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望乃夏の闇―雪乃。

┌(┌'ω')┐<前半は重めです

「…………てな感じで、お金を工面しました。」

長々とした望乃夏の説明を聞いてるうちに、何だか申し訳なくなる。

「………………その、望乃夏…………ごめん。私のために、頭まで下げさせちゃって…………。」

項垂うなだれる私に、望乃夏は笑って答える。

「いいっていいって。こんなポンコツの頭でも下げればどうにかなるって分かったし。…………まぁ、親父がいなかった分楽だったけどね。」

一転して望乃夏が厳しい表情になった。

「………………その、失礼だけど………………親御さんと、仲、悪いの…………?」

途端に望乃夏が黙り込む。わかってはいたけど、それでも聞かなくちゃいけないって思った。………………私にも関わることだし。

「…………そこを攻められると弱いなぁ…………。できればあんまり話したくないことなんだけどね。…………雪乃の、『体育倉庫』と同じで。」

「………………分かった、なら聞かないことにするわ。」

と、布団に横になると望乃夏に引き止められる。

「いやいや、そこは聞く所でしょ。…………雪乃だって過去をバラしたのにさ、ボクだけ黙ってるのってなんか不公平じゃん?…………だから…………話させて。」

望乃夏は、顔こそ笑ってるけど目はいつになく真剣で。思わず、ゴクリと喉を鳴らす。

「…………このお茶、少し貰うね?」

と、ティーカップに少しお茶をとって一気飲みする望乃夏。それでも足りなかったみたいで、また1杯。それを何度か繰り返して、7杯目あたりで一気飲みを止める。

「ふぅ………………さて、どこから話そうかな。まずはボクの家について。雪乃に言ったかどうかは覚えてないけど、ボク一人っ子なんだよね。だからそこそこ期待もされてたし、大切にしてもらった。だけどね、ボクは望んだ通りには育たなかったんだよ。………………この名前に、そむいたんだ。両親――特に親父の方はね、ボクの趣味や夢にも大反対なの。変な趣味を捨てて早いとこ戻って来い、婿は用意しておく…………だってさ。あくまで人形扱いなんだよねぇあのクソ親父。」

サラリと毒をまき散らす望乃夏。その口調はいつもに増して強めで、思わず私も後ずさりする。

「実験器具は中学にコッソリ隠してたけど、夏休みはロッカーの中身を空にする決まりなもんで。その度に隠し場所に苦労したよ。………………見つかったら何をされるか分かったもんじゃないし。ほんとに家出しかけたことあるよ。………………でもね、母さんは寛容だから。ボクの紅茶趣味も母さんから受け継いだものだし。星花行きも母さんが提案してくれたんだ。………………表向きは教養を付けることにしとくけど、3年間のモラトリアムを私の母校で過ごしてみなさい、って。」

「………………へぇ、望乃夏のお母さんはOGなのね。」

「………………まぁ、ね。それこそ天寿が絡む前の、ほんとにアレな時のらしいけど…………。」

………………『アレ』が何なのかは聞かないでおきましょ。

「………………母さんもね、星花で恋人を作ったって言ってた。だけど法の壁ってのは厚くて、世間もそれは気の迷いとしか見てくれなかった。………………『私達は、星花の中でしか咲けなかった悲しき黒百合だ』って泣いたんだって。卒業してすぐ、親父とくっつけられて…………結果私が造られたってわけ。」

「………………何よ、それ…………。」

私の抱える闇なんて、望乃夏と家族に比べたら……………………。

「………………母さんはね、入学する前に私に宿題を出したの。一つは、幸せに過ごすこと。そして、後悔のない夢を持つこと。………………そして………………卒業までに、こ、恋人を作って、…………幸せになること、って。」

私の胸が、とくんと跳ねる。………………待って、と言うことは…………。

「………………ねぇ望乃夏。一つ聞いてもいい?」

「な、何?」

「…………恋人ができなかったら、連れ戻されたり無理やり結婚させられたりするの?」

「…………前者はともかく後者はあるかもね、卒業まではしないと思うけど。」

「…………………………そう。なら聞くけど………………私を選んだのって、保身の為、とかじゃ無いでしょうね?」

「………………いきなり何を言い出すの?」

望乃夏が、怒気を言葉に混ぜ込む。

「その………………わかってる、わかってるん、だけど………………本当に私なんかで、望乃夏を幸せにできるのか、不安になっちゃって………………」

途端に、望乃夏が目に見えてもじもじする。

「その………………こっちだって果たして雪乃の相手がボクなんかでいいのかなって思うこともあるよ?こんな寸胴まな板のお鍋モドキが雪乃に釣り合うのかなっていつも思ってるし…………。」

「………………バカね、外見なんてどうだっていいじゃない。私は…………望乃夏の中身が好きなんだからっ。」

それは、さっきの迷いに対する私なりの答えで。そして、望乃夏の迷いもそれが答えのようで。

「……………………好きって、難しいね。」

「…………そうね。」

気恥ずかしさを紛らわすかのように、2人で溶けたアイスを飲み干した。

┌(┌'ω')┐<終わりが打ち切りに近い

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