教えてよコ〇ノトリ................?―雪乃
「........................」
「................もう、望乃夏。機嫌直して?」
「................だって................塩は邪道って........................」
「ごめんなさいね、目玉焼きに何をかけるかは毎回家族会議の議題だから................」
「................そ、そんなのが議題に................」
「まぁ、この論争はすごいから................」
........................き、嫌われちゃったかな?
「................塩だっておいしいのに................」
「................今度学食で一緒に食べてみるから、それでガマンして?」
「................約束だよ?」
「も、もちろん........................」
................向こうに戻ったらやることが、また一つ増えたわね................。
「........................でも、家族っていいね。こんなことで意地を張り合えて、それでいてあったかみがあって........................................ボクは、そんなの持ってないや。」
望乃夏が胸の前で手を握りあわせる。その手は小刻みに震えていて................思わず自分の手を望乃夏の手に重ね合わせる。
「................大丈夫。望乃夏、落ち着いて?................あったかいおうちなら、これから私と一緒につくろ?」
「ゆき、の........................」
望乃夏の震えが段々と落ち着いていく。........良かった。
「................ありがと、雪乃。」
「どういたしまして。」
すると、不意に望乃夏がニヤリと笑う。
「それにしても................『これから私と一緒におうちをつくろ?』かぁ................雪乃もなかなか積極的なこと言うんだね。」
「あ゛っ゛!?」
思わず、出しちゃ行けないような声が漏れる。........................こ、これって、ぷろぽー、ず................?
「雪乃、大丈夫?頭から湯気出てるよ?」
「出てないわよっ!?」
思わず望乃夏の耳元で叫ぶ。........................こ、これじゃ................私が望乃夏のこと口説いてるみたい................
「......................おーい、ゆきのー?」
「な、なに................?」
「................その................二人で住むのもあれだし、................こ、子供とか、欲しいよね................?」
「い、いきなり何を言い出すのよバカののかっ!?」
思わず望乃夏の背中に平手打ち。................わ、わたしと、ののかの、こども!?................え、えと、子供って................と、鳥さんが運んでくるんだよね、うんそうだったよねきっとそうだよそれしかないね!!
自分の中で無理やり納得して望乃夏に目を向けると、
「の、ののかっ、大丈夫!?」
「................うー、天国が見える................」
「の、ののかっ!?」
ゆっさゆっさと揺さぶると、望乃夏がまたぐったりする。................た、大変、救急車っ................。
「ゆ、揺らさないで................気持ち悪い................あと背中痛い................」
「ご、ごめんね望乃夏................」
「................ううん、変なこと言ったボクが悪いから........................」
「い、今にも死にそうな言い方しないでよっ!?」
あわわ........どうしよっ................。私があたふたしているうちに、望乃夏はなんとか起き上がる。
「........ふぃー................死ぬかと思った................」
「ほ、ほんとに、ごめん................」
反省して身を縮こませる。
「................よく考えたら、雪乃と子供って出来るのかな?」
「................そ、そう言うのは望乃夏の方がよく知ってるでしょ?」
「................そ、それもそうか................」
「................................」
どことなく気まずい空気の中で、私達は見つめあっていた。そしてその空気を切り裂いたのは、下からの呼び声。
「雪乃ー、望乃夏ちゃーん、お買い物行くけど来る?」
「あ、うん、ちょっと待っててー。................望乃夏は、どうする?」
「あ、うん................着いてくね。」
そう言うと、望乃夏は財布を取りに荷物を漁り始める。それを見て私も、掛けておいたコートを取って身につける。
十分もしないうちに身支度を終えて、望乃夏と二人で下に降りる。
「ほらほら、置いてくぞ。」
お父さんが後ろの席を空けて待っている。お母さんは助手席。
「じゃ、行こっか。」
二人で乗り込んだ後部座席。シートベルトを締めると、二人の距離はちょっとだけ開く。それを埋めようと私が手を伸ばすと、望乃夏も同じことを考えてて。手のひら同士が柔らかなキスをする。
(あったかいね、雪乃。)
(うん。)
目線で会話すると、ヒーターの風が私達の所に舞い込んでくる。このままずっとこうしてたいって思うのは、ダメ、なのかな。
私の思いは、温んだ空気に溶けていく。