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本音。―望乃夏

私のお風呂はいつも短い。元々長風呂は好きじゃないし、それに……………地味ーに、心にダメージを受けるから。主にとある部位の優劣で。………………いいもん、そのうち成長するもん。

そんなことを密かに悩みつつ、お風呂から上がって部屋に向かい、扉に鍵を差し込む。…………あれ、開いてる…………?おかしいな、どっちかが部屋を出る時は鍵をかける約束なのに。

そっと扉を開けると、部屋に白峰さんはいなくて…………代わりに給湯室から物音がする。新しいレモンティーでも作ってるのかな?私も飲も。

そう思って給湯室に入ると、予想だにしないものを見てしまった。

「…………何、してるの?」

恐る恐る聞くと、白峰さんは背中を震わせながら振り返る。

「…………それ、私のティーカップ…………しかも、それ私のアールグレイ…………。」

…………最近減りが早いと思ったら、こういう事だったのね。言ってくれれば、いくらでもとは言わないけどあげるのに。それはそれとして………………なんで私のティーカップを使ってるの?

すると突然、白峰さんが泣き崩れた。………………え、どうして、待って。ますます訳が分からなくなって、私は混乱する。そんな私をよそに、白峰さんは泣きじゃくりながら話す。

「ごめん、なさい………………私、会話も続かないし…………どうしたら墨森さんと仲良くなれるのかなって…………それで、同じものを飲めば、あなたと同じ世界が見れるって思って…………。でも………………墨森さんのカップを使っても…………全然美味しくないし、なかよくなれそうにないし………………。」

私の頭が、一気にホワイトアウトする。待って、今何て…………。私と、仲良く、なりたい?私と、同じ世界が、見たい…………?

それは、私の願いそのもの。そして、それは白峰さんの願いでもあった…………?

………………うれしい。私は思わず、泣きじゃくる白峰さんを抱きしめる。

「ありがと…………本音を、話してくれて。」

「墨森、さん………………」

白峰さんだけに、本音を言わせるのは不公平だ。だから私も、本音ほんとうのわたしを見せないと。

私は、一呼吸置いてから、

「私も、あなたともっと話したい。仲良くなりたい。ずっとそう思ってた。けど………………わた…………いや、『ボク』は臆病だから。今までずっと、言い出せなかったんだ。」

私――いや、『ボク』は、初めて白峰さんに本音を伝えた。

驚いたのはその告白にか、それとも人前では初めて使ったこの特別な一人称のせいか。それは分からないけど、不意に顔を上げた白峰さんと目線が合う。その顔が、どこかかわいいって思って。そっと、頭を撫でた。

と同時に、やっと言えた開放感から私も足の力が抜ける。そうなると、自然と白峰さんが私に預けた体重がそのまま降り掛かってくるわけで…………白峰さんが、私に覆い被さる形となった。と同時に、作りっぱなしだったアールグレイもひっくり返って…………私は白峰さんの涙とその他もろもろ、白峰さんはアールグレイで服が大変なことになった。

あちゃー、これは………………

「…………私は構わないけど、白峰さんは制服だから乾かさないと…………。それに髪にもかかっちゃってるし………………乾かす間、一緒に、お風呂入ろっか。」

白峰さんは、小さくうなづいた。

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