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真夜中の涙。―雪乃

ああ、どうしよう………………。私は望乃夏に背を向けながら、ベッドの中で頭を抱える。

あんなの………………告白とおんなじじゃない。

どうしよう………………私は枕をぎゅっと抱えて、飛び出しそうな心臓を無理やり押さえつける。どうしよう、どうしよう、どうしよう………………。


やっと…………落ち着いたわ…………。

そうっと、寝返りを打って望乃夏の方を向くと、望乃夏もまた私に背を向けて寝てて………………布団からはみ出した背中が、微かに動いてる。

「…………望乃夏。」

ボソッと、それでもシーンとした部屋だからはっきりと聞こえるぐらいの声で、呼びかける。………………寝てるみたいね。

目線を上げると、時計はもう翌日を指していた。…………私、2時間以上身悶えてたのね…………。

暖房の止まった部屋は、本当に静かで。望乃夏の寝息だけが、規則正しいリズムで聞こえてくる。

………………ちょっと、寒い、わね。

暖房が切れてから時間が経ったせいか、部屋の空気はひんやりとしている。それに、私は名前が冬っぽいってよく言われるけど…………『あの日』のことがあるから、冬も、寒いのも嫌い。

何か、暖かいものが欲しいわね。でもそんなものがこの部屋にあるはずも無く…………いや、目の前に、あった。

布団からそうっと起き出して、望乃夏の背中をちょん、とつつく。………………身動き一つしないわね。…………これなら。

そうっと、布団をめくって足を差し込む。…………あったかい。恐る恐る、全身をベッドに横たえて…………私も布団に包まる。

…………あったかい。これが、望乃夏の温もり。顔に当たる望乃夏の髪から、私とはまた違った香りがする。

………………もうちょっとだけ、近くに…………。そっと身体を寄せると、もっと暖かくなって…………。これ、ぴったりくっついたらもっとあったかいかな?

ドキドキを押さえて、もっと近寄って…………不意に手を止める。

…………アールグレイのバカ。なんでこんな時にお花摘みたくなるのよ………………。

…………でも、お花を摘むには望乃夏の布団を出なきゃいけないし…………かといって朝までこのままでいたら、私の『ティーポット』が溢れちゃう。

タイムリミットはそう遠くないし、どうしようか悩んでると………………不意に望乃夏が寝返りを打って、目を開ける。

「なんだか温かいと思ったら…………雪乃、なんで私のお布団に…………?」

び、びっくりさせないでよ………………こぼすかと思ったじゃない…………。

「お、起きてたの!?」

「…………そりゃああれだけモゾモゾされたら、ねぇ…………。それで、どうしたの?」

「…………………一緒に、お花を…………」

「………………はいはい。」


部屋に戻ると、私は電気を点ける。

「危なっかしいから、今度は望乃夏が先に行って。」

「はいはい。」

………………言ってるそばからまた小指をクリーンヒットさせないでよ。

「もう、大丈夫なの…………?」

かがみ込んで様子を見ると…………望乃夏の目に、涙の跡が見えた。

「あー大丈夫…………じゃない、かも…………」

と言いつつ、ベッドに戻る望乃夏。

「…………消すわね。」

照明を落とすと、私はテーブルを避けてベッドに――私のではなく、望乃夏の方――に潜り込む。

「…………雪乃?」

「…………布団が冷たくなっちゃったから、温まらせて。」

「いや、狭いよ…………」

そう言いつつも、私のために壁に寄ってくれる望乃夏。

「………………ねぇ、望乃夏。」

「ん、何?」

「………………もしかして、私がそっぽ向いたあと、泣いてたの?」

「………………バレた?」

「…………バレたくなかったら、折角洗面所にいたんだから涙の跡を消しときなさいよ。」

「………ボクの気も知らないで…………。」

「…………何よ。」

「…………雪乃が、好きな人がいるって言った後から……………なぜか、胸の奥が痛いんだ。もちろんボクは、雪乃の恋を応援する…………応援、したい、んだけど………………何だろ、雪乃を取られたくない、みたいな………………そんな気がして…………」

………………呆れたわね。まさか、ここまでニブチンだったとは………………。

「………………望乃夏、あんた本当のバカみたいね………………」

「………………雪乃、ボクは本当に悩んでるんだ。次にそんなことを言ったら…………本気で怒るよ。」

「怒ってるのはこっちの方よ。…………まさか、ここまで鈍いとは思わなかったわ。」

「…………怒るよ?」

…………ダメね、話が噛み合わない。…………やっぱり、言うしかないのね。

「…………………………………………あんたよ。」

「………………………………………………ふぇ?」

一転してマヌケな声を出す望乃夏。

「………………あーもう!!何度も言わせないで、私の好きな人は………………望乃夏、あんたよ。…………………………」


…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はぁ、はぁ、はぁ……………………………………ついに、ついに、言っちゃった………………。

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