洗いっこ。―雪乃
「じゃ、じゃあ…………行くわよ。」
シャワーを片手に、望乃夏の後ろに立つ。
「う、うん…………お願い。」
そう答える望乃夏の声も、どこかぎこちなくて………………
「そ、そんなに身構えなくてもいいのに…………。」
「だ、だって…………雪乃に洗ってもらうなんて…………は、恥ずかしいよ……」
「う、うるさいわね…………私が洗ってもらってばっかりで悪いから、私も望乃夏のこと洗ってあげるって言ってるの…………だから…………大人しくそのまま洗われなさい!」
「雪乃目がマジだよっ!?」
じ、自分でも何言ってるのか分かんなくなってきたわ…………
「と、とにかく始めるわよ…………。」
タオルにボディーソープを取って、望乃夏の肩から背中にかけて撫で下ろす。
「ひょえっ!?」
「へ、変な声立てないでっ。」
「く、くすぐった、ひっ、」
私が背中から腋にタオルを移すと、望乃夏の嬌き声は更に多くなって………………思わず、空いた方の手で望乃夏の口を抑える。
(…………もう、変な声出さないでよ………………)
お腹のあたりが、少しだけ熱くなる。思わずタオルの手を止めて、望乃夏にもたれかかる。
「ゆ、雪乃…………?」
「………………ごめん、なさい…………ちょっと、休憩……させて…………。私、変な気分になりそう………………。」
火照った身体を望乃夏に預けると、私の鼓動が望乃夏を求めて息が乱れる。そんな私に気がついたのか、望乃夏がこちらを向いて私のことを抱き寄せる。そして、私のささやかな胸が望乃夏の胸と「キス」する。乱れ打つ鼓動が、望乃夏のゆっくりとした鼓動につられて次第にゆるやかになっていく。
「………………落ち着いた?」
耳元で囁かれると、一瞬鼓動が乱れかけるけど、
「ええ………………なんとか。だから…………離してちょうだい。」
ゆっくりと、回された腕が外れる。
「………………ありがと。」
「…………さ、早く続きを頼めるかな?今は暖かかったけど…………さすがにもうお風呂入りたいかな…………。」
「ええ、わかったわ。……………………今思ったけど、望乃夏より私の方が大きいみたいね。………………ほんの少し、だけど。」
「………………一応、身長のことだと思っておくよ…………。」
あ、凹んだ。
シャワーのお湯を望乃夏の頭に注ぐ と、泡が流れ落ちて望乃夏の髪に艶が出る。すかさずトリートメントを髪に刷り込むと、ボサッとしてた望乃夏の髪が纏まってくる。
「………………もうちょっと毛先に気を使った方がいいわね。」
「え、傷んでる?」
「枝毛ができてるわ。………………ホント、そういうことに関しては無頓着ね。」
「…………まぁ、恋とか今日初めて知った訳だし。」
「…………ふーん。」
毛先を指に巻き付けて弄ぶ。
(…………私より髪の質は良さそうね。)
「…………今度から、髪はお互いに洗いっこしよっか。」
「…………私は、構わないわ。」
望乃夏から出された提案を、私は即座に受け入れる。
「さ、洗い流すわよ。」
お湯が、私達の疲れも汚れも洗い流していく。
また、楽しみが一つ増えたわね。