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初メイク。―望乃夏

「…………ほ、ほら元気だして。」

「うう………………冬だしこんな汗だらけになるなんて思わなかったから、お気に入りの付けたのに…………。」

「確かにかわいいね、それ。…………あ、シャワー行くんだっけ。どうしよ、私も朝シャンしよっかな。」

「朝シャンって………………もうすぐお昼よ。」

雪乃が呆れたように言う。しょぼーん。

「………………まぁ、お洒落して待ってなさい。すぐ戻ってくるから。」

と、着替えをまとめてさっさと部屋を出ていく雪乃。………………お洒落、ねぇ………………。学園入ってからいつも制服とパジャマの繰り返しで、私服を着たことなんて片手で数えられるぐらいしかない。クローゼットを引っ掻き回すようにして、あれこれと服を選ぶ。うん、これとこれと………………………………一応、雪乃には見えないとこもお洒落してっと。

結局私が選んだのは、黒のシックなトレーナーと落ち着いた色のロングスカート。………………うん、こんなのしか持ってない私ってほんとに女の子なのかな?

そんなことを悩みながらクローゼットの引き出しをかき回すと、私の手は小さなポーチを掴む。あれ、こんなとこにあったんだ…………。

ポーチを開けると、封を切ってないメイク道具一式が出てくる。…………母さん、これ渡すぐらいなら使い方教えてからにしてよ………………。と、不意に雪乃の言葉を思い出す。

(いい?女の子はね、自分を好きな人には綺麗な姿とかかわいい姿を見てほしいものなのよ…………それに、好きになった人にもそういうのを求めたくなるの…………。)

ドレッサーの前に座ると、思い切ってメイク道具の封を切る。…………うわぁ、何これ。…………見たこともないようなのがたくさん………………。

えと、最初は………………これかな?うん、なんとなくうまくいった。次は…………あれ、なんか違う………………。いいや、これ使っちゃえ!!…………


しばらくして、部屋の扉が開く。

「ふぅ…………望乃夏、帰ったわよ。」

「ゆ、雪乃ぉ…………たすけてぇ…………」

「…………何よ………………って、でででででたぁぁぁぁぁおおおおおばけぇぇぇ!?」

あ、雪乃が腰抜かした。


10分後………………

「………………全く、何をどうしたらナチュラルメイクが惨殺体みたいな顔になるのよ…………。」

私の顔を、雪乃がウェットティッシュで拭きながら呆れる。

「…………………………だって、やったことないんだもん。………………生まれてから、ずっと。」

「………………え?」

雪乃、そんなに驚かなくても………………。

「………………しょうがないわね。ほら、貸しなさい。」

と、メイク道具をひったくられて、顔を色々といじくり回される。

「ちょ、雪乃、くすぐったい、」

「ほら動かないで。じっとしてないとまた化け物になるわよ。」

そのまま5分ぐらい雪乃に身を預けて、再び鏡の前に立たされる。

「………………誰、これ。」

「………………いや、私とあんたしかいないでしょこの部屋。…………それにしても、素材がいいとやっぱり違うのね。」

「え、これボクなの?」

思わず二度見する。…………ほえー、メイクってすごいなぁ。

と、突然フラッシュが光る。

「…………そのまま動かないで。」

顔だけ動かすと、雪乃が携帯を構えていて、

「ゆ、雪乃…………撮らないで…………」

「か、勘違いしないで…………。私のメイクがこれだけ上手くなったっていう記録よ記録。」

………………嘘つき。

「…………そういえば雪乃はメイクしないの?」

「…………私はいいわ。落とすの面倒だし。それより早く行きましょ。」

「…………雪乃、自分で言ったこと忘れたの?女の子は自分を好きな人には綺麗な姿とかかわいい姿を見てほしいもので、好きになった人にもそういうのを求めたくなるって。ボクも雪乃が大好きだから、雪乃にも綺麗になって欲しい。」

「……………………ふぅ、一本取られたわね。待ってて、すぐにメイクする。」

と、ドレッサーの前に座って手早くメイクをしていく雪乃。その手つきは私なんかよりずっと慣れていて………………ちょっとだけ、嫉妬する。

「…………さ、できたわ。行きましょ。」

二人で、そっとドアを開けた。

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