いっぱいの、スキ。―雪乃
「................望乃夏ちゃん、その................なんか、ごめんなさいね................」
「あー、いえ................いいですよ、もう................。元々あんな感じの人だって分かってたので................。」
「................の、望乃夏................」
........................さっきから、望乃夏はぐったりしっぱなし。よっぽどお母さんの過去の話が堪えたみたい。
「................望乃夏、その................気を落とさないで?」
「................落とすなと言われても、ねぇ................」
................あ、もっと悪い方に進んじゃったみたい。
そんな重い雰囲気を載せたまま、車は家へと帰り着く。
「雪乃、荷物下ろすの手伝って。」
「あ、それなら私も手伝います。」
と、望乃夏がトランクをのぞき込んで買い物袋に腕を通す。
「あら~。ならお願いね。そこのおコメの袋はお父さんが運ぶからほっといて。他は全部台所におねが〜い。」
私もトランクに頭を突っ込んで、買い物袋を二つ抱える。................それにしても、買い物の量すごいわね。いつもこんなに買ってたかしら?
視線を上げると、望乃夏も同じことを思ったらしく、
「買い物の量すごいですね。年末ってこんなにモノが必要なんだ。」
「ふふっ、それだけじゃないわ。ほら、そこに沢山食べる子が居るじゃない?」
「ちょっ、」
................わ、私のせい!?しかも望乃夏は納得して頷いてるし。
「................いくらなんでも、そんなに沢山は食べないって................///」
「あら?そんなこと言いながら今年のお正月にお雑煮を5回もお代わりしたのは誰だったかしら?」
「そ、そんなのばらさないでよ................」
................し、しかも、望乃夏の目の前で................。
「んー、でも雪乃ならそれぐらい食べててもおかしくはないか、うん。」
「望乃夏は納得しないでっ!?」
「だってさ、雪乃はご飯を沢山食べてるイメージだし、実際学食はいつも大盛りな上におやつまで食べてるし................」
「そ、それは部活してるから................」
「安栗さんはそんなに食べてなかったよ?」
「................文化はあれでいて間食多いから。」
そんなことを話しつつも、買い物の荷物を台所に運ぶ手は止めていない。
「........................んー、でもさ。................そういうの、雪乃らしくて好きだよ?」
「ちょ、ちょっと................」
不意打ちの『スキ』に耳の端まで一気に赤くなる。
「................雪乃が何か食べてるとこが、三番目に好き。」
「................うぅう................」
買い物袋をギュッと抱きしめる。
「..............さ、三番目、なの?..................に、二番目と、一番、は?」
「................二番目は、横で寝てる時の雪乃の寝顔。................一番はね、................うん。ナイショ。」
「な、ナイショって................気になるじゃない、教えてよ................」
望乃夏の袖をギュッと掴む。
「................なーいしょ♪」
「お、教えなさいよっ................」
結局その後も、教えて教えないの押し問答を繰り返して、やっと望乃夏から聞き出した答えは。
「........................一番はね、いつもの雪乃。................だから、雪乃が傍にいるだけで幸せ。」
「................の、のの、か................」
わたしも、しあわせだよ。そう言いたいのに、言い出せない。その代わりに、望乃夏の袖口を握る手に、そっと力を込めた。