………………だから、あなた達の一件を期に、屋上を今年度末まで閉鎖する案を生徒会で話し合おうと思って。」

「そ、そうなんですか…………。」

望乃夏が、ちょっとだけ引いた様子で困惑する。………………そりゃそうよね。学校の屋上で………………なことをしてる人がいるなんて、普通なら考えられないし。

「………………ま、それはそれとして。お前らは今日のところは保健室でじっくりと温まってから真っ直ぐ寮に帰るようにな。………………教科担当には、私から連絡しとく。」

と、用務員さんと生徒会長が立ち上がる。

「………………あ、悪いがそこの問診票に名前と学籍書き込んでそこの机に置いといてくれ。」

「それじゃ、お大事にね。」

と、2人は部屋を出ていって、保健室は私と望乃夏の2人だけになる。

部屋は、ストーブのヤカンが時おり立てる音の他には物音一つしなかった。

「………………ねぇ望乃夏。」

静寂に耐えきれなくなって、私から望乃夏に話しかける。

「ん、何?」

「その………………ごめんなさい。私が屋上に呼び出したばっかりに、望乃夏にまでこんな目に遭わせちゃって。」

「………………別にボクは、雪乃のこと恨んでないよ?………………むしろ、辛かったけど、雪乃と一緒にいれたから、いいかなって。」

「………………望乃夏…………。」

………………その顔は、どこか無理して笑顔を作ってるみたいで。…………それが逆に、私を不安にする。

「………………望乃夏、ちょっとごめん………………」

ん?と振り向く望乃夏の肩を、チョン、とつつく。その途端、望乃夏が押し殺した悲鳴を上げる。

「…………やっぱり肩痛めてるじゃないっ………………なんでさっき言わなかったのよ………………」

「だ、だって………………言ったら雪乃が自分のことを責めると思って…………。」

「………………バカじゃないの…………少しは、自分のことを考えなさいよっ………………。」


………………望乃夏ってほんと、バカなんだからっ………………。

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