リベンジ、その後。―雪乃
「あーもう、そのままじっとしてなさいっ。」
ウエットティッシュで望乃夏の顔を乱雑に拭う。
「ゆ、ゆきっ、いたっ、もげっ」
なんか今不穏な単語が聞こえた気がするけど!?
「………………ふぅ、なんとか落ちたわね。」
「…………顔が痛い…………」
「そのぐらい我慢しなさい…………。」
ここまで不器用だとは思わなかったわ…………。
「…………まだ完全に落としきれたわけじゃないから、後はお風呂で自分で洗い落としなさい。」
「…………落とすのもめんどくさいの………………?」
すっかり萎えてる望乃夏。………………頼むからしっかりして…………。………………私だって、望乃夏とまたデートしたいんだから。
「…………ま、続きは明日にしましょっか。」
「そうだね、もうそろそろお風呂入らないと。」
お風呂。望乃夏がそう口にするだけでドキッとして。早く早くと急かす気持ちが、身体の真ん中からコポリと湧き上がってくる。でも顔に出さないようにして、
「…………そうね。私も付いてくわ。………………昨日みたいなことになったらたまったもんじゃないし。」
「そだね………………って、それ、昨日約束したじゃん。これからはお風呂一緒って。」
「それもそうだけど………………望乃夏の方でも気をつけて。」
「うん、わかった。」
私達は着替えをまとめ、大浴場へと向かう。
(望乃夏とお風呂…………)
昨日の光景が頭をよぎる。頭を洗ってもらって、望乃夏の指が私の髪の間をくぐり抜けて。お風呂から上がれば、同じ匂い。
「………………雪乃ぉー?どこ行くの?」
ハッと顔を上げると、大浴場とは真逆に向かって歩いていた。
「…………ごめんなさい、ちょっと考え事してたわ。」
「…………そんなに考え込むなんて…………一体何考えてたの?」
「そ、それは…………」
言えるわけないじゃない………………望乃夏のことだなんて。
「ま、ボクも深くは聞かないけどさ………………あ、着いたね。」
よかった、気づかれてない。
脱衣場の扉を開けると、ちょっとだけムワッとした熱気が押し寄せてくる。
「あわわ…………前が見えない…………」
「…………望乃夏、アンダーリムなんだし上から見ればいいじゃない…………」
「そんな簡単には行かないって…………」
「あーもう、しょうがないわねっ。」
と、望乃夏の手を引いて脱衣ロッカーの前に連れていく。
「………………やっぱりコンタクトにしようかなぁ…………」
「あら望乃夏、何か言った?」
「んーいや、別に…………」
変な望乃夏、と思いながら服を脱いでカゴに入れていく。二回目だけど、やっぱりお互いに牽制しあって…………今回は、私が先に折れた。手早くタオルで隠しながら、望乃夏が終わるのを待つ。
「…………望乃夏って、けっこう白いのね…………。」
「………………そりゃあ、毎日トレーニングで外に行く雪乃と違って、ボクはほとんど屋内に引きこもりだからね…………。」
「………………こればっかしは、名前と真逆ね。私達。」
………………私は、ついて欲しい脂肪がみんな筋肉になっちゃうから。
「………………雪と墨、か。ほんとに正反対なのに、ね。でも雪乃だって十分白いと思うよ?その………………後ろ、とか。」
「…………えっち。」
全く、もう………………。
「…………あなたももう少し隠せばいいのに。」
「…………そりゃあ恥ずかしさはあるけどさ…………。」
私のとそう変わらない小ぶりな胸が、望乃夏の腕で隠れる。
「…………ま、見られるのが雪乃なら、まぁいいかなって。」
「…………何それ、意味わかんない…………。」
そう言いながらも、私は抱きしめたタオルをちょっとだけ下げた。
うちのこがどんどん深みに流されていく……………。
追記:2人とも真っ平ではありません。片手に収まるぐらいの小ぶり(文章はここで途切れている)