表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/152

呪文。―雪乃

「………………おーい、ゆきのーん…………?」

「………………」

「………………おーい?」

「………………聞こえてるわよ…………」

………………ホントは聞きたくないけど。

………………の、望乃夏だけじゃなくて、あの場にいた人全員に見られた………………。私の顔は、もう火が出てもおかしくないぐらい真っ赤になってて。

「………………ゆ、雪乃………………そんなに気を落とさないで………………。」

「………………元はと言えば望乃夏のせいじゃない。もし望乃夏が叫ばなかったらみんなも上向かなかったかもしれないし、それに………………走り出す前に言って欲しかったわ…………。」

「だ、だって雪乃がさっさと走ってっちゃうんだもん…………。」

「………………はぁ、もう…………。」

目線を上げれば、オロオロする望乃夏が見えた。………………もう、私だってオロオロしたいわよ………………。

「………………望乃夏は、見た?」

「………………な、何を!?」

「………………言わせる気なの?」

「………………暗かったからよく見えなかったけど、フリルだけ…………」

「そ、そこはウソでも『見えなかった』って言って欲しかったんだけど!?」

………………の、望乃夏にも見られたぁ………………。

「………………私もうお嫁に行けない…………」

「…………ボクが貰ってあげるよ…………って言えばいいのかな。」

「…………ほんとね?約束よ?」

「…………うん。」

いまいち締まらない会話だけど、そんなやり取りでも少しだけ心があったかくなる。

「…………とりあえず本題に戻るね。この後はどうするの?まだ靴屋さん探す?」

…………どうしよう、まだ考えてなかったとか言えない…………。

「…………そう、ねぇ。ひとまずどこかで休憩しましょ。ちょうど3時前だし、カフェはどう?」

「いいねいいねっ、確かさっきのとこにコーヒーチェーンあったよね。行ってみよっか。」

望乃夏が、妙にウキウキした様子で言う。それを見てるだけで、こっちまでワクワクしてくるから不思議ね。

「じゃ、行こっか。」

「うん。」


適当な席を見つけて2人で座ると、オーダーを決めることにする。

「…………うーん、何にしようかしら。」

「ね、ね、雪乃。私あれ頼んでみたい。」

望乃夏が身を乗り出す。

「………………何よアレって。」

「んーと、あれだよ…………なんだっけな、キャラメルマキアートトールビッグ………………あれ、何だったっけな………………」

「ああ、あの呪文ね………………」

「あ、思い出した。ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ…………あれ?」

「望乃夏、それは黄色い看板のラーメン屋さんよ。」

「…………んーと、何だったっけなぁ…………ラテみたいなの。」

「………………トールアイスライトアイスエクストラミルクラテ?」

「そう、それ!!」

なぁんだ、全然長くないじゃない。

「………………じゃあ、頼んでくるわね。」

私は席を立つと、カウンターに向かう。

「すいません、トールアイスライトアイスエクストラミルクラテと。」

と、一旦望乃夏の方を振り返ってから、

「ショートアイスチョコレートオランジュモカノンモカエクストラホイップエクストラソース、お願いします。」

と、一息で言い切る。チラッと振り返ると、望乃夏はぽかーんと口を開いて唖然としている。………………ふふ、望乃夏。私にこういうので勝てると思ってたの?

ちょっとだけ優越感を感じながら、ドリンクが出来るのを待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ