禁忌の告白。―望乃夏
シリアス注意です。
…………雪乃はいいなぁ。お話できる、クラスメートがいて。
身体を拭きながら、雪乃のことをチラ見する。………………はぁ。
筋肉がそこかしこに付いてるだけで、身体は私とほとんど同じ。性格はけっこう違うけど…………やっぱり、雪乃みたいな性格じゃないとだめなのかな。
「………………何してるの望乃夏、早く行くわよ。」
「う、うん………………」
手早く服を身につけて、脱衣ロッカーを閉めた。
部屋の灯りを付けると、私はそのままベッドに倒れ込む。
「あら、疲れてるの?」
「………………あー、うん。…………雪乃が淹れてくれるなら、アールグレイ飲みたい…………。」
「自分で淹れなさい、っていつもなら言うけど…………しょうがないわね、待ってなさい。」
と、給湯室へと消えていく雪乃。…………もうこのまま、寝ちゃおうかなぁ。
その思いは、雪乃がティーカップを持ってくる音ですぐに消される。
「はい、持ってきたわよ。」
「ん、ありがと。」
身を起こして、テーブルまで這っていく。…………どんな時でも、アールグレイはベルガモットの味がする。だけど私は、変わりまくり…………。なんか、悲しいなぁ……。
「…………それで?望乃夏は一体何を悩んでるの?」
思わずアールグレイを吹き出す。…………よかった、雪乃にはかかってない。
「ちょ、いきなり何なの!?」
「雪乃…………どうして悩んでるってわかったの!?」
「…………はぁ。あなたは一々わかりやすいのよ…………。それで?悩みは?」
何でもお見通しかぁ………………。
「…………ボクの悩みは………………………雪乃になれないこと、だよ。」
「私に成れないこと?どういう意味よ?」
「………………雪乃は、ボクにないものをたくさん持ってる。いや、ボクがなんも持ってないだけなのかもしれないけど………………。運動神経とか、コミュ力とか……………………クラスメートと、友達、とか。」
「…………だから、あれはたまたまだって…………」
「………………みーんな、ボクは持ってない。なんで雪乃だけ、そんなに持ってるの?」
………………自分でも、何が言いたいのか、そして何を言ってるのか、わからない。
「………………同じ部活の娘も、そんなに話すわけじゃないし。栗橋ちゃんも、見てて楽しいけど、友達なのかって言われたら…………同類、みたいな感じ。………………ねぇ、友達って、何なの、かな。」
取り留めのない言葉が、次々にこぼれる。
「………………友達って言うのは…………」
雪乃は、その次の言葉が継げずにいる。
「く、クラスメートとはどうなのよ。ほら、同じクラスだし、中にはちよっとでも仲いい娘とか…………」
「クラスメート?…………なにそれ。」
私は、禁断のセリフを口にする。
「…………私には、クラスメート、いないよ?」
その言葉の真意は…………?