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望乃夏と白衣。―雪乃

「………………まだ?」

「ゆ、雪乃…………まだ食べるの?」

「まだ食べるのって………………これ、口に入れるとすぐホロって溶けちゃうからそんなに食べた気がしないわ。」

と、私はカルメ焼きとかいうお菓子の最後の一ピースを口に放り込む。

「………………はい、出来たよ。」

と、お皿に載せられたカルメ焼きに手を伸ばすと、お皿が引っ込められる。

「…………返して。」

「…………返すも何も、これボクが焼いたやつ。それにまだボク食べてない。それに雪乃食べ過ぎ。」

と、返してもらえない。

「それなら、自分の分焼けばいいじゃない。」

「焼く度に平らげて、しかも次のを要求してくるのはどこの誰かな?」

私は目線をそらす。あら、夕焼けが綺麗ね。

「………………それに。」

望乃夏が、私のお腹をつまむ。

「きゃっ!?」

「…………お腹、もっとむにっとするけどいいの?」

「そ、それはやだ…………。」

「………………だったら今日はもうダメ。それに糖分取りすぎだから今すぐお茶か水飲んで。腎臓とか胃がやられるし糖尿になるよ?」

「わ、わかった………………」

望乃夏の怖い顔に気圧されて、私は素直に指示を聞く。………………けど。

「………………望乃夏、自販機どこ…………。」

「んー…………ここからだと寮が近いのかな。後は食堂と体育館………………それなら、もう帰っちゃおっか。」

「やだ。」

ギュッと、望乃夏の袖口を握る。

「………………まだ、ここにいたい。」

「………………どうしたのさ、雪乃。」

「………………今日の練習メニューだと、もうすぐランニングなの。寮に戻るには外出なきゃいけないし、体育館だと尚更……………………顔、合わせたくない…………。」

望乃夏の袖を、一層強く握る。

「なるほど、そういうことね。」

と、望乃夏が自分のスクールバッグを持ってくる。

「………………はい、無糖紅茶。…………まだ封切ってないから、飲んでいいよ。」

「………………ありがと。」

早速封を切って、んく、んくと半分ぐらい飲み干す。

「………………雪乃、練習って何時ぐらいに終わるの?」

「………………そうね、今日だと…………5時半には解散になるわ。ランニングは5時に終わり。」

「なら、5時から5時半の間に急いで抜ければ………………」

「………………一か八かだけど、やるしかないわね。」

望乃夏の腕時計を見ると、今は丁度4時半。あと30分ちょっと、ね………………。

それにしても………………この部屋、寒いわね。私は、小さなクシャミをする。

「………………ごめん、一人だから暖房付けてないんだ…………。寒い?」

「…………そ、そうね。でも大丈夫だから。」

その言葉が終わらないうちに、私の肩に何かが掛けられる。

「………………有っても無くてもそんな変わんないけど………………。」

途端に、私は望乃夏の香りに包まれる。

「望乃夏…………これ…………」

「………………ちょっと汚いけど、ごめんね。」

望乃夏は、私と同じブレザーを着てる。けど、私に白衣を着せた分だけ、どこか寒そうで………………。申し訳なくなる。………………望乃夏の香り…………。

すると、隣からも小さなクシャミの音がする。

「………………やっぱり寒い…………。雪乃、………………ちょっと、出てくる。」

「………………わ、私も…………一緒に行く…………。」

2人でこっそりと理科室を抜け出すと、廊下はもっと寒々としてて。

「うっ………………雪乃、ダッシュで行くよ。」

「元からそのつもりよ…………。」

少しでも暖まろうと、自然と手を繋ぐ。そして、私達は『花園』へと走り出した。

望乃夏メモ:

望:カルメ焼きはタイミングが命だよ………………失敗するとただの焦がし砂糖になるからね…………。

雪:望乃夏ー、まだ焼けないのー?

望:(雪乃の健康が心配だ…………)

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