お風呂の中で。―雪乃
少しくらくらする頭を抱えながら、望乃夏のことを丸洗いする。………………さ、さっきの、何だったんだろ………………望乃夏に、私の『大事なとこ』触られた時………………頭の奥からつま先まで『キモチイイ』が走り抜けて、何も考えられなくなった。………………わ、私、おかしくなっちゃったのかな………………。
「………………あの、雪乃………………もうそろそろお風呂入りたいんだけど………………」
「あぅっ、ご、ごめん………………」
慌ててシャワーを浴びせると、頭を軽く振って望乃夏は浴槽へと足を突っ込んだ。
「ん、ちょっと熱めかな。」
全身をお湯へと沈めた望乃夏。
「………………もう、望乃夏。足を畳んでよ。私が入れないじゃない。」
ただでさえ小さめな浴槽は、望乃夏が足を伸ばしたらもういっぱいで。
「雪乃はボクのお膝の上に来れば?」
「や、やだよそんなの!?………………もう、普通に向かい合って入ろ?」
望乃夏の足を踏まないように、そろっと足をお湯に入れる。そのまましゃがんでお湯に浸かると………………ざぁっと、お風呂のお湯が一気に溢れる。
「…………………………」
「…………………………」
の、望乃夏がこっち向いてる………………
「……………………な、何よ望乃夏…………言いたいことがあるなら言いなさいよ…………/////」
「い、いや………………その………………」
「………………。ふん、どうせ私はおデブだもん………………。」
軽くそっぽを向くと、望乃夏が慌てて目の前で手を振る。
「そ、そんなこと思ってないから!?………………そうだよ、二人で入れば絶対溢れるよこのお風呂!!」
「………………そ、そう思うなら………………望乃夏は、体重どれぐらいなのよ?」
「ええっ!?………………い、言わなきゃ、だめ?」
「………………わ、私も…………言うから…………」
「………………さ、先に、雪乃の方、教えて………………………」
「そ、そっちから先に言いなさいよ………………」
「………………ぐぬぬ…………」
そう言いながらも、望乃夏は私の方に顔を近づけてくる。…………こっそり耳打ちした数字は、私よりも一回り小さくて。
「じゃ、じゃあ今度は雪乃の番だからね?」
「わ、わかってる…………から…………」
望乃夏が近づけてきた耳に私の秘密の数字を素早くささやいて、遠ざかろうとする耳たぶを甘噛みする。
「ひゃん!?」
「………………悔しいから、仕返し。」
「なんの!?」
「………………だって望乃夏、私よりも一回り………………か、軽いじゃない/////」
「そ、それは………………/////」
………………わかってる。望乃夏とデートするようになってからご飯の量も増えてるし、それに最近部活してないし………………少しぐらいぷにっとするのも仕方ないって割り切ってる。けど……………………
「………………どうして食っちゃ寝してる望乃夏はそんなにぷにぷにしないのよっ!!」
腹いせに望乃夏のお腹をつまむと、望乃夏が暴れる。
「うひゃひゃひゃっ、そ、そこ、くすぐったっ」
「暴れないで望乃夏っ、お風呂が壊れるからっ」
「あ、暴れさせてるのは雪乃でしょっ!?」
手を離すと、望乃夏は途端に静かになる。………………かと思いきや、
「…………もう、やってくれたね?」
と、今度は望乃夏が私の二の腕をむにむにしようとする。
「や、やめてっ………………つままないでぇ…………」
「ふっふっふー、ぷにぷにー…………」
「の、望乃夏がおかしくなった!?」
………………は、早く止めないと………………そ、そうだ、私と同じことすれば………………
望乃夏の足の付け根の、その内側に触れると、途端に望乃夏の動きが止まる。………………あれ、望乃夏?
「の、ののか………………?」
「ゆ、ゆき、の………………」
………………なんか、目がとろんとしてる………………。
「………………いまの、なに…………?」
「わ、私にもわかんない………………さっき望乃夏に触られた時は、私は………………その、『キモチイイ』が走り抜けて………………。」
しどろもどろになりながら答えると、望乃夏の目の焦点が次第に戻ってくる。
「……………………何だか、変な気分…………………雪乃のこと見てると、身体があつくなってくる………………」
「そ、そう言われると…………わ、私も……………………」
お湯の中で霞む望乃夏の身体が眩しく見えて………………私と同じオンナノコの身体なのに…………えっちな気分になる……………………。
「………………望乃夏、もう上がりましょ…………」
「う、うん………………」
減った分のお湯を沸かし直す間、お互いにシャワーを浴びてお風呂場を後にした。
………………結局その後話し合って、二人でのお風呂は当分控えることになった。