雪乃の黒髪。―望乃夏
タオルとシャンプーを片手にお風呂場をすたすた歩いていく。
「あ、ここ2人分空いてるよ。」
と、イスを寄せて2人で座る。
「…………別に、横並びにしなくてもいいのに。」
「隣同士の方が色々といいじゃん。それに、」
昨日できた、私の楽しみ。
「…………遠いと、頭洗ってあげられないよ?」
雪乃の耳元でそう囁くと、ビクリと身体を震わせて、上目遣いに眺めてくる。
「…………あ、あれは腕が使えなかったからで………………」
「そっか…………じゃあ今日は自分で洗えるよね?」
少し悪戯っぽく聞くと、雪乃は少し迷った後、私に身体を委ねてくる。
「…………そうね、一人だと全体をしっかり洗えないから…………お願いできるかしら。…………………………きょ、今日だけ、よ。」
「ほんとに今日だけでいいの?」
「う、うるさい………………さ、さっさと始めなさいよ。」
「はいはい、分かりましたよ。………………お嬢様。」
少し茶化すと、雪乃はそっぽ向いてむくれる。
「何よお嬢様って………………」
「いや、雪乃ってなんかプライド高そうな話し方するし、注文も多いしね。まるでお嬢様みたい。…………そしてボクはその執事みたいな?」
「………………何よそれ。」
顔は相変わらず向こう向いたままだけど、その言葉にトゲはない。
「…………じゃあ執事、最近毛先が纏まらないの。…………丁寧に洗ってリンスして貰えるかしら?」
雪乃も意外とノリがいいなぁ…………
「承知しました、お嬢様。」
シャンプーを根元から丁寧に揉みこんで泡立てていく。爪は立てないように優しく柔らかく………………。
「あら、丁寧ね。」
「はーい、流しますよっと。」
シャワーで丁寧に泡を洗い落とすと、次はリンスタイム。手にたっぷりとコンディショナーを取って、髪に馴染ませていく。濡れそぼって黒く艶やかな雪乃の黒髪が、コンディショナーを得て更に光り輝く。
はぁ…………すてき。
「…………もう流してもいいかしら?」
「ダメ、もう少し眺めさせて。」
「…………私は人形じゃないんだけど。」
お嬢様のダメだしを食らったので洗い落とすことになった。シャワーを被ると、より雪乃の黒が濃くなって、艶が出る。
「…………身体の方はどうする?」
「…………それぐらいは自分でやるわ。」
「そ、そう………………」
………………そこまではやらせてくれないか。
雪乃がタオルを肌に滑らせる度、私の目が吸い寄せられる。…………いいなぁ、なんでこんなに肌綺麗なんだろ………………。
「…………へくちっ」
あ、そろそろお風呂入らないと寒いかも………………。
「さ、終わったわ。…………何してるの、早く座りなさいよ。」
「………………へ?」
「あんたまだ身体も洗ってないでしょ。………………今度は私が、望乃夏を洗ってあげる。」
…………へ?




