爪を立てて。―雪乃
今回はかなりスレスレのラインを攻めます。
………はぁ。どうしてこうなっちゃったのかしら。私はもう何度目になるか分からない寝返りを打ってため息をつく。その視線の先には、何も知らずにすやすやと眠る望乃夏がいる。
…………一緒に寝たいからお布団は用意しなくていい、なんて言うんじゃなかった。いつものことだから今日も………なんて考えてたのは甘かった。
(私の家だからもっと落ち着けると思ったのに………普段と違う景色だからか全然落ち着けないわね。)
もぞもぞと起き出して目覚ましを覗き込むと、まだ日付すら変わってない。……………ほんとに、寝れるのかなぁ。
そんなことを考えながら天井を眺めると、月明かりが天井のシミを怪しく照らす。
(そういえば、昔はこのシミが怖かったのよね………。)
この部屋をもらった時は、シミがオバケみたいに見えて怖くて寝れなくて、すぐお母さんとこに逆戻りしたけど………今はもう、大丈夫。怖くなっても、隣に望乃夏がいるし。
無意識に望乃夏の手を握ると、ほんのりと温もりが伝わってくる。
(やっぱり柔らかいなぁ。)
ぷにぷにと揉んでみる。私よりもちっちゃな、望乃夏のてのひら。
(………でも一番好きなのは、やっぱり。)
そっと手を伸ばして望乃夏の膨らみに触れる。微かに上下するその胸にそっと手を置いて、望乃夏の鼓動を感じとる。
(…………私もおんなじぐらいだけど、望乃夏の方が柔らかいし。)
望乃夏に抱っこされるとわかる、ふにっとした心地よさ。望乃夏は気にしてるけど、このぐらいが丁度いい。
(だってここは、私だけの特等席、だもん。)
もうちょっと近づいて、更に温もりを感じ取る。吐息をかければ、すぐにでも起きちゃいそうな近さ。………もっと近くでみたい、かも………
更に身体を近づけると、望乃夏がいきなり寝返りをうって私の方を向く。………鼻先がぶつかって、私は思わず飛び退く。………た、確かに近いけどっ!?……………こ、こんなの、近すぎるよぉ……………
「…………の、ののか、……起きてない?」
恐る恐る声をかけるけど、帰ってくるのは寝息だけ。………寝てるみたい。
(………それにしても、寒いわね………)
私が何回も寝返りを打つ間に毛布はどんどんとずれていって、さっきの望乃夏の寝返りでずり落ちちゃった。
(もう、しょうがないわね。)
もぞりと起き出して毛布を掴むと、まずは望乃夏に掛けてあげようとして………目線が釘付けになる。
(の、望乃夏……………)
月明かりに照らされた首筋が白く光っててそれだけでドキドキするのに、もう少し下へと目線を移せば第二ボタンが外れてて……………
(お、おかしく、なっちゃいそう/////)
バクバクと鳴る心臓と、お風呂上がりよりも火照る身体。思わず手を伸ばせば、そのまま襲っちゃいそうで。
(………ちょ、ちょっと触るだけなら………)
白い首筋に触れると、望乃夏が小さな声を漏らす。私の中で熱いものが湧き上がる。
(…………もう、無理。)
…………私の中の何かが切れた。望乃夏の首筋を目掛けて顔を寄せると、そのまま白い首筋にキスを……いや、噛み付いた。望乃夏は少し身じろぐけど、すぐにまた寝息をたてはじめる。それをいいことに、私の手が望乃夏の胸元へと伸びる。僅かに空いた隙間から覗く望乃夏の胸を、そっと手のひらで押し包んで揉む。でも、いくら望乃夏だってそんなことされたら。
「………ゆ、ゆき、の………なに、してるの?」
うっすらと開いた望乃夏の目は、次には戸惑いと恥じらいの視線に変わる。………でも、その視線に晒された私の中には恥ずかしさなんて無くて。
「ののかっ、私………止められない、みたい………」
勢いに任せてまた望乃夏の白い首筋に歯を立てると、さっきよりも押し殺した声が漏れて、それが私を加速する。
(もっと聞かせてちょうだい………望乃夏の声っ、もっと、聞きたいっ)
邪魔な毛布を跳ね除けて、身体を固くする望乃夏の下着の中に手を差し込むと、更に押し殺した声が聞こえてくる。手に触れたぬるりとした感触と、少しくすぐったいような望乃夏の芝生。
「…………ごめん、ごめんね、望乃夏…………」
何かに触れる度に漏れ聞こえる望乃夏の声に対して、うわ言のように繰り返す。………自分が壊れていくのが、はっきりとわかった。
そして望乃夏が身体を強ばらせてぐったりした時には、時計の針はもう昨日を置き去りにしてた。