発掘品........?―雪乃
................はぁ、まったくもう................。望乃夏はなんでこう、私をドキドキさせることばかり、するのかしら................。私は掃除の手を止めて、望乃夏の方を振り返る。ん?と振り向いた望乃夏と目線が合って慌てて首を元に戻すけど、私の心はうわの空。
「もう、どうしたの雪乃っ。」
「な、何でもないって................」
望乃夏のことを振り払って、やりかけの部屋の片付けに戻る。................とは言っても、そんなに使ってなかった部屋だから、片すようなものもそんなには無くて、あっという間にやることが無くなる。それは望乃夏も同じみたいで。
「さーて、雪乃のお宝もっと出てこないかな?」
なんて、今度は本棚をがさごそと漁っている。
「................望乃夏、そんなとこ探したって........」
「お、あった。」
「うそっ!?」
望乃夏が自慢げに広げたのは、
「................随分とまぁ、懐かしいものが出てきたわね。」
小学生の時のテスト................
「しらみね ゆきの 20点だって................そりゃ、こんなとこに隠しときたくもなるよね。」
「う、うるさいわねっ。そんなもの見つけないでよ。」
「えー、面白いじゃん。................ボクの知らない雪乃が見れて、さ。」
「全然面白くないったら!!」
望乃夏からテスト用紙をひったくってビリビリに破いてゴミ箱に突っ込む。................に、20点で何が悪いのよっ。
「お、今度は................なんだこれ。」
「つ、次は何を見つけたの................?」
恐る恐る振り向くと、望乃夏が手に持っていたのは、
「................親愛なる雪乃さまへ................って、ラブレターじゃんこれ。」
「................あー、そう言えばそんなの貰ったことあったわね................」
脳みその端っこで干からびた記憶をちょこっとだけ呼び起こす。
「へぇ、なかなか可愛い字だね。................ふぅん、ふむふむ、なるほど、へぇ................」
「................って、なに人のラブレターを勝手に開けて読んでるのよっ!?」
「だってさー、こういうの気になるじゃん?じゃん?」
「そうは言っても................贈ってくれた人に失礼だし................」
「................ふぅん、月岡 香澄ちゃんね。........................って、これうちのクラスの香澄ちゃんじゃん!?」
「..............え?」
................そう言えば、私にまだその気はなかったから、指定された場所には結局行ってないのよね。それに差出人の名前までよく見てなかったし。
「................望乃夏のクラスメイトなのね、今は。」
そう言えば望乃夏に会いに5組に行くと、嫉妬の混ざったような視線を向けてくる人がいたけど................あの人かしらね。
「................ちなみに、これを貰ったのは?」
「................うーん、中学2年生の春ぐらいかしらね。記憶がけっこう曖昧だけど。」
「................なるほどねぇ................。それにしてもあの香澄からラブレターを................女嫌いで有名なのに。」
「................それ、下手すると私のせいなのかも。ラブレターを無視したし。」
「................まぁ、どうなんだろね実際。とりあえずこれは厳重に封印................いや、本棚の奥に監禁しておくよ。こんな闇しかないもの発掘しちゃダメだよね................」
いそいそと望乃夏が本棚を元通りにする。
「................さ、片付け終わったし、下降りよっか。」
膨らんだゴミ袋を抱えて下に降りると、お父さんとお母さんが何かを話してて。
「あ、終わったの?なら大福あるから、二人で食べてなさい。」
わーいって感じで望乃夏が大福を手に取る。私もちょうどお腹すいてたし、一口で頬張る。................あら、いちご大福なんだ。
「................じー........」
「の、望乃夏................なんで私のことじっと見てるの?」
「................これがホントの雪見だいふく、なんちゃって。」
「ぶつわよ?」
左手に力を込めると、望乃夏が少しだけ腰を浮かす。けど、
「................ゆ、雪乃を見ながら大福で、雪見だいふく................ぷぷっ」
お母さんがお腹を抱えて笑い転げてた。
「も、もうっ、お母さんまでっ、................も、もう知らないっ!!」
すっかり頭に来て、私はリビングを出ていく。................私のどこが大福なのよ、もうっ................