クラスメート。―雪乃
いきなりお風呂に飛び込んできた小動物――いや、どうやら人のようだ――に、私は顔を顰める。何よこの娘。
それだけでも失礼なのに…………なんと、望乃夏の知り合いのようで。
「望乃…………『墨森さん』。この無礼な娘と知り合いなの…………?」
危うく名前で呼びかけて、一応人前だったことに気がついて改める。望乃夏は、私のことを引きつった顔で見ている。そんな私達を知ってか知らずか、無礼娘が口を開く。
「およ?この娘は墨森ちゃんのお友達?」
「うん。………………おんなじ部屋の、白峰 雪乃さん。1-3、だったかな。」
ほえー、ルームメイトかー。と、どこか納得した表情の小動物娘。
「…………で、『墨森さん』。この娘はどなた?」
「あ、うん…………隣のクラス、1-4の栗橋さん。………………有名だから、多分、ゆ…………『白峰』さんも、名前は知らなくても噂は聞いてるんじゃない?」
「……………………ああ、なるほど。」
詳しくは知らないけど、隣のクラスに変わった娘がいるってのは聞いたことがある。…………なるほど、これが噂の「4組の不思議ちゃん」ね。
「3組…………あっ、郷奈ちゃんと聖ちゃんのクラスだっ!!」
「郷奈と聖………………ああ、城谷さんと砂塚さんね。」
クラスメイトの名前を出されて、少しだけど警戒が緩む。…………どっちも同じクラスってだけで、そこまで親しくはないけど。それでも私が知ってる人の名前が出ると安心する。
「へー、知ってるんだー。郷奈ちゃんは私のルームメイトでー、聖ちゃんはねー………………うーんと、友達?」
なんでそこで疑問符なのよ…………。とりあえず、二人には同情する。特に城谷さんの方に。
「でもねー、友達って言うよりはー、好きってやつー?」
思わずコケそうになる。………………そう言えば砂塚さん、最近変な子に追いかけ回されてるって噂になってたわね………………。へぇ、あの砂塚さんに、ねぇ………………。
「んー、雪乃ちゃんか。よし覚えたっ。」
「…………気安く下の名前で呼ばないで。」
やっぱり無礼な娘ね。
「あっ、早く上がらないと郷奈ちゃんに怒られるっ、じゃあねー、墨森ちゃん&ゆきのちゃーん。」
と、それだけ言うとスタコラサッサとお風呂から上がって出ていった。
…………何だったのかしら、今の。
「………………やっと、静かになったね。」
望乃夏が、ぐったりとした様子でお風呂の壁にもたれかかる。
「…………あの子とルームメイトだっていうクラスメイトに心底同情するわ…………。」
「………………雪乃って、クラスメイトと仲いいの?」
「…………そんなでもないわ。基本的に一人だし、バレー部仲間ぐらいしか一緒にお昼食べるような知り合いもいないわ。中等部の時からの友人ってのもいないし。」
「…………でも、下の名前聞いただけでどの人か分かるし、上の名前もすぐに出てきたじゃん。」
「たまたまよ………………何よ望乃夏。」
望乃夏が、どこか不機嫌な様子を見せる。
「…………ボクね、クラスメイトと話したことそんなにないんだ。ほんとに事務連絡ぐらい。………………そもそも、ボクは『特殊』だからね。」
望乃夏が自嘲する。その様子に、心が締め付けられるようで。
「…………もう上がりましょ。私も逆上せてきたわ。」
強引に話を逸らして、望乃夏の手を取った。
申し訳ありません、時系列を錯誤しておりました。そのためキーマンと言うほどではなくなってしまいました…………芝井さん申し訳ありません。