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繋がり。―望乃夏

┌(┌'ω')┐<久しぶりな気がする

………………はぁ………………なんか、お風呂入っただけなのに、すっごく疲れた………………。

未だにぼーっとする頭を抱えて、台所のテーブルにつく。

「二人共随分長くお風呂入ってたのね。のぼせなかった?」

雪乃のお母さんが聞いてくるけど、私も雪乃も適当な返事しか返せなかった。

………………お、お風呂じゃなくて、雪乃に逆上せてました、なんて、言えるわけないじゃない………………。

「大丈夫?ご飯食べられる?」

顔色をのぞき込むように雪乃のお母さんが聞いてくる。

「あ、大丈夫…………です。雪乃は?」

「大丈夫よ。私はお腹ぺこぺこ。」

………………雪乃っていっつもお腹空かせてない?気のせい?

「そう。ならご飯にするから、雪乃、お父さん呼んできて。ついでに雨戸も閉めてくれると助かるわ。」

「………………はーい。」

だるそうに雪乃が席を立って、台所を後にする。それを見計らうように、雪乃のお母さんが私の横に座る。

「………………ところで望乃夏ちゃん。」

「は、はい………………」

「………………その………………雪乃とはどこまで行ってるの?」

「はい!?」

思わず身を引くと、真剣な面持ちで雪乃のお母さんは私と目を合わせる。

「あら、私だって元は星花生よ。………………もちろん、その頃の星花は女の子に恋するのが普通って空気だったから別にあなた達のことは否定しないわよ。ただ、ね………………。雪乃とあなたがどこまで仲いいのかが気になって、ね。」

私は、一瞬だけ「関係を正直に話してもいいんだろうか」と迷う。………………けど、雪乃のお母さんだし………………。覚悟を決めて、雪乃とのことを話す。

「………………その…………入学してからずっと同じ部屋だったんですけど………………打ち解けたのはほんとに今月に入ってからです。それまではお互いに距離感を測りかねていて、お風呂も別々に入ってたんですけど………………雪乃は雪乃で、ツンとしてて話しかけづらくて………………でも、紅茶がきっかけで打ち解けてからはほんとに早いです。一週間もしないうちに一緒に買い物行くような仲になって、そして………………その、メイクも教えてもらったし、デートとか…………き、キスも、させてもらいました………………。」

思わず赤くなりながらそう伝えると、雪乃のお母さんは満足そうに頷いた。

「………………へぇ、私たちでも溶かしきれなかった雪乃の心を、ねぇ…………それにそこまで関係が進むなんて、……………………やっぱり日奈子の娘だけのことはあるわ。」

「わ、私の母のこと知ってるんですか!?」

思わず身を乗り出す。………………頭をハンマーで殴られたみたいな衝撃が私を駆け抜ける。

「………………忘れられないわよ、あんな強烈な人。『墨森』って名前は滅多にないから恐らくは………………って思ってたの。………………あの人はね、一個下なんだけどとにかく口八丁手八丁でね、廊下を歩いてる人を片っ端から捕まえては口説いてるの見たことあるわ。………………噂では何人か『食べちゃった』らしいし。」

………………か、母さん!?高校時代に何やってくれてるの!?

「………………ちなみに私も口説かれて手折られるとこだったわ。」

「う、うちの母がすいません………………。」

情けなくなって頭を下げる。

「いいのよ、昔のことだし。………………しかし不思議なこともあるのねぇ、あの口説き屋が巡り巡って、私の娘がその娘に惚れ込むなんて。これも血かしらね。」

………………ふぅん、不思議なこともあるんだなぁ………………。

ちょうどその時、雪乃が雪乃のお父さんを連れて戻ってきたので、この話はこれっきりになった。


「それでは、いただきます。」

私は、カレールーへとスプーンを差し込んだ。………………お、おいしい…………程よくじゃがいもが崩れてて、ちょうどいいとろみになってる。

「どう?うちのカレーは。」

雪乃が自慢げに聞いてくる。

「すっごくおいしいよ。どれぐらい煮込むんですか、これ。」

「そうね、圧力鍋を使ってなお2時間ちょっとってとこかしら。」

「そ、そんなに………………」

道理でおいしいわけだ。

「今日はお代わりがあるからね、どんどん食べよう。」

雪乃のお父さんが満足そうに言う。

「ところで、雪乃達は甘口なんですよね?そっちはどんな感じなんですか?」

「望乃夏、一口食べてみる?」

雪乃がそっとカレー皿を前に出す。そっとスプーンを差し込んで食べてみると、こっちも程よく崩れてておいしかった。けど、

「うーん、なんか違う………………。」

辛さが足らないと言うか、刺激がないと言うか………………。

「雪乃はほんとに辛いのダメなんだね。」

「………………望乃夏、今さらっと私のことバカにしなかった?」

雪乃の目が少しだけ険しくなる。

「貸しなさい、望乃夏。………………私だって食べようと思えば食べられるんだもん。」

私のお皿をひったくると、目一杯にルーをかけてごはんを口に運ぶ。………………途端に雪乃の顔色が変わった。…………ああもう言わんこっちゃない。

「………………はい水。」

何も言わずに雪乃はコップの中身を一気飲みする。

「………………落ち着いた?」

雪乃は下を向いたまま、小さく頷いた。雪乃のお母さんはそれを「あらあら」と見守り、そしてお父さんの方は何も見なかったことにしてる。………………これが家族、か。

………………なんかしんみりしてきちゃった。気分を変えるために、雪乃のお母さんに話題を振る。

「そういえばこの肉、中まで味が染みてて美味しいですね。」

「ああ、それは前の晩からワインに漬け込んでおいたの。カレーの味で消えちゃうけど柔らかいでしょ?」

「なるほど、参考になります。」

私は頭のメモに聞いたことを書き加える。………………今度雪乃にも何か作ってあげようかな。

そんなことを考えていた私は、雪乃が送ってきた視線に気が付かなかった。

公式裏設定。

望乃夏さんのお母さんの名前は墨森(旧姓:秋月) 日奈子さんです。


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