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リノリウム。―望乃夏

理科室に戻って時計を見ると、もう少しで17時になるとこ。

「…………もう少し、ここにいよっか。」

「………………そうね。」

雪乃が、私に寄り添いながら答える。

「…………雪乃、もうちょっとくっついていい?」

寒さに身を震わせながら横を向くと、

「…………こ、これ以上はそっちに寄れないから…………」

と、めいっぱいくっついてくる雪乃。………………でも、まだ寒いや。

「…………もうちょっと、近寄れないかなぁ………………できれば、ぴったりくっつくぐらい………………。」

ボソリと呟いたその言葉を、雪乃は聞き逃さなかった。

「の、望乃夏………………。か、体ごと…………こっち、向いて………………。」

「なぁに雪乃…………」

言われた通り身体ごと雪乃の方に向くと、雪乃は腕を私の首に回して、そのまま私を抱き寄せる。

「え、ちょっと………………」

「………………望乃夏、足、もうちょっと開いて………………」

と、座ったまま私に身体を近づけてくる雪乃。………………そして、上半身が雪乃とぴったりくっつく。

「ほら、こうすればもっとあったかいから………………。」

「そ、そうだね…………/////」

耳元で聞こえる雪乃の声にドキドキしながら、私も恐る恐る雪乃の肩に手を回す。

「…………うん、あったかい………………/////…………でも雪乃…………あったかすぎるよ…………まだ熱あるんじゃないの…………?」

「そ、それは………………望乃夏と、こんなことしてるから………………ドキドキしてるのよ………………そ、それを言うなら望乃夏だって………………。」

「…………うん、ドキドキしてる。」

ベストやカーディガンを通しても、隠しきれない二人のドキドキ。…………頭に血が上って、顔がポカポカしてくる。

「………………望乃夏…………、もっと、あったかくなろ?」

「雪乃………………。」

近づいてくる雪乃の顔を、目をつぶって受け入れる。小さな音が、静かな教室に響いて消える。そして、私の『中』に雪乃が入ってくる。

(雪乃、大好き…………)

そろっと攻め込んでくる雪乃を、静かに受けいれる。さっきに比べて、響く水音は少しえっちで。………………私の足に力が入らなくなって、雪乃を支えられなくなる。

雪乃の全体重が私にのしかかって来て、私はゆっくりとリノリウムの床に押し倒される。雪乃は途中で手をついて踏みとどまるけど、目を開ければほんとの目と鼻の先に雪乃の顔がある。

お互いに見つめあって数秒、雪乃が飛び退くように私から降りる。

「ご、ごめんっ望乃夏っ…………。」

私は荒い息を整えられなくて、そのままリノリウムに横たわったまま。ああ、火照りすぎて、床の冷たさが、気持ちいい。

「の、望乃夏…………早く起きて制服整えてよ…………。そのままだと、………………………え、えっちだから………………。」

雪乃がたちまちそっぽを向く。半身を起こして見ると、いつの間にかワイシャツのボタンが一つ外れて素肌が覗いてるし、雪乃の位置からはスカートの中もバッチリ見えてて………………。慌てて、元の女の子座りに戻って制服を整える。

「………………」

「………………」

お互いに何も言えないまま、静かな教室を17時の鐘の音が切り裂いた。

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