望乃夏のチョイス。―雪乃
………………全くもう、望乃夏ったら何を言い出すのよ………………。それにしても………………服を贈るのって、そんなえっちな意味だったなんて………………。私の頭に、昨日お風呂で見た望乃夏の身体が思い浮かんで…………慌てて振り払う。
………………もう、一緒にお風呂入れないじゃない、どうしてくれるのよ。
「…………雪乃も、早く服選ばないと。」
「そ、そうね。」
望乃夏の言葉にハッとして、私も自分の服を選び始める。とはいえ…………人の服って選んでる時は楽しいけど、自分のとなるとなかなかいいの見つからないわね………………。
「………………そうだ雪乃。今度はボクが選んであげるよ。」
「えぇ………………」
望乃夏に任せて大丈夫かしら…………?
「ま、そこで待ってなって。」
と、やっぱり試着室に押し込まれて待たされる。流石に私の服は持ってかなかったけど、代わりに靴を人質(物質?)に持っていかれた。
さて、望乃夏はどんなのを持ってくるかしら………………。
しばらくすると、望乃夏は一着だけ持って戻ってくる。
「お待たせ。…………はい、これ。」
「…………これはまた独特なの持ってきたわね。」
「えへへ………………ま、着てみてよ。」
「わかったわ。」
望乃夏から服を受け取って広げてみる。………………へぇ、厚手のセーラーブラウスで上下一体なのね。ところで………………
「………………早いとこカーテン閉めてくれるかしら?」
「あっごめん………………早く見たくてつい………………。」
「………………狭いから一緒には入れないわよ。ちゃんと見せてあげるから早く閉めなさい。」
望乃夏が名残惜しそうにカーテンを閉める。…………全くもう。
再びセーラーブラウスに目を落とすと、胸元の黒いリボンに目が止まる。それは、全体が白の中だからこそ一際目立つ黒。…………なんだかどこかで見た光景ね。
素早く着てからシャッとカーテンを開け放つと、望乃夏の目が点になる。
「…………何よその顔は。私だって恥ずかしいんだから…………。」
「あ、いや、その………………お人形さんみたいだな、って。」
「…………それ、褒めてるの?」
そう問い返す言葉に、自然と嬉しさが混ざり込む。
「当然。 」
その答えに、ほっと安堵する。
「実はね…………さっき考えてたの。この黒リボン、全体が白いから目立つでしょ。白の中にほんのり混ざりこんで、存在を主張する黒。………………私の中のあなたみたい、ね。」
最も、私の中の『黒』は穢れなき『黒』なはずなんだけど。目の前にいる『黒』はそんな欠片もなく。
「………………さ、さっさとお会計しましょ。」
今までの考えが恥ずかしくなってカーテンを閉める。すると、カーテン越しに望乃夏が話しかけてくる。
「…………そっか、ボクは雪乃の中に…………確かにいるのか。」
「…………ええ、時々うざったいぐらいに、ね。」
「……………………良かった。」
何が良かったのかは分からないけど、聞くのも野暮で。
「さ、早く行きましょ。」
「…………うん。」
なおこの後、望乃夏の財布が大変なことになるけれど…………今の私たちはそんなこと露も知らず、辺りを見て回った。