表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/152

隠してたものは。―望乃夏

................雪乃、なんであんなに慌ててたんだろ................?

ゴミ袋片手に階段をトントンと登る。................よっぽどボクに見せたくないもの、なのかな。でも、雪乃がそんなもの持ってるなんて................。ボクって、雪乃に信頼されてないのかなぁ?

ちょっとズキッとした心を抱えたまま、雪乃の部屋の扉をそっと開ける。................あれ、雪乃がベッドの上で何か抱えてる................?

「........................雪乃?」

「ひゃっ!?」

そっと声をかけると、雪乃が飛び上がる。そして、手に持ってたものを慌てて自分の服の中に隠す。

「んー?雪乃、今、何隠したのかな?」

「な、何でもないわよっ........................ほら、ゴミ袋持ってきたんでしょ?そこのゴミ箱の中身、ゴミ袋に空けちゃって?」

「雪乃、話をはぐらかすの禁止。................出して?」

手のひらを差し出すと、雪乃はぺしっと叩いて逃げ出す。

「あっ、逃げた。」

とっさに腕を掴もうとするけど、ボクの腕は宙をつかむ。

「望乃夏、何遊んでるの?ほらお片付け。」

「................雪乃、ひどい。」

ボソリと呟いて俯くと、袖を目に当てる。

「................の、のの、か................?」

「................雪乃とは友達........いや、恋人だと思ってたのに、隠し事するなんて................雪乃に、裏切られた気分だよ................」

「ののか、................ないてる?」

「................泣きたいよ、雪乃に、嘘つかれたんだもん。」

ぶすっとそう言うだけで雪乃がうろたえる。...............ふふっ、雪乃、チョロい。もう一押しもすれば、降参してくれるかな?

「................望乃夏、こっち向いて................?騙してるのは悪かったけど、望乃夏にだって見せたくないもの、一つや二つはあるでしょ?」

「そ、それはそうだけどさぁ................」

「................だから、見逃して?ね?」

雪乃が上目遣いにのぞき込んでくる。................くっ、雪乃................それ、反則なんだからっ......../////

「................で、でも、気になるよっ................雪乃がそれ程隠すだなんて、................その、ボクのえっちぃ写真とかなんじゃないかって、不安で................」

「そ、そんなの持ってないわよっ!?」

雪乃の頭から湯気が上がる。................え、もしかして、ほんとに持ってる感じ?

「........................ほんと、なの?ほんとに、ボクのハダカの写真とか、持ってるの?」

「そんなのも、持ってるわけ、ないじゃないっ!!................ふ、文化じゃ、あるまいし................」

物凄く力を込めて否定される。................え、そもそも安栗さんそういうの持ってるの?................お風呂に携帯持ち込み禁止なんだけど!?

「................やっぱり持ってるんだ................雪乃の、ヘンタイ。」

「だーかーらーっ!!違うって!!」

雪乃が指先まで真っ赤になって怒る。................うん、この分だとほんとに持ってないみたい。

「................ごめん、悪かった。」

雪乃に抱きついて頭を撫でると、雪乃の赤みが引いていく。

「................撫でれば赦してもらえると、思ってるの?」

少し甘い声で雪乃が怒る。

「................シたいの?」

「................今は、いい。」

................なら、何がお望みなのかな................?

「................望乃夏は、私の部屋の家探し禁止。少しぐらいヒミツにしてても、いいでしょ?................これから一緒に『歩いていく』んだから、分かれ道で出会う前のことは、ナイショにしててもいいじゃない。................私も、望乃夏も、これからが楽しくなるのに。」

「................雪乃っ................って、そんないい話っぽい何かに騙されたりしないからね?」

雪乃のトレーナーの首筋から手を突っ込んで、さっき隠したモノを探る。

「ひゃっ!?の、ののかっ、どこ触ってっ................んっ、そこ、くすぐったいっ/////」

雪乃の膨らみとかふにふにのお腹に触れる度に、雪乃がくねくねと動いてやりづらい。しかも、だんだん声も甘くなってくし、耳元にかかるあったかい息のせいで頭がぼーっとしてくる。................くうっ、ど、どこに隠したんだ雪乃っ!?

その時、雪乃のトレーナーのすそからヒラリと何かが落ちる。................これだっ!!

「あっ、」

雪乃が飛びつくよりも先にボクがキャッチする。................なんだ、さっきの写真じゃないか。

「ののかっ、それはダメ!!」

雪乃が腕を掴んでゆさゆさする。や、やめてっ、肩外れるっ、................カバーを外して写真を引き抜くと、腕に鋭い痛みが走る。

「っ!?」

雪乃が、最後の抵抗とばかりに二の腕にかみつく。

「ゆ、雪乃っ、しぶとくない!?」

「それだけは、ダメなのっ!!................望乃夏、見たら絶交するからっ!?」

「................ごめん、もう見ちゃった。」

「ああっ................」

雪乃が力なく崩れ落ちる。

「................これ、入寮した時の写真だよね?................ははっ、ボクったらこんなガチガチな顔して。それに隣の雪乃も、今よりずっとむすっとした顔で................。でもさ雪乃、これのどこがマズイの?」

雪乃はその場にへたりこんで何も答えない。................うーんと、こういうのって大体裏側に何か書いてあるよね。ピラっと裏返すと、雪乃の細かい字で何か書いてある。

《入寮式の日、........同級生のルームメイトと二人で。墨森望乃夏ちゃんって名前みたい。少し変わった子っぽいけど、これから仲良くなっていきたいなぁ。》

................えっと、これは................

「................雪乃?」

「ひっ!?」

「いや、そんなに驚かなくても................その、これってさ................もしかして、お母さん宛への手紙?」

「................ううん、それは私のアルバムに貼ろうと思って忘れてた写真。................望乃夏を初めて見た時のことも、後ろに書いておいたの。」

「................そうなんだ。でも、これのどこがマズいの?」

「................だ、だって................恥ずかしいじゃない。................その、入学した時からずっと気になってて、声かけて仲良くなるタイミングをずっと逃してて................ずっとやきもきしながら、半年もおんなじ部屋で過ごしてたなんて........................今の望乃夏に、バレたくなかったんだもん。」

「やーい雪乃のヘタレ。」

「の、ののかっ!?」

「................でも、そんなヘタレな雪乃がボクは好きです。」

改まってそう言うと、雪乃がまた指先まで赤く染まっていく。

「........................か、かかかかかからかわないでっ!?」

照れ隠しなのか、それともホントに怒ったのかは分からないけど、雪乃に一発殴られた。................しかも利き手の方で、グーで。

................雪乃って、ほんとにかわいいんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ