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屋上と散歩。―雪乃

望乃夏と別れて教室に入ると、みんなの視線が私に突き刺さる。………………何よ、言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに。

自分の席に座ると、待ち構えていたかのように近寄ってくる人影。

「………………何の用かしら、城谷さん…………。」

「いや………………昨日、うちの莉亞がいきなり押しかけて迷惑かけたみたいで………………済まなかったわね。」

と、頭を下げられる。

「………………別にいいわよ、そんなの。それに要件は私の同居人に対してだったし。」

………………そのお陰でいい情報も得られたし。

「あのタヌキのことだからきっと何かご迷惑かけてるんじゃないかと心配で………………。」

「………………なかなか過保護なのね。」

「まぁ、かわいい同居人ですから。」

それだけ言うと、城谷さんは自分の席へと戻っていく。

………………ふぅん、あの城谷さんがねぇ………………。

ま、それは置いといて………………。当面の問題は、部活のこと。あれだけの啖呵を切った以上チームメイトとは顔を合わせづらいし、かと言ってバレーも嫌いになれない。………………あの二人がうまい具合に取り繕って表面的には迎え入れてくれるかもしれない。けど…………その薄皮を剥げば、みんなのエゴと嫌悪感がところ狭しと詰め込まれてる。

………………そんなのを見るために、私はバレーを始めたわけじゃないのに。


…………時間はあっという間に過ぎて、お昼休み。みんなは銘々お弁当を広げるなり食堂に繰り出すなり、思い思いの形でお昼を取りに行く。私もいつもなら食堂に向かうのだけど。………………いろんな人と顔を合わせる食堂は、今の私にはきつくて。………………買い置きのおにぎりを持って、屋上のテラスに向かう。

屋上の扉を開けると、途端に寒風が吹き付けてきて…………やっぱり辞めとけばよかったと後悔する。けど、今更戻るのも面倒で。そのまま、誰もいないテラスのはじっこに座っておにぎりをかじる。………………最初は梅おにぎり、ね。酸味があっておいしい。次のは………………ツナマヨね。こってりしてて変な脂肪が付きそうだからあんまり食べたくは無いのだけど………………どうしてこう、カロリーのあるものって美味しいのかしら。

三個目のおにぎりに手を伸ばした時、急に屋上の扉が開く。

「ん、何だ、いたのか。」

「…………用務員さん。」

庭でよく見かける、青いツナギの用務員さんがゴミ袋片手に歩いてくる。

「………………他には誰もいないのか。」

「………………ええ、私だけだと思います。」

「………………そうか。」

と、それだけ聴いてさっさとテラスの掃除を始める用務員さん。

「………………寒いから、早く中入れよ。………………何が良くてこの寒空にみんな集まるんだか…………」

と、忠告も貰う。

「………………私以外にもこの寒い中、ここ来る人いるんですか?」

用務員さんは不思議な顔をして、

「………………目の前にいるだろ。それにな、……………………何考えてんだか、たまにティッシュや生理用品が落ちてることもあってな………………。」

………………学校のテラスでナニしてんのよみんな…………。

「………………見つけたら私でいいから報告してくれ。最近の流行りになるんじゃないかって智…………生徒会長が心配してたからな。」

「………………わ、わかりました…………。」

………………なんだか、食欲無くなってきた…………。残りのおにぎりをまとめて、早々と屋上を後にする。


授業があっという間に感じられて、もう放課後。いつもなら終わると同時に部室に駆け込むんだけど………………今日は、そんな気がしない。

………………そうね、その辺でもぶらついてましょ。と、ふらふらと歩いていると、いつの間にか見たことのない所に出ていた。

ここ、どこ………………?周りをキョロキョロ見渡すけど、全く記憶にない。仕方なくそのままテクテクと進むと、聞き覚えのある表札(?)が目に入る。

「理科室………………」

確か………………

(授業終わったら、私はだいたい理科室に篭ってるから。)

って、結構前に望乃夏が言ってた気がする。思い切って扉の窓から覗くと、見覚えのある背中。………………よし。

カラカラと、扉を開ける。

「………………望乃夏、いる?」

振り向いた顔は、やっぱり望乃夏で。

「ゆ、雪乃!?」

望乃夏が驚いた声をあげるのと、その手に持った試験管が爆発して白煙を上げるのはほぼ同時だった………………。

※10/8修正改変:教室名を変更しました。

旧:化学実験室

化学実験室は星花には存在しませんでした…………

新:理科室

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