おもち、もちもち。―望乃夏
「よっ........................と。」
もち米の袋を担いで台所へと持っていく。
「それにしても、雪乃は何キロ食べるのさぁ................」
「お、お餅好きで、悪い!?」
「いやそこまでは言ってないけどさ................」
10個積み重ねたもち米の袋を、改めて見る。
「................これ、全部搗くの?」
「そうじゃない?だってそんなに入ってないでしょ。」
「................いや、ひと袋2キロなんだけどこれ................」
「ふふっ、心配しなくても三が日終わる頃には全部雪乃のお腹に入っちゃうから。」
雪乃のお母さんが、大きめのボウルをいくつも持ってくる。
「................うわっ、どれだけ作るんですか!?」
「お鏡餅とかもまとめて作らないといけないし、それに................そこに搗き立てを狙ってる子がいるでしょ?」
「あぁ確かに。」
目線を向けると、雪乃が慌てて顔を逸らす。一応自覚はあるんだ。
「................お餅、美味しいんだもん。」
「だからって................まさか、飾ってあるお鏡餅に手を出したりは................」
「流石にそんなことしないわよっ」
「あら、実は手を出したことあるわよ?」
「えっ」
「ちょっ、それはっ................」
「あれは確か小学4年生の時................」
「ちょっとお母さんっ!?」
雪乃を後ろから羽交い締めにして、
「................あ、続けてください。」
「えぇ、お腹空いたみたいで、二段重ねの上のお餅をかじってたわ。揚げ餅みたいに食べられるのかと思ったみたいね。」
「へー................」
これは面白いこと聞いちゃった♪
「の、望乃夏っ、ウソだからねっ!?信じちゃダメっ。」
「はいはい、雪乃ははらぺこさんだね。」
「ののかぁっ................」
あ、凹んだ。
雪乃のお母さんがパンと手を打つ。
「さぁさ、仲がいいのはいい事だけど、早くお餅仕込んじゃいましょ。」
「あ、はーい。」
ボウルを一つとって、もち米をその中に空ける。ひと袋が全部入ったのを確かめると、計量カップを探しに立ち上がる。
「あら、目分量でいいのよ。おコメが全部隠れるぐらい。」
「................いえ、持ち上げたらひっくり返しそうなんで。」
「あら望乃夏、だらしないわね。」
雪乃が片手でひょいっと持ち上げる。
「いや、問題はお水を入れたあとね?」
雪乃が抱っこするボウルに水を入れていく。
「全然重くないわよ。望乃夏はもうちょっと筋肉つけた方がいいんじゃない?」
「それは雪乃だけだって................」
この要領で、とりあえず6kg程を水に浸す。
「このまま6時間ぐらいほっといて、夜になったら蒸しましょっか。」
「はぁい。................で、このうち半分ぐらいが雪乃のお腹に消える、と。」
「そんなにつまみ食いしないからっ!?」
「だよね。................雪乃がもっとぷにぷにしちゃいそうだし。」
服越しに雪乃のお腹をつんつんする。
「そ、そんなに太ってないから................」
「ねぇ知ってる?雪乃。................ボクの手のひらぐらいのサイズのお餅でもね、ご飯一杯分ぐらいのカロリーがあるんだよ?」
「................そうなの?」
雪乃が縋るような目で雪乃のお母さんを見ると、
「あら、知らなかったの?」
と返される。
「................ってことは................」
雪乃が自分のお腹をつまみ始める。........................あ、逃げたっ。
「................言わなきゃよかったかな。」
「ふふっ、また新しく雪乃の服買ってこなくちゃね。」
................後で慰めとこ................。