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受け入れて。―望乃夏

雪乃の呟きが、無音の世界にこだまする。当然、私の火照りかけた頭にもちゃんと聞き取れたわけで………………

「………………ボク?」

あれ、やっぱり寝ぼけてるみたい。…………そんな、まさか、私が………………雪乃の好きな人………………まさか、ね。タチの悪い夢だなぁ、早く寝よ…………。

と、布団に潜り込もうとする私を、雪乃が引き止める。

「ちょっと、何逃げようとしてんのよ。」

「いやぁ、ついにボクのポンコツな頭がイカれたみたいだから早く寝ようかと。」

「…………はぁ、まさかもう一度言うことになるとはね…………。いい?もう言わないわ。私、白峰雪乃は………………墨森望乃夏のことが、好き、です。」

言い終わると同時に、雪乃がぼふん、と爆発する。

「………………これで、いいかしら?」

「………………うん、これではっきりしたよ………………。どうやら2人とも熱がある」

「…………茶化さないで。」

雪乃が刺すような目つきでこっちを睨む。

「………………ほんと、なの?」

「………………こんなこと、冗談で言えると思う?」

…………認めよう、私の頭はどうやらまともみたいだ。


「そっか、雪乃の想い人は、ボクか、そうか………………。」

あれ、どうしてだろ。メガネかけてるのに目の前が霞んで………………これじゃ、雪乃が見えないよ…………。

「…………全く、しょうがないわね。」

突然メガネが外されて、ハンカチを押し当てられる。

「…………今度、洗って返してよね。」

「………………ありが、と…………。」

何度も何度も、顔に押し当てるけど…………それでも、この涙は止められなくて。ようやく止まったのは、雪乃から十数枚目のティッシュを受け取った頃だった。

「………………どう、落ち着いた?」

「………………まぁ、ね。頭も冷めてきたし。………………それにしても、ボクは本当にバカだってよくわかったよ………………。雪乃に想い人がいるって聞いた時、それがボクのことだなんて微塵も考えつかなかった………………。ただ、ボクはもう雪乃の一番にはなれないんだって…………。どうやったら、その人から雪乃を取り返せるんだろうって、そんなことばっかり考えてた。」

「…………結局その相手は自分だったわけだけど。」

「………………でも雪乃、………………その、ほんとにボクでいいの?高等部にはもっとかっこいい人だっているし、ボクより『大きい』人だってたくさんいるし…………」

「バカね、もう。…………望乃夏だから、良いんじゃない。」

「…………そっか、ボクだから、か。」

「………………もう。明日も早いんだからさっさと寝るわよ。」

と、私に背中を向けて布団を被る雪乃。私はその布団をゆっくりと剥がして、その背中に潜り込む。

「…………つかまえた。もう、離さない。」

「何してんのよ…………まぁ、暖かいから、いいわ。」

そっと、雪乃に身体を密着させる。背中越しに二つの泊音が重なり合って、いつしか同じリズムを刻む。


おやすみ、Dear my girlfriend.

ここまでが、ゆきのの第一部となりますん。

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