夜、そして。―望乃夏
┌(┌'ω')┐<こゆい
……………………そうは言ったものの、私もなかなか寝付けない。
…………はぁ、なんでだろ………………。その答えは、もう出てるのに。認めるのを嫌がる私がいる。
「んっ………………」
寝返りを打とうとすると、絡みつく雪乃の足がそれを遮る。…………わぁ、ボク完全なる抱き枕だぁ。………………え、マジで?
私の足に絡みついた雪乃の足は、寝てるはずなのにがっしりと力がこもってて………………は、外れない…………。
……………………も、もしかして、雪乃が起きるまで、ずっとこのまま…………?
嬉しいけど、なんか怖い………………。私の中の『ティーポット』が、たぽん、と揺れる。
(………………なるべく雪乃のことは考えないようにしよ………………。)
そう考えて、また雪乃に背を向けて寝るけど………………雪乃がもぞもぞと動いて、今度は私の肩に腕を絡める。………………え!?
そうなるとどうなるか………………意識なんてしなくても、直に雪乃が全身から伝わってくる。
首筋にかかる寝息が、私をくすぐる。背中越しに伝わる雪乃の鼓動が、私をかき乱す。背中に感じる、もにゅっとした柔らかさは、私を火照らせる。鼻をくすぐる雪乃の香りが、私の考えを奪う。そして…………全身から感じる雪乃の熱は、私のブレーカーを飛ばしていく。
………………ごめん、もう限界。ありったけの力で、雪乃の拘束の中で寝返りを打って雪乃と向き合う。そして、その無防備なオデコにそっと口付ける。…………次は、こっち。少しカサカサした雪乃の唇に、そっと口付ける。………………まだ足りないや。
雪乃の首筋に腕を絡めて、そっと身体を寄せる。雪乃のパジャマのボタンを外して下着もめくると、白い肌と小さな起伏が顕わになって、…………私も、ボタンを外して下着もずり上げる。そのまま雪乃とくっつくと、私の胸と雪乃の胸が互いに押し付けあって形を変える。伝わる鼓動は、背中越しよりもはっきりとしてて………………また、私をかき乱す。
荒くなった吐息を整える術なんて持ち合わせてなくて………………もっと深く雪乃を求めて、次の場所を探す。
突然、雪乃が唸って身じろぐ。あっ………………と思った時にはもう遅くて。
「………………望乃夏、なに、してるの………………?」
状況が分かってないとろんとした目が、私を見つめる。
「い、いや、………………トイレ行こうとして起きたら、雪乃に雁字搦めにされててさ………………ハハ…………」
慌てて誤魔化すと、雪乃の目もだんだんと据わってきて。
「………………わたしも、いく。」
と、足を解いて立ち上がる。
……………………ふぅ、なんとか、『一線』は超えずに済んだ………………。
安堵する気持ちと、中途半端に終わったことを悔やむ気持ちとが私の中でぶつかり合う。
「………………どうしたの?寒いんだから早く行くわよ?」
「あ、うん。今行くっ。」
いつもの定位置の個室に入る雪乃を見届けて、私は何個か離れた個室に入る。後ろ手に鍵を閉めると、すぐに雪乃が静かな空間を切り裂いていく。………………こんなのにもドキドキする私って、ほんとにどうかしてる。ヒンヤリとした空気が私の火照りを冷ましていくけど、中から湧き出す私の熱ですぐにまた暖められていく。
「………………望乃夏、まだ?」
コンコンと扉がノックされる。
「………………うん、もう少し、待ってて。」
私も手早く用を足して、個室を出る。
「………………さ、戻りましょ。」
「………………うん。」
部屋に戻る私の足取りは重かった。
結局、この後も私のベッドで二人で寝たけれど………………一度冴えた目は、また眠気に襲われることは無かった。
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