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布団と雪乃。―雪乃。

うう、眠れない………………。

私は、後ろで眠る望乃夏が気になって眠れずにいた。望乃夏の寝息が私の首筋を撫でて、その度にくすぐったくて小さな悲鳴を上げそうになる。いや、何回か上げた。…………向こう向いて寝てって言ったのに……………。

このベッドは一人用。だから二人で寝ることなんて想定外、だから…………簡単に言えば、狭い。なので、自然と望乃夏と私がくっついて寝ることになる。………………今の私は、望乃夏に抱っこされて寝てるみたいな形。それが逆に、私を恥ずかしさで殺しかける。

……………私の方がお姉さん、なのに。

もう少しすれば、私は望乃夏と同い年じゃなくなる。だけど、話し方も、立ち振る舞いも、望乃夏の方が上。

………………そうよね、夜は誰かに付いてきてもらわないと用も足せないし、こんなんじゃ望乃夏に妹扱いされるのも当然よね。

体勢を変えようと身じろぎすると、背中に柔らかいものを感じる。…………何故だろう、私にもあるのに……………お風呂で、何回も見たのに………………なんでドキドキするの。

肩甲骨を通して、望乃夏の鼓動が私に伝わる。とくん、とくん、とくん、とくん………………。そのリズムは、私をなぜか落ち着かせる。………………怖い夜を、望乃夏が護ってくれる。寒く、ない。暗いけど、1人じゃない。望乃夏の、匂いがする。怖く、ない。私のちっちゃなティーポットにはお湯がどんどん注がれるけど、『棄てる』時には望乃夏がそばに居てくれる。もう、溢れさせたりしない。もう、昔の私じゃない。

………………ダメね。もう私は、望乃夏なしだと生きられない。

………………そうね。望乃夏の鼓動を子守唄にするのもいいけど。なにかしてもらったら『お礼』をするのがマナーよね。

望乃夏の腕から逃れて、寝返りを打つ。狭いベットだから、それだけで数センチ先に望乃夏の顔がある。…………まずは深呼吸。入ってくる望乃夏の香りで益々火照りそうになる頭を、無理に室温で冷ます。…………よし。

慎重に、望乃夏の方に身体を寄せる。そして、望乃夏の肩に手をかけて、私の頭を引き寄せる。

「ありがと、望乃夏。」

静かな部屋に、小さな水音が一つ響いた。


……………………どうしよう、益々眠れなくなっちゃった。

望乃夏と『最接近』した後、私はすぐに寝返りを打って証拠隠滅(?)したけど。今さっき知ったばっかりの感覚を、頭が処理できなくて。唇が、もっともっとと微かに疼く。

身体中が、熱い。風邪を引いた時より、全国大会の最終予選の時よりも、もっと、桁違いに熱い。

布団を抜け出しても火照りは治まらなくて。思わず、パジャマの上を脱ぎ捨てる。けど、クーラーの止まった真冬の室温でも、私を冷ますには温すぎるように思えて。明日飲もうと思って買っておいたスポドリをテーブルから掴み取って、1lペットボトルの封を切って、一気飲みする。………………お腹がタポタポになったけど、それでも得られたのは気持ち悪さだけで、火照りは冷めてくれない。もう下も脱いじゃおう、とおへその下に手をかけると、そこで初めて、私が全身汗だくだって気がついた。

………………ドキドキ、しすぎたのかしら。部屋に干しておいたバスタオルで全身を拭って、少し迷った後ブラを外してショーツごとパジャマも脱ぐ。そのままクローゼットまで歩いて、換えの下着と服を出して身につけた。振り返ると、望乃夏が私のベッドで待っている。だけど、もうあのベッドには戻れない。かと言って、望乃夏の方のベッドを使うのも…………。どちらにしても、望乃夏に包まれて寝るのには変わりない。

…………もう少し、身体が冷めてから考えましょ。

ついでにクローゼットからコートを取り出して羽織ると、そのままテーブルにつく。耳に入るのは、時計の規則正しい音だけ。その音は望乃夏の鼓動よりも無機質だけど、私を眠りに誘うには十分だった。

ダメ、寝るならお布団、で……………。

二つの寝息が、微かに部屋に響いた。それはお互いの眠りを邪魔することなく、部屋の冷たい空気に吸い込まれるように溶けていった。

お疲れ様です。さて、2人はこのまま無事朝を迎えられるのか?

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