表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/152

おんなじモノ。―雪乃

シリアス入ります。

「私には、クラスメートなんて、いないよ?」

望乃夏の口から吐き出されたその言葉に、私は耳を疑う。

「………………それ、クラスに友達がいないってことでいい?」

「何言ってるの………………ボクのクラスメートは、ボクしかいないよ?…………ああ、5組のみんなは『ただ同じ部屋にいるだけ』だから。」

「それをクラスメートって言うんじゃないの…………。」

少し呆れたように言うけど、その態度が望乃夏に火をつけた。

「………………雪乃は普通科だから分かんないよね、5・6組のことなんて。いや、6組はまだましか、デザイナーになりたい人の集まりみたいなもんだし。…………5組は、普通科ではちょっと手に余って、かつ服飾にも興味ない人間の集まりだから。」

そのセリフは、暗に望乃夏自身を示していて。返す言葉を、喉につまらせる。

「………………理数科がないから、近似値をとって商業科を選んだ。普通科よりも、やや理系っぽかったから。でも違った。………………このクラスは、理系よりも文系だった。だから理化学系のクラスがあるとしたら、それはボク一人。それにボクは『特殊』だし。」

その言葉に、私は引っかかるものを覚えて、

「…………ねぇ、さっきから自分を『特殊』だって言ってるけど………………どういう、ことなの…………?」

「……………………数学が大嫌いなのに理数系で、数字の羅列を見ると目眩するような商業科生って見たことある?ごはん食べてる時よりも試験管を振ってる時の方が楽しい女の子って見たことある?…………………………ルームメイトと初めて逢った時から、この娘と一緒になってみたいって、考えるような子って、見たこと………………ある?」

望乃夏のレンズに、雫が落ちる。そして、私はその場から動けずにいた。……………………初めて逢ったその日から、私達の時間は動き始めてたってことなの…………?

………………なんだか馬鹿みたいね。…………昨日まで、意地を張り合ってたの。

そっと歩み寄って、望乃夏の頭を抱く。…………いつもと、逆、ね。

「…………ゆき、の…………。」

「………………まぁ確かに、こんな変わった娘は見たことないわね。数学嫌いなのに理系な娘も、化粧を生まれてからしたことのない娘も、自分のことをボクって言う娘も………………だけど、初めて逢ったルームメイトと、ずっと一緒になりたいって想う娘なら…………見たことある………………って言うか、ここに居るわよ。」

そっと、私の胸を叩く。

「………………不思議ね。初めてあなたのことを見た時、かわいいって思ったの…………。それまで、他の人に興味なんて無かった私が、よ?」

「か、かわいい…………?」

「………………自分で気がついてないだけで、あなたもなかなか美形の部類なのよ?…………それに、」

私は、パジャマのボタンを2つ外して、スポブラをさらけ出す。

「………………手を、出して。」

私の行動に固まっていた望乃夏の手を、私の小さな胸へと当てる。そして空いた手で、望乃夏のパジャマのボタンも外して望乃夏の胸に私の手を当てる。

「…………私も望乃夏も、リズムは違うけど、この中には同じ心臓があって、その中には同じ血が流れてる。………………私は望乃夏になれないし、望乃夏も私にはなれないけど………………同じ、女の子なんだよ。」

「雪乃………………。」

「……………………そ、それが分かったら早く離れてちょうだい…………。み、見せるの、…………恥ずかしいんだからっ。」

慌てて望乃夏が離れて、それから自分の胸を見て真っ赤になる。お互い、後ろを向いて服を整える。

「………………あの、雪乃………………ありがと。」

「………………気にしないで。………………同居人が暗いと、私まで暗くなっちゃいそうだから…………。」

ホンネはしまったまま、望乃夏にはサラッと嘘をつく。………………だって、まだ全部見せるのは恥ずかしいし。

「………………ああ、そう言えば。望乃夏、安栗さんって知ってる?」

「あぐり………………誰それ。」

「…………1-5の安栗文化あぐりふみかさん。私と同じバレー部よ。」

「……………………ああ思い出した。最初の自己紹介の時に実家が農家だから農林技術の研究したいって言ってた人だ。」

「………………なんで名前は忘れててそんな細かいことは覚えてるのよ…………。今日ね、練習の合間に望乃夏について聞いてみたの。そしたら、話しかけて見たいけどどこか近寄り難いって言ってたわ………………。数学の時間退屈だからよくよそ見してるけど、たまに目線が合うからって。」

「へぇ…………ボクの他にもそんな人いたんだ…………。」

「……………………私が話しておいたから、今度話しかけて見れば?あの子もなかなか変わってるから…………」

と、少しだけ遠い目をする。

「………………わかった。がんばる。」

「………………友達、出来るといいわね。」

そう励ます私だけど。

(………………望乃夏は私のこと、友達として見てくれてないのかしら…………。)

と、少し複雑な気持ちになった。

新たな揉め事の種が………………

新キャラ(モブ)として安栗文化あぐりふみかさんと言うキャラを出しました。でも彼女、モブから正規キャラになりそうな予感………………

察しの良い方はお気づきかも知れませんが、彼女の元ネタは「agriculture(英語:農業)」です………………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ