寝汗。―雪乃
「……………………」
「……………………」
部屋まで望乃夏の肩を借りて戻ったけど、相変わらず私達の間に会話はない。いや、できない………………恥ずかしすぎてっ。
望乃夏に、見られた………………目と鼻の先でっ………………。消えられるのなら、今すぐに消えたくなるぐらい、恥ずかしい…………。
「あ、あの…………雪乃…………。」
急に望乃夏が話しかけてくる。
「な、何よ………………」
「……………………その、み、見てない、から………………そんなには…………」
「最後の一言要らないわよっ!!」
ああ、やっぱり見られたんだ…………。
「………………で、どこまで見たの?」
「どこまでって………………」
い、言わせる気なの…………!?
「………………雪乃のショーツの色を、バッチリ…………」
「………………へ?」
そ、それだけ………………?
「………………他には?」
「そ、それだけだけど…………。」
………………はぁ、気にしすぎて損したわ。
「………………私は、望乃夏のショーツの色と………………その奥の叢まで…………」
………………ほんとはもっと奥の、『花弁』まで見ちゃったんだけど…………
「そ、そのぐらいなら、まぁ、いい、かな。」
望乃夏は気づかなかったみたいで、私の小さな嘘を受け止める。
「そ、そうだ………………雪乃、熱どう?」
「…………そうね、あんまり変わった気がしないわ。」
「どれどれ………………」
と、望乃夏がおでこを近づけてきて…………思わず目を瞑る。もちろん、待っていたものが来るはずもなく。
「うーん、わかんないや…………。」
「…………でしょうね。そこの引き出しに体温計があるから持ってきて。」
無駄にドキドキしたから熱上がってるだろうし。
望乃夏が引き出しから持ってきた体温計を受け取ると、パジャマの合わせ目から脇に差し込む。寝汗で滑ってぬるりとして、なんか気持ち悪い………。
「雪乃、音鳴ったら見せて。」
と、望乃夏がバッグ片手に給湯室に入る。…………また新しい茶葉でも見つけてきたのかしら、今はとても飲めそうにないんだけど…………。
望乃夏が戻ってくるのと、体温計が鳴るのはほぼ同時だった。
「39℃か………………けっこう高いね。」
「道理で動きづらいはずだわ…………。」
はぁ、今日はもう寝てるしかないわね。諦めてベッドに横になろうとすると、途中で望乃夏に抱きとめられる。
「…………何よ。」
「いや、少しでも熱下がるように冷えピタ貼ろうかなって。」
「…………どこに?」
「できるだけ大動脈の近くがいいから、四肢の付け根だね。」
え、それって………………
「………………具体的には?」
「脇の下と内股…………に…………あっ。」
望乃夏も気づいたみたいで、気まずい空気が流れる。
「………………雪乃、自分で貼れる?」
必死で首を縦に振る…………けど、望乃夏は、
「………………いや、いい機会だから………………雪乃、全部脱がせるよっ。」
「い、いきなり何を言い出すのよっ!?」
思わず跳ね起きて、身体の痛みに襲われる。
「………………いや、さ。雪乃寝汗すごいから、着替えないと気持ち悪いだろうなぁって。………………その、良ければ身体も拭かせて。」
さっき給湯室に行ったのはこのためだったのね…………。でも、そうなるとっ………………
寝汗の気持ち悪さと、望乃夏に見られる羞恥心。しばし迷った挙句に、私は着心地を取った。
「お願い、できるかしら。」