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爪と牙。―雪乃

2人のアンサーとは。

…………やっちゃった…………

私が姿勢を変えると、ぎしりと音を立ててベッドが沈み込む。その傍らには、目を閉じて横たわる望乃夏。………それだけならいつもの光景なのに、ただ一つ違うこと、それは……………望乃夏がほとんど裸なことと、私のパジャマに望乃夏の『蜜』が染み込んでること。それが私に、さっきまでのことが『ウソ』じゃなかったって教えてくれる。

火照りきった身体が、部屋の空気と溶け合って急に冷まされていく。ぶるりと身震いして、私はベッドから身を起こしてトイレに立つ。その手首を、望乃夏ががしっと掴んだ。

「の、のの、か…………」

「…………おはよう、雪乃。」

「ま、まだ夜だけど………」

罪悪感から目を伏せたまま返すと、望乃夏は私の手をさらに強く握る。

「…………どこ、いくの?」

「ちょ、ちょっと、お手洗い………」

「……そう。」

それだけ言うと、望乃夏は私の手を離してまたベッドに戻る。………ちょっと濡れてるけど、寒くないかな………

トイレから戻ってくると、私の部屋の明かりが点いてた。恐る恐る扉を開けると、望乃夏が着替えてて………慌てて目を伏せる。望乃夏の白い肌のあちこちに、私の付けた傷が痛々しく残ってる。……………それは歯型だったり、爪痕だったり。

「……………ね、雪乃。」

「ひゃっ、ひゃい!?」

いきなり話しかけられて思わず変な声が出た。

「……………途中から記憶が飛んでるし、それにいきなりだったから殆ど覚えてないんだけど……………雪乃は、ボクに何をしたの?」

ズキリと心が痛む。その言葉には冷たさしか宿っていなくて。室温すら生ぬるく感じるほどの冷気が、望乃夏から私に伝わってくる。

「そ、その…………あの…………」

「…………雪乃、ちゃんとボクの目を見て話して。................それとも、言えないようなこと?」

無理やり望乃夏の方を向かされて、目線を合わさせられる。その目は、『ユルサナイ』と訴えかけていて…………私の心臓が一瞬、止まりそうになる。

「…………................えっと、その........首筋に噛み付いて、胸を触りました。」

思わず敬語になる。けど望乃夏の目線は変わらない。

「….............それだけじゃ、ないでしょ?」

「そ、その後…........望乃夏の『大事なトコ』に触れて…................そ、その、................」

その先はどうしても言いよどむ。…........それを言った途端に、望乃夏との『これまで』が壊れそうで。........でも、してしまった事は、もうどうにも出来ない。

「................................え、えっちなこと、しました………」

そういった途端、望乃夏が私に飛びかかってくる。いつもなら体格の違う望乃夏が飛び込んできたって受け止められるけど、今回のは有り得ないほどの力がこもってて、あっという間にベットに組み伏せられた。でも、それで終わりじゃなくて。

「.............もう泣いたって、許せないから。」

望乃夏の手が私のパジャマにかけられる。ボタンを引きちぎるように外してパジャマを押し開き、私の胸をあらわにしていく。それでも望乃夏は止まらなくて、私のズボンに手をかけて膝まで下ろしにかかる。ただ、私はされるがままでいた。

「................雪乃にも、同じキズつけてやる。」

血走ったその目をただ眺めて、私は望乃夏に向かって呟いた。

「…................好きにして、いいよ........私が望乃夏にしたことだけじゃなくて、望乃夏が私にしたいことも全部................」

.............心臓が大暴れするし、身体も震えてる。でもこれは、私が悪いんだ。覚悟を決めて目をつぶると、望乃夏の息遣いだけが聞こえてくる。そして――――毛布が、かけられた。

「........................................えっ?」

恐る恐る目を開くと、そこには頭を抱えてそっぽを向く望乃夏がいた。

「........................いいよ、もう。」

ぶすっとした様子で言い捨てる望乃夏。

「…........え、遠慮しなくてもいいのに…........これは私が悪いんだから................」

だから…........と言いすがろうとするのを、望乃夏が止める。

「…................いいんだよ、もう。雪乃の覚悟もわかったし…................それに、雪乃がボクのこと好きだってことも最初から分かってたしね。」

「........の、のの、か…........?」

「…................いきなりだからびっくりしたけど、別に嫌じゃなかったし。................それに、私達は恋人同士、でしょ?だったらいつかは................そんなこともするかもって分かってたし、それがたまたま今日だったってだけで…................」

しどろもどろになりながら伝える望乃夏。

「................許して、くれるの?」

「................別に許した訳じゃないけど。現にこんなに傷だらけにされた訳だし。…................でも、雪乃にこういうことされるんだったら、別にいいかなって。」

「…................のの、か…........」

毛布をギュッと握りしめる。そんな私に望乃夏は、

「................ほら、早く着替えてもう一回寝よ?ボクもやっと眠くなってきたし、さぁ?」

と、布団にゴロンと横になる。

「…................わ、わかった…........すぐ着替えるから、待ってて。」

カバンから替えの服を取り出して、いそいそと着替える。................けど、私の心の中は依然として晴れないままで。

布団に潜って電気を消した後も、望乃夏の規則正しい寝息が聞こえてきた後も、私はしばらく寝付けなかった。

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